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#85 第84話 永久凍土・蒼天無窮・梟の宵企み

ずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方もありがとうございます!お待たせして本当にすみませんm(_ _)m


アテナ戦も佳境となりました!


さっそく第84話はじめます!



 葵大(あおと)の決意を嘲笑うかのように、アテナの梟の攻撃は激しくなっていく。


 葵大が破壊した壁の氷が舞う量も徐々に減り、梟の軌道も読みにくくなっていた。


美伊(みい)さんっ! 萌莉さんを連れて撤退してくれないか、(こう)さんたちと合流してほしいっ!!!」


  挿絵(By みてみん)


「そ、それはダメですわ。葵大さんをひとり置いていけません! 三人で何とか勝機を見出しましょう」


「あの梟にすら太刀打ちできない。僕たちの力では束になってもアイツには勝てない可能性が高い。防戦一方でじり貧だ。僕がアイツを一時的に凍らせるから、そのうちに」


「……」

 ──確かに、今のところは大きなダメージも無くやり過ごせていますけれど……私たちの攻撃力では決め手に欠けるのも事実……でも……。


  挿絵(By みてみん)


 少し考え込んだ美伊の後方で、萌莉(もえり)が立ち上がる。


  挿絵(By みてみん)


「……葵大君……敵を凍らせるつもりなんだよね……?」


「「も、萌莉さんっ!」」


 心配する葵大と美伊を尻目に、萌莉がスキルを唱える。


「『銀世界(ギンセカイ)』ッ!」


  挿絵(By みてみん)


 萌莉のメインスキルは「時」を操るスキルだが、かつてハーデス戦で使った氷属性のスキルなら体への負担がより少ない。


 萌莉の体の周囲に、雪の結晶が舞い始める。


「わ、私の氷スキルは弱いけれど、葵大君のスキルを強化するくらいならできるはず……三人で最後まで戦うのよ」


 萌莉が前方にかざす。


「『絶対零度(ゼッタイレイド)』ッ!」


  挿絵(By みてみん)


 右の掌からブリザードが放たれる。だが、萌莉は、直接アテナを攻撃せず、葵大のいる付近にブリザードを滞留させた。


 アテナの梟は、葵大たちを()()()()()()


「……これで……しばらく梟の動きも封じられた……葵大君のスキルも……パワーアップ……」

 

 そう言い残し、萌莉は再び意識を失う。


「「も、萌莉さんッ!!!」」

 美伊が萌莉のもとに駆け寄る。


  挿絵(By みてみん)


 ──ダ、ダメですわ……萌莉さん、もうこれ以上バトルは……。


 萌莉が戦闘不能だと判断した美伊の脳裏に、以前、皆と交わした約束がよぎった。


 ──私たちが出自や前世を伝えないのは、()()()()()()()()でしたよね……。


 ──ただの戦友ならもっと合理的に判断できるけれど、家族同然の仲間意識は時に判断を鈍らせる……。萌莉さんはAIタマの葵大さんを置いていけない……。


 決意した美伊は凛と引き締まった顔で葵大に告げる。


「葵大さんっ! 分かりましたっ。私は萌莉さんを連れて、洸さんや久愛(くう)さんたちと合流しますっ!」


  挿絵(By みてみん)


 その言葉を耳にした葵大は安堵の表情を浮かべる。

「ありがとう、美伊さんっ」


 美伊は杖を振り、スキルを唱えた。


「『イッシンドウタイ』」


 美伊の杖から放たれたハート型の桃色の光が幾重にも重なり萌莉を包む。すると萌莉の体が消える。


  挿絵(By みてみん)


 美伊の『一心同体(イッシンドウタイ)』スキルはハートの光で包み込んだ仲間を一時的に消して自身と同化させるスキル。意識を失った萌莉を美伊ひとりで運ぶのに適したスキルであった。


「逃がさないわよ」

 アテナが美伊に向けてスキルを唱えようと構える。


  挿絵(By みてみん)


「アテナッ! 君の相手は僕だッ! 精霊たちッ! もう一度、僕に力を貸してくれ!」

 葵大は目を閉じ、両腕を広げ肘を曲げると、上に向けた両拳に力を入れた。


  挿絵(By みてみん)


「むっ。また新しいスキル!? 無駄な足掻きよ」

 美伊と萌莉に攻撃を仕掛けようとしたアテナは標的を葵大に移す。


 ──やはりアイツ、僕の新しいスキルに対しては警戒心が強いよね!? 実戦で使用したスキルのデータはすべて正確に把握してるんだろうけど、データにないスキルは怖いのか?


  挿絵(By みてみん)


 ──何はともあれ、美伊さんたちへの攻撃をやめてくれたのはありがたい。


「いくぞっ『テキスイセイヒョウ』!」

 葵大はまた新しいスキルを唱えた。


 葵大の周囲の水蒸気が水滴へと変わるや否や、氷の結晶へと姿を変えていく。


  挿絵(By みてみん)


滴水成氷(テキスイセイヒョウ)』とは、滴る水がすぐに氷になるという意味から、厳しい冬の寒さを形容する言葉だが、語意のごとく、大気中の水分を氷へと変えていき、攻撃するスキルであった。


 葵大の『滴水成氷(テキスイセイヒョウ)』スキルの氷は、萌莉の置き土産『銀世界(ギンセカイ)』『絶対零度(ゼッタイレイド)』で生じたブリザードと相まって、巨大な氷の渦を作っていく。


 アテナも負けじとスキルを唱える。

「『フクロウノヨイダクミ』!」


  挿絵(By みてみん)


 アテナが胸の前で円や十字を描くように両手を素早く動かすと、金色に光る魔法陣が浮かび上がった。


  挿絵(By みてみん)


 対する葵大は両腕で巨大な氷の渦を操り、アテナに向けて放つ。


  挿絵(By みてみん)


 ズバンッ──。


 バゴンッ──。


 葵大のブリザードとアテナの魔法陣が衝突し、爆音を上げた。


  挿絵(By みてみん)


「フンッ。見た目のわりに大したことないわね」

 アテナは魔法陣が葵大のブリザードを見事に防いだのを確認し、悪態をつく。


 それでも葵大は攻撃の手を止めない。


「まだまだッ!『エイキュウトウド』ッ!」

 葵大は再び両腕を前方にかざす。


  挿絵(By みてみん)


 氷の壁を作ったときと同じく、ヒュルヒュルヒュルという不思議な声とともに再び氷の精霊たちが無数に舞い始めた。


  挿絵(By みてみん)


永久凍土(エイキュウトウド)』とは、地球上で、地下の温度が二年以上連続して零度以下である土壌や地盤のことを意味する。


 葵大は敵を永久凍土のごとく半永久的に凍らせる強力なスキルを編み出していたのだ。


「クッ。まだあるの!?」

 アテナの左半身が凍り始める。


  挿絵(By みてみん)


 キーンッ──。


 耳をつんざく金属音とともにアテナの魔法陣が幾重にも重なると、より光を増した魔法陣がくっきりと空中に浮かび上がった。


  挿絵(By みてみん)


 凍りかけたアテナの左半身の氷が即座に溶けていく。


「『梟の宵企み(フクロウノヨイダクミ)』はあなたのスキルを無効化するわ。残念ね。力の差がありすぎると永久とか? ()()()()()()()()()()()()()わね」


 皮肉たっぷりのアテナは余裕の笑みを浮かべている。


  挿絵(By みてみん)


梟の宵企み(フクロウノヨイダクミ)』とは、夜行性の動物である梟が、夜に「明日餌を狩りにいこう」と決めても、朝になると眠くなって寝てしまうという話から、実現不可能な計画を立てることを意味する。


 アテナはこのスキルで敵のスキル効果を実現不可能にするのだ。


「想定の範囲内だよ」


  挿絵(By みてみん)


「強がりはカッコ悪いわよ」


「ただの強がりかどうか、自分で確かめたらいいよ」


  挿絵(By みてみん)


「望むところだわ。貴方ごときが私に勝てるはずがないもの」


「どうだろうね? 君が完全に凍るまで何度でもぶち込むつもりだから僕の敗北はない!『ソウテンムキュウ』」


 葵大は、慌てる様子はもちろん、なんら表情を変えることもなく追加でスキルを唱えた。


 また氷の精霊たちが葵大の助太刀に馳せ参じる。


  挿絵(By みてみん)


「くっ。分不相応なことをするから、あなたも凍り始めてるのじゃなくて?」


「そうだね。それも想定の範囲内だよ。覚悟の上だ」

 

 葵大がスキル『永久凍土(エイキュウトウド)』を放っては、アテナのスキル『梟の宵企み(フクロウノヨイダクミ)』が無効化するという攻防がしばらく続く。


 ──ダメ、威力が増してきてるわ。何なの……この子……。


「『ミネルヴァノフクロウハタソガレニトビタツ』」


  挿絵(By みてみん)


 アテナは苦し紛れに、ひときわ長いスキルを唱えたが、その効果が表れる前に、また氷の精霊たちが『永久凍土(エイキュウトウド)』スキルで襲い掛かる。


  挿絵(By みてみん)


「えっ……な、なに……」


 ──もう無効化どころか弱体化もできないじゃない……まずいわ……何とかしなくては……。


 焦燥するアテナがさらに策を講じる前に、その全身は完全に凍りきった。


  挿絵(By みてみん)


最後までお読みくださりありがとうございます。ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております。かなり励みになっています。今後ともよろしくお願い申し上げます(*´ω`*)


◇語句スキル解説◇


銀世界(ギンセカイ)』『絶対零度(ゼッタイレイド)』※再掲補足

……前者はフィールド一面に雪を降らせ凍らせるスキル、後者は凍らせるスキルを強化するスキル。猫のタマヨリだった頃の萌莉は水属性であったため、当初水や氷のスキルを試していたが後に時を操るスキルが自身のメインスキルだと感じてからはあまり使わなくなった。今回はバリバリの氷スキルの使い手葵大の援護射撃のために放った。時のスキルでかなり疲労している中、氷のスキルなら大丈夫だろうと放ったがダメージは大きく意識を失った。ちなみに同スキルは葵大も使えるが、このバトルでは未使用スキル縛りを自己に課しているため使っていない。


一心同体(イッシンドウタイ)

……複数の人が心を一つにし、まるで「一人の人」のように強く結びつくことを意味する。ここではハートの光で包んで消した仲間と一体化するスキル。用途は多岐にわたるが、今回、美伊は、傷ついた萌莉を運ぶスキルとして使用した。基本的には詠唱者と他の仲間ひとりとの一体化が推奨される。数が多いほど一体化できる時間が短くなるが、消えている間は敵からの攻撃を受けない。ただし詠唱者本人は攻撃を受ける。


滴水成氷(テキスイセイヒョウ)

……滴る水がすぐに氷になるという意味から、厳しい冬の寒さを形容する言葉。ここでは語意のごとく、大気中の水分を氷へと変えていき、攻撃するスキル。形状はイメージでいろいろと具現化できるが、他の氷スキルとのコンボで威力は変わる。


『梟の宵企み(フクロノヨイダクミ)』

……夜行性の動物である梟が、夜に「明日餌を狩りにいこう」と決めても、朝になると眠くなって寝てしまうという話から、実現不可能な計画を立てることを意味する。ここでは相手のスキルを実現不可能にする、つまり無効化するスキル。レベル差があると弱体化するにとどまるが、葵大の覚悟、意志の強さがアテナのこのスキルの力を上回ったのかもしれない。


永久凍土(エイキュウトウド)

……地球上で、地下の温度が二年以上連続して零度以下である土壌や地盤のことを「永久凍土」という。ここでは敵を半永久的に凍らせる強力なスキルのこと。葵大が『絶対零度』を唱えた場合、同等の強度となるが、かつての相棒タマヨリである萌莉への遠慮と、使用済みスキルを避けるため、葵大はこちらを使用した。


蒼天無窮(ソウテンムキュウ)

……青い空が果てしなく続くことから転じて、永遠に続くものごとを意味する。類義語に「天地無窮(テンチムキュウ)」「天壌無窮(テンジョウムキュウ)」「永遠無窮(エイエンムキュウ)」などがある。蒼天=青い空、天地=天壌=空と大地のこと。ここではスキルを自動的に繰り返すスキル。二回目以降は詠唱しなくても発動できる点にメリットがある。


以上となります。


いよいよアテナ戦もクライマックス。このまま引き分け、または葵大が勝利するのか? アテナの放った『ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ(ミネルヴァノフクロウハタソガレニトビタツ)』は何か効力を発揮するのか!?乞うご期待(*´▽`*)

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