第2節~承~ 第94話 旅の神の末裔~東奔西走VS獅子奮迅✖獅子博兎
半年以上お休みしてしまい申し訳ありません。
事情等は活動報告で改めますm(_ _)m
※太陽の神の末裔アポロンと、極月翔也、霜月勇希の死闘の結末については少し後になります(文章は完成しています)。
さっそくですが、第94話、旅の神の末裔ヘルメスと、葉月洸之介、皐月久愛、文月紫水の死闘について始めたいと思いますm(_ _)m
「「「…………」」」
──何?
──な、何なの……?
──なんのつもりだ、コイツ……。
葉月洸之介、皐月久愛、文月紫水──。三人とも、突拍子ないヘルメスの問いかけにただ黙り込むしかなかった。
「ふぅ……説明してやろう。葉月洸之介は攻撃力で、皐月久愛は防御力で、覚醒した弥生梅佳をはるかに凌ぐ力を身につけた。さらに、文月紫水のサポートが加われば、お前たち三人組は、弥生梅佳亡き今、人類で最強の三人組ということになる」
ヘルメスがニヤリと笑みを浮かべる。
紫水が不機嫌そうに口をひらく。
「で、おまえ、何が言いたいんだ?」
「ハハッ、つまりだ、お前らを一人で相手しようとする俺様は、お前ら三人を上回る力があるということだ。どうだ? わかったか?」
「うぜぇッ」
紫水がヘルメスを睨みつけ、身構える。
一方、洸は慎重になっていた。
──確かに、アイツが僕たちを分断させた張本人だ……それだけ自信があるということか……。ゼウスの右腕、アポロンに匹敵する力をもつのか、それともただのブラフなのか……。
洸は久愛、紫水から距離を取り、静かに口をひらく。
「確かに君は強いのかもしれない……けれど、僕たちは負けるわけにはいかないんだ」
「ハハッ、万に一つも勝てないってこと、すぐ分からせてやるさ」
「洸さん、そいつの話、聞く必要ないですよ」
臨戦態勢に入った紫水の左掌から紫煙が立ち上る。
後方に控える久愛も、洸に声をかけた。
「……洸、他のみんなのことも気になるわ……闘うしかない」
久愛は左腕を突き出し、スキルを唱えた。
「『ザッソウダマシイ』」
久愛の掌から、無秩序に生える雑草のような黄緑の光が溢れ出す。
光は幾重にも重なって渦を巻き、洸と紫水へと放たれた。
二人の体に巻き付いた光は、そのまま染み込むように消えていく。
「とりあえず、防御力アップさせたわ。早く終わらせるに越したことはないもの」
久愛のスキル『雑草魂』。
それは、スキル攻撃や物理攻撃など、あらゆる攻撃の威力を半減させる防御スキルであった。
──久愛の言う通りだ。一刻も早く、他のみんなと合流しなければ……。
「ありがとう、久愛」
「うん、防御と回復は任せて」
「洸さん、攻撃のサポートは任せてください」
紫水は、勇希や柊龍と話すときとは打って変わって、洸たちには丁寧な言葉を使う。だが表情は険しい。敵の不気味さがため、紫水の警戒心は最高潮に達していた。
「うん、よろしく」
洸は紫水の言葉遣いにトクンと胸を突かれるような懐かしさを覚えたが、すぐに思考を戦闘へと切り替えた。
「いくよッ『獅子奮迅』ッ!」
──まずはアイツのスキルを見極める。
洸が突き出した右拳に青紫の光が灯る。
その光が青紫の火炎へと姿を変え、渦を巻いて解き放たれると、燃え盛る鬣をもった十数匹の青紫の獅子へと形を変えた。
光沢のある毛並み、鋭い眼光。獅子たちは牙を剥き、咆哮とともにヘルメスへ襲いかかる。
対するヘルメスは、顔色一つ変えず早口で唱えた。
「『トウホンセイソウ』」
杖の先から噴き出した黒煙が、周囲の光を捕食するように広がり、瞬く間に漆黒の闇でフィールドを覆い尽くした。
「さっきお前らを分断した黒煙が、獅子たちもあちこち飛ばしてくれるぜッ」
杖先が青く光ると、漆黒の闇が刹那、群青に染まる。
ヘルメスの黒煙はすべての獅子たちに絡みついていく。黒煙に触れた獅子たちは体中を縛られたかのようにもがくが、次第に動きは止まり、咆哮は苦悶の喘ぎに変わる。
続けざま、ヘルメスが杖を振るうと、獅子たちは断末魔をあげる間もなく、黒煙と混ざり合うようにして跡形もなく消え去った。
バトルフィールド内に明るさが戻る。
──この程度の出力じゃダメってことか……それなら……。
洸は再びスキル『獅子奮迅』を放つと、今度は間髪入れずに、召喚された獅子たちに向けてスキルを唱えた。
「『シシク』『シシノハガミ』ッ!」
『獅子奮迅』で召喚された獅子たちが、『獅子吼』スキルで鬼の形相と化して荒れ狂い、『獅子の歯噛み』スキルでむき出しの牙がさらに鋭い刃物のように変貌する。
これら二つのスキルは獅子たちを強靭化、凶暴化させるバフスキルであった。
だが、ヘルメスは動じない。またもや黒煙が獅子たちを包み込む。
「これならどうだッ『シシハクト』ッ!」
洸は、獅子たちに合図を送るように上に挙げた左の掌を振り下ろした。
「いけぇーッ!」
青紫火炎が勢いを増し、獅子たちは爆発的な力を漲らせた。
『獅子博兎』とは「ライオンがウサギのような弱い相手を狩るときでも手を抜かず全力を尽くす」ことから転じて「どんなに簡単なことでも、決して手を抜かず、常に全力を尽くすべきだ」という意味。
洸は『獅子博兎』スキルですべての獅子たちのあらゆる力を、最大限アップさせたのであった。
「洸さんッ! サポートしますッ!『ホウエンダンウ』!」
紫水は人差し指の先から噴き出す紫色の煙を操り、洸の獅子たちの数を増やした。
「紫水君ッ!」
──なんてタイミングだ。以心伝心だ……。やはり彼は……。
大気圏に突入した隕石のごとく燃え盛る無数の獅子たちが、ヘルメスに襲い掛かる。
「だーかーらー、無駄だって言ってんだろッ? お前ら脳みそあるのかよッ!?」
悪態をつきながらヘルメスが再び杖を振るい叫ぶ。
「『東奔西走』ッ『バツザンショウスイ』ッ!!!」
ヘルメスの杖先から噴き出す黒煙が獅子たちを再び包む。
すると獅子たちは、先とは比べられぬほどもがき苦しみ始め、次々に消えていった。
「お前らバカどものせいで、ライオンたちが悶絶して死んだだろうがッ」
洸は立ち尽くす。
──これじゃ「獅子王」になる前に消されてしまう……。
──ヘパイストス戦で召喚した「獅子王」は、無数の獅子たちを集結させることが絶対の前提条件……。集結する前に消し去られてしまえば「獅子王」を呼び出せない……。
後方にいる久愛も驚きを隠せなかった。
──あの猛攻が全く通用しないの……!?
紫水の表情がいっそう険しくなる。
「……一発で……あの数、あの力の獅子を、すべて消せるのか……ウザすぎる……」
紫水は黒煙の対抗策を巡らせる。
──あの黒煙をなんとかしないと……目には目を歯には歯を……試してみるしかない……。
「『ジョウザンノダセイ』」
紫水が両腕を前方に伸ばし、開いた両の掌に力を込めると、シューという空気が漏れるような音とともに紫の煙が立ち上る。
紫水が両掌を突き出すと、紫の煙が蛇のようにうねりながら立ち上った。その煙は意志を持つかのように、ヘルメスの黒煙の動きに同調し始める。
──あの黒煙……絶対、相殺してやるッ!!!
「フンッ。俺様のまねごとかい? 無駄だぜ~ハハハッ」
嘲笑するヘルメスは再び杖を振るい、さらに黒煙の量を増やす。
紫水も対抗してさらに紫煙を放出させる。
紫煙が黒煙と全く同じ形、同じ濃度になった瞬間、シューッという音とともに、双方の煙が消滅していく。
──よしッ。いけたッ!
確かな手応えを覚えた紫水は右拳をぎゅっと握った。
反対に、ヘルメスは悔しさを滲ませた。
「……あぁ~だりぃ……マジでムカつく……うぜぇことしやがって……」
「洸さんッ! もう黒煙は大丈夫ですッ!」
紫水が洸に向かって叫ぶと、間髪入れず洸は両拳を前方に向け、スキルを唱える。
「紫水君、グッジョブ! 『風雲龍虎』ッ!」
洸の両拳に灯った青紫色の光が膨張するや、小さな爆発音とともにボワッと弾けた。
両拳から放たれた光は青と紫の火炎と化し、めいめい激しく渦を巻くように燃え上がる。青い火炎は青龍へ、紫の虎は体色が淡くなり白虎へと変貌していった。
紫水が声高に叫ぶ。
「洸さん、そのまま攻め続けてくださいッ!」
「OK!」
ヘルメスが『東奔西走』を唱え、杖を振るうと、紫水は即座に『常山蛇勢』を発動させる。紫煙が黒煙はぶつかりあい相殺され消えていく。
焦りを滲ませるヘルメスに対し、洸の青龍と白虎が数倍ほど巨大化し、咆哮を上げた。
青龍は青い火炎をまとい、空を割くように旋回しながら口を大きく開く。そこから放たれたのは、青白く輝くエネルギーの奔流であった。
白虎は全身から白煙と淡い紫光を放ち、鋭い牙を剥き出しにしてヘルメスへ飛びかかる。
青龍と白虎がヘルメスへと接近する──。
そのとき──。
最後までお読みくださりありがとうございます(´▽`*)
□語句・スキル解説
『雑草魂』
意味: 踏まれても抜かれても、たくましく生えてくる雑草のような、困難に屈しない強い精神力のこと。
スキル効果: 物理攻撃およびスキル攻撃の威力を半減させるスキル。
『獅子奮迅』
意味: 獅子が荒れ狂ったように、ものすごい勢いで奮闘すること。
スキル効果: 青紫の火炎を纏った獅子を複数体召喚し、敵を攻撃するスキル。
『東奔西走』
意味: 目的を達するために、あちこち忙しく走り回ること。
スキル効果: 敵をあちこち走り回らせる、という意味で、触れたものをいろんな場所へ空間転送させることができる。相手からみると、バトルフィールドから消滅させられる恐ろしい黒煙を操るスキルとなる。ヘルメス自身は対象を意図した場所へ転送させることもできるが、意図せずどこかへ転送させることもできる。
『獅子吼』
意味: 獅子が吠えて百獣を恐れさせること。転じて、雄弁に真理を説くことや、権力者が威圧すること。
スキル効果: 召喚した獅子の形相を変化させ、気性を荒くさせるバフスキル。
『獅子の歯噛み』
意味: 獅子が激しく怒って歯ぎしりをすること。
スキル効果: 獅子に歯ぎしりさせることで牙を磨き鋭利な刃へと変貌させるというバフスキル。
『獅子博兎』
意味: 獅子はウサギのような弱い獲物を捕らえるときでも全力を出すということ。容易なことでも油断せず全力を尽くすたとえ。
スキル効果: 獅子たちの力を限界まで引き出し最大化させるスキル。
『砲煙弾雨』
意味: 大砲の煙が立ちこめ、弾丸が雨のように降り注ぐこと。激しい戦場の様子。
スキル効果: 味方の攻撃を増殖、増強させる、紫水のサポートスキル。
『跋山渉水』
意味: つらく苦しい経験をしながら長い旅をすること。「跋山」は山を越えること、「渉水」は川を渡ることを意味する。
スキル効果: 黒煙の密度と出力を高め、対象を苦しませた上で消滅(空間転送)させる、ヘルメスのバフスキル。
『常山蛇勢』
意味: 孫子の兵法に登場する、常山の「率然」という蛇のごとき陣勢のこと。頭を撃てば尾が、尾を撃てば頭が、胴を撃てば双方が応戦する、隙のない完璧な連携のたとえ。
スキル効果: 本来は紫煙で攻撃や防御をする紫水のスキルだが、黒煙を排除、無効化したい紫水がイメージして応用させた。黒煙と紫煙を完璧に同調させ、その性質を相殺して無力化する。ぶっつけ本番、一か八かという側面もあったが、紫水の高いバトルセンスが証明された。
『風雲竜虎/風雲龍虎』
意味: 似た者同士が相争うこと。また、時代の流れに乗って英雄たちが活躍すること。龍は雲を呼び、虎は風を呼ぶとされる。
スキル効果: 青龍と白虎を同時に召喚する、洸之介の強力な攻撃スキル。
※その他の語句解説
ブラフ
虚勢を張ること。ハッタリ。
悶絶
あまりの苦しさに、失神しそうになること。
奔流
勢いよく激しく流れる水。ここではエネルギーが激しく流れ出す様子。
刹那
きわめて短い時間。瞬間。
以上になります。ここまでお読みくださり感謝しております。
第95話もほぼ完成していますのでできるだけ早くアップしますm(_ _)m




