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#81 第81話 神工鬼斧・光陰流水・遡及


それでは早速第81話を始めます!


  挿絵(By みてみん)


「で、でも……かなりの距離を飛んでいるはずなのに……」

「もう敵が近くまできてるってことですよね……」

「ちっ、早いな……もう追いつかれたってこと!?」


 アテナは球体と同じ速度で飛翔し、射程距離を保っていた。


「なかなか、堅固ね。それなら──」


 アテナ・テアは紫色の光玉を大量に生じさせ一気に飛ばす。


  挿絵(By みてみん)


 光玉が球体に衝突する度、激しい衝突音が鳴り響き、大破した光玉は火花を散らしながら消えていく。何発も衝突しては消え、衝突しては消えていく。


 すると、光玉による単体攻撃ではビクともしなかった梅佳の球体は少しずつその軌道を変えていった。


  挿絵(By みてみん)


「すごい数の攻撃……」

「まずいですわ……方向が変わっています……」

「このままだと衝突してしまうっ」


「この時代の建造物と球体の強度、()()()()強いのかしら!? 球体が破壊されたら、あの子たち、この高度だから終わりよね? あぁ……人間ってモロすぎてかわいそう……フフフッ」


「やばいッ」

「ダ、ダメです……」

「衝突するよ」


  挿絵(By みてみん)


 三人は衝撃に備え、体に力を入れる。


  挿絵(By みてみん)


 バーンと球体はビルの屋上にある倉庫に衝突した。


 だが、梅佳の球体は壊れず原形をとどめている。それだけでなく、衝突したビルも全くの無傷であった。球体は()()()()バランスボールみたいにボヨンと弾み、何度か跳ねたのち、動きを止めた。


 中の三人にもダメージはない。


 アテナの顔が刹那、ひきつった。


「ふーん、弥生梅佳……さすがねぇ~、あぁ~、これ、これね、これが苛立つっていう感情ね!? 初体験だわ……フフフッ」


 アテナは球体に近づきながら、両の掌を前方に向ける。


  挿絵(By みてみん)


「フンッ!『シンコウキフ』」


 アテナが唱えるとアテナの胸の前で光の玉が大きく膨らんでいく。


 同時に梅佳の赤い球体の構造を分析する。赤い球体をどうすれば破壊できるか、いわば急所を算出したアテナは、球体に向けて巨大な白銀の光玉を放った。


「私の『神工鬼斧(シンコウキフ)』で壊せないものは()()わ」

 光玉は、飛翔しながらその姿を白銀の斧へと変えていく。


「うっ、ま、まずいわ……」

 ただならぬスキルだと直感で感じた萌莉は即座に二つのスキルを唱えた。

「『コウインリュウスイ』『ソキュウ』っ!」


 萌莉の背後に二つの時計が浮かび上がると、一方は右回り、他方は左回りに針が進む。


  挿絵(By みてみん)


「まずは時を遅らせるッ!」

 萌莉が右手の人差し指で時計を操作すると、右回りの時計だけ時を刻む速度が遅くなった。


 萌莉のスキル『光陰流水(コウインリュウスイ)』は本来時を早めるスキルであったが、同時に時を巻き戻す『遡及(ソキュウ)』スキルを使うことで、萌莉は少しだけ時を操れるようになっていたのだ。


 時の経過を遅らせた萌莉の目には、勢いよく飛んできていた斧の速度がコマ送りの映像のごとく、超スローモーションに映っていた。


  挿絵(By みてみん)


 萌莉以外の者たちには通常のスピードで目に映っているため、萌莉の動きだけが物凄い速度で動いているように見えていた。


「ふぅ……ここまでは想定通り……」


 萌莉の瞳には、ゆっくりと球体に衝突する斧が映っていた。斧が衝突した球体表面の箇所にゆっくりとヒビが入り始める。


──よしッ!今よ。

「時の神よ、我に時を支配させたまえ」

 萌莉が静かに唱えながら左右の人差し指の先を胸の前で合わせると、両方の時計の針が同じ現時刻で止まった。


  挿絵(By みてみん)


「よしッ! 今のうちに……」

 萌莉は球体のひび割れを蹴破り大きな穴を開ける。ヒビが入っていたこともあるが、梅佳はあえて内側からの物理攻撃には弱い設定をしていた。


 萌莉は、美伊と葵大を両脇に抱えて、球体の外へ出ようとするが──。

 ──お、重い……。美伊ちゃんだけならともかく、葵大君までとなると私には無理ね……。


「ごめんッ葵大君ッ」

 萌莉は蹴破った球体の穴から葵大を押し出すようにして外へ出すと、葵大の体はドサッと球体の外へ倒れ込んだ。続けて萌莉は美伊を後ろから抱えて外に出る。


  挿絵(By みてみん)


 そして、萌莉はビルの屋上一帯にバトルフィールドを設置した。


「ふぅ……これでひとまず安心……」

 萌莉はもう一度左右の人差し指を胸の前でくっつけると、それをそっと離す。


 すると右回りの時計の針だけが再び動き始め、時の流れが正常に戻った。


 時が戻ると、アテナの放った神の斧により、球体が真っ二つに割れる。


「えっ!?」

 突然球体の外に立っている自分に気付いた美伊は声を上げる。

 ──こ、これは……。


  挿絵(By みてみん)


「痛ッ」

 その傍らで倒れていた葵大は、急に襲った痛みに驚きながら立ち上がる。

 ──も、萌莉さん、もしやスキルで時を止めた!?


  挿絵(By みてみん)


「葵大君……ごめん……ふたりを同時に……抱えるのは……無理だった……」

 言いながら萌莉はスキルの後遺症で顔が青ざめている。


「……ほう……少しは()()ようね……」

 アテナはそう言いながらも、萌莉のスキルに驚きを隠せない。


  挿絵(By みてみん)


 ──如月萌莉だったかしら、あの子、ものすごいスピードで仲間を抱えて、外へ瞬間移動した? 


 ──いや、おかしい。ちがう……確か……あの子は時を少し操れたはず。スキルで時計も出現してたから……おそらく時を遅らせただけでなく……時を止めた……!?


  挿絵(By みてみん)


 ──前世がタマヨリという猫だったはずだから……()()()()()()()との縁は()()()()なのに……時を止められるまで成長しているの? そうだとしたら……厄介だわ……。


「貴方達の成長速度だけは一目置かなければならないようね……」

 アテナが腕を振るうと光の渦巻きが生じる。


 美伊と葵大は身構える。だが、萌莉はふらつき倒れそうになっていた。美伊と葵大が即座に両脇から支えたものの、萌莉は体に力が入らなくなり、立っているのが()()()の状態であった。


  挿絵(By みてみん)


「フフフッ。さすがに()()スキルを()()だけ使えば、負担も大きいでしょう」

 ──時を止めるスキルは多用できなさそうね。


 アテナは続ける。


  挿絵(By みてみん)


()()()()のつもりだったけれど、少しは骨があるみたいだから貴方達にも名乗って差し上げましょう、私の名はアテナ・テア。戦い、正義、学芸の神にして都市アテネの守護神、アテナの末裔よ」


最後までお読みくださりありがとうございます。ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております!!!今年一年、お付き合いくださりかなり励みになりました。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


◇語句スキル解説

神工鬼斧(シンコウキフ)

……鬼神が斧を振るって精巧緻密な作品を作り上げたという話から、人間業とは思えぬ程の素晴らしい作品またはそれを作る神業、名人芸自体を指す。ここでは、斧で攻撃するスキルとなっているが、使い方次第で敵本体への攻撃の他、地形や建造物、敵の武器などを破壊したり変形させたりすることができるスキル。


光陰流水(コウインリュウスイ)

……「光陰」は太陽と月を意味し、月日すなわち時のことをさす。「流水」は流れる水を意味し、時の流れが流水のように早いことから「時の流れがとても早いこと」を意味する。類義語として、光陰矢の如し、一寸光陰いっすんのこういん烏兎匆匆うとそうそうなどもある。ここでは時を早く進めるスキル。


遡及(ソキュウ)

……難解な二字熟語として挙げられる語で「時間がさかのぼること」を意味する。「遡及効」のように法律用語などでも使用される。ここでは時を遡らせる(時の巻き戻しをする)スキルのこと。『光陰流水(コウインリュウスイ)』と合わせて使用することで、萌莉は時を少し操ることができるようになっている。時を遅く進ませたり、巻き戻したり、また本編にあるように時を止めることができるようになった。


※なお、萌莉が使った同様の時を操るスキルとして、①『灰燼に帰す(カイジンニキス)』』(時を早めて武器防具などの対象物を朽ちさせるスキル)や、②『死灰復燃ゆ(シカイマタモユ)(回復させたりスキルを無効化したりするスキル)もあるが、これらは使用後、心身ともにかなりのダメージがあるので、萌莉は、単に時を進めたり、巻き戻したりするために新たにスキルを開発した。だが、時を止めるとさすがに使用後のダメージが大きすぎるようである。


以上になります!


次話は年明けになると思いますが、アテナとの闘いはより熾烈になる……かもしれません。他にも強敵が登場する予感……また、いよいよ、洸乃介や久愛、アヤトが、前世の相棒だった文月紫水、卯月美伊、長月柊龍たちとともに闘う!?


お楽しみに!(*´ω`*)

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今年一年お世話になりました。来年も楽しみにしています!
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