第1節~起~ 第90話 嵐の前の静けさ・強制転移
こんにちは!(こんばんはorおはようございます)!ずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方もお越しくださりありがとうございます!
ひとつ訂正があります。前回で最終章第1節の~起~が終わりだと書きましたが内容的に今回までを~起~とするべきだと思うに至りましたm(_ _)m
では最終章第1節の~起~のラスト第90話、はじめますm(_ _)m
洸たちは、下校後すぐにゼロスたちが用意してくれた地下ルームに移動する毎日を過ごしていた。
じりじりと照り付ける夏の日差しは、この時代──2050年代でも変わることはない。
「あぁ、涼しい……外は暑すぎだね」
汗ばんだ額をハンカチで拭いながら久愛が洸とアヤトにぼやいた。
「うん、ここは本当に快適だよね」
「俺たち、空調設備は一切触っていないのにな」
「にしても、久愛って、最近、暑がりになった?」
「だな。暑い、暑いって、ずっと言ってるよな」
「な、なによ……私、別に太ったわけじゃないからね」
「そんなことは誰も言ってない……よな? 洸」
「う、うん、言ってない、言ってない」
久愛は少しふてくされる。
これまで洸たちは地下ルームで訓練にいそしんできた。
バトル、回復、バトル、回復……を繰り返し、血の滲むような特訓を重ねてきたのだ。
その結果、洸たちはゼロスたちの予測をはるかに上回る成長を遂げていた。
だが、人間万事塞翁が馬──人生における幸不幸は予測できない、この道理は昔からこの時代に至るまで、また、地上であれ地底であれ、変わらない。
洸たちにとってこの二か月足らずの期間は嵐の前の静けさに過ぎなかった。
夏休みに入った初日のこと──。
ナインスが小さなヒト型3Dホログラム姿で、地下メインルームに現れる。
ナインスが現れたのは地下ルームの案内をして以来のことだ。
「集合~ッ! 皆の者ぉ~! 集合でごじゃる~ッ!」
訓練ルームにいた皆がすぐにナインスのもとに駆け付ける。夏休み初日ということもあり全員がそろっていたのだ。
「ナインス君、お久しぶり!」
カリンが真っ先に挨拶する。
「どうしたの? あわてて……」
久愛が焦燥感漂うナインスの様子をいぶかしむ。
「大変なことが起こったでごじゃる……」
「……大変なこと……?」
洸も不安げな表情を浮かべる。
「……み、未来が変わったでごじゃる……」
「えッ!?」
「未来が!?
「変わったッ!?」
「ってことは……?」
「人類が滅びずに済んだってこと?」
久愛が尋ねる。
「……い、いや……」
「ま、まさか……」
「逆かッ!?」
「悪い方に変わったのか?」
「なッ!?」
「そ、そうでごじゃる……その……まさかでごじゃる……」
「どういうことだ!? ナインスッ!?」
勇希が強い調子で問う。
「人類一掃計画の決行日が早まってしまったでごじゃる……」
「!!!」
「なんだって!?」
「くッ……マジか……!?」
「うそだろ……」
「地底のゼウスがしびれを切らしたようでごじゃる」
「……でも、あの計画に必要なエネルギーが足りないって言ってなかったか?」
アヤトが少し声を荒げる。
「……敵はエネルギーを節約したり極秘に産出量を増加させたりして急速にエネルギーを貯めこんでいたでごじゃる……オイラ、ずっと監視してたのに……見抜けなかったでごじゃる……」
「……」
「オイラがすべて悪いでごじゃる……」
「ちょと待て、ナインス、計画決行日はいつなんだ?」
ひとり冷静な翔也がおだやかに問いかけた。
「半月もすればエネルギーの補填が完了して、いつ決行されても分からない状態になるでごじゃる……」
「なら、それまでに敵を倒せばいいってことだよな?」
勇希のことばに紫水も鋭い目つきで続けた。
「そうだ、そうすれば計画は止まるだろ?」
「そうでごじゃるが……」
「よしッ!決まったッ!」
「行くぜ!」
「倒しに行くしかないよね」
「遅かれ早かれだしね」
「あぁ、そろそろ実戦したいと思ってたところだしな」
「うむ……」
「みんな……怖くないでごじゃるか?」
「人類の将来がかかってんだからな」
「怖がってても仕方ない」
「私は正直、こわいけど……」
「私もです……」
「あたしがママも美伊ちゃんも他のみんなも守るッ」
カリンが健気に言う。
「怖いのは当然じゃない? でも、やるしかないよ」
「怖がってるくらいがちょうどいいんだ。勇希みたいな単細胞を除いてな」
「翔也さんッ、ヒドいっす。もうひとり単細胞らしき奴いますし」
「なッ! 勇希、俺のことか?」
「さぁ!? 紫水は違うんじゃね? ハハハッ」
「ナインス君、私たちはどうすればいいの? 前みたいに地底へ?」
「そうでごじゃるが、ヘラが如月萌莉と水無月霞凛は別行動だと言っているでごじゃる」
「へッ?」
カリンは驚きのあまり声が裏返った。
「私とカリンちゃんだけ!? どうして?」
萌莉も突然の話に驚きを隠せない。
「オイラも理由は詳しく聞いてないでごじゃる。ヘラが呼びに来ると思うでごじゃる……」
「そ、そう……わかったわ……」
──私たちだけ別行動を取るって、ヘラさんは何を考えてるの……?
萌莉は心のもやもやが晴れぬまま黙りこんだ。
「とにかく僕たちは一刻も早く地底へ行かないといけないんだね」
「いつでもいけるぜ、夏休みだしな!」
「待ってやがれ、あの金髪野郎ッ!」
「フッ、勇希……お前も金髪だろ?」
「うぅ……ま、そうなんだが……」
「ハハッ」
紫水のツッコミに翔也まで失笑する。
「出発は三日後でも大丈夫でごじゃるか? 諸々準備があるでごじゃる」
──少しでも勝率が上がるように作戦を練り直さないといけないでごじゃる……。
「そんな悠長なこと言ってられんのか?」
アヤトが語気を強めて尋ねると勇希が後に続ける。
「俺は今すぐでもいいぜッ!」
そのときだった──。
「えッ!? じ、地鳴り……?」
美伊が真っ先に異変に気付く。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ──。
不気味な地鳴りの音が次第に大きくなっていく。
「じ、地震かッ!?」
「マジかッ!?」
「大きいッ!」
「地震ではないでごじゃるッ!!!」
「まさか計画が!?」
「ち、ちがうでごじゃる。計画の実行はまだ無理でごじゃるッ!」
「じゃあ何だ!?」
「だんだん地鳴りが大きくなってるッ!!!」
「マズいでごじゃる、こ、これは……」
地下室が縦に横にと激しく揺れ始める。
「「「「きゃあ」」」」
女性陣が叫びながらしゃがみ込んだ。
「すごい揺れだぞッ!?」
「地震じゃないの???」
「地震じゃないなら何だ!?」
「こ、これは……」
ピカッ────。
地下室に閃光が走る。
洸たち全員の視界を奪ったまま閃光は消えない。
「これは……強制転移……でごじゃる……」
ナインスの絞り出す声を耳にしながら、洸たちはみな地下ルームから姿を消した。
最後までお読みくださりありがとうございます。ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております。かなり励みになっています。今後ともよろしくお願い申し上げますm(_ _)m
今回、語句解説はありません。
次回、最終章第2節~承~ 第91話、強制転移の先は!?萌莉とカリンだけ別行動となった理由は!?
お楽しみに(*´▽`*)!




