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#78 第77話 絡繰り人形・瓜二つ 

ずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方もありがとうございます!


本章も佳境となってきました!


ではさっそく第77話を始めます!


「くっ……」


「う、梅佳ちゃん……」

 カリンが不安げに梅佳を見つめる。


「さぁ、カリンちゃん、君も僕のペットになる覚悟ができたかな!?」

 ディオがカリンに微笑みながら問いかけた。


「カリン、あやつの言うことに惑わされるでないっ」


「ペットは黙ってなさいっ」

 ディオは梅佳を睨むとまた左の五指を動かす。


  挿絵(By みてみん)


 すると、梅佳は自分の両手で口を覆う。息が苦しくなるほど強い力で──。

「うぅ……」

 ──このままでは……。


「さぁさぁ、カリンちゃ~ん」


「やだ。梅佳ちゃんを元に戻して」


  挿絵(By みてみん)


「ダメだよ~ふたりが僕のペットになってくれるなら考えなくもないけどね~」


「……」

 ──どうしたらいいの……。どうやって梅佳ちゃんを助けられる……?


 カリンは考えを巡らせるが思いつかない。


 白鼠も歯がゆい表情を浮かべカリンの傍で立ち尽くす。


 しびれを切らしたディオが少し声を荒げた。

「僕は気が長い方だけれど、早くアテネ・テアと合流したいしね~カウントダウンするよ~」


 言いながら左の五指を操作すると、梅佳がカリンの傍へ歩み始める。


「えっ!?」


「や、やめろっ」


 梅佳が叫ぶも、梅佳の体はその意に反して動き、カリンと間合いを詰めるや否や腹部を右拳で殴りつけた。


  挿絵(By みてみん)


「うぅ……」


 カリンはあまりの激痛に両膝をつく。


  挿絵(By みてみん)


じゅーう(10)

 ディオがカウントダウンを始める。


「カリン……まずは防御スキルじゃ! それから、わらわを倒すつもりで反撃するのじゃ!」


「そうはさせないよぉ~」

 ディオは再び、指を動かす。


 カリンがスキルを唱えようとすると、ディオに操られた梅佳がまた間髪入れずカリンに攻撃し始めた。


  挿絵(By みてみん)


「うぅ……」


「くっ……す、すまぬ……カリン……」


 梅佳の攻撃は止まない。うずくまり呻くカリンの頭を両手で掴み、無理やり立たせると、右膝蹴りを顎に食らわせ、さらに踏み込み右拳を打ち込む。


「うぐぁっ」

 カリンが後方に吹っ飛ばされ、ドサッと地面にあおむけで倒れ込んだ。


 カリンも、梅佳も、ともに顔はひきつり、青ざめている。


きゅーう()はーち()

 ディオの非情なカウントダウンが続く。


「もう見てられませぬ……」

 カリンの傍らで静観していた白鼠が声をもらす。


  挿絵(By みてみん)


 白鼠は尾の鞭を手に持ち、ディオの方へと向かった。


「ディオとやら、豊穣の神の末裔と言えど、一連の所業、神の行為とは到底思えませぬ」


「邪魔するんじゃないよ、僕は大黒天のように鼠を使いにするなんて考えられないくらい鼠が嫌いなんだ、歯向かうなら消すだけだよ」


「勝てぬとて、このような卑劣な行いを黙って見過ごすようでは大黒天様にも愛想をつかされまする……御免、『猫が塩を引く(ネコガシオヲヒク)』っ!」


 白鼠の表情がアレスと闘ったときと同様、恐ろしい形相へと変わる。同時に尾の鞭を振り回し始めた。


  挿絵(By みてみん)


「無駄だよ~『アオナニシオ』」

 ディオも応戦し、すかさずスキルを唱えた。


 ディオは力士が土俵入りする前に塩をまくのと同じ所作で、キラキラと光る白い粉を右手でまく。


 白鼠の尾の鞭に白い粉が降りかかると、ジューという音とともに尾の鞭が動きが鈍る。そのまま尾の鞭自体は干からびて消え去った。


 だが──。


「カリン様、()()()()です! 防御スキルを唱えてくだされっ」

 白鼠が叫ぶ。


「鼠よ、()()()()っ! 良き働きぞっ カリン、急ぐのじゃっ!」

 梅佳も声を上げる。


 白鼠のディオへの攻撃はカモフラージュ。尾の鞭をいくつか生じさせた白鼠は、ディオへの攻撃の裏で、梅佳の四肢を尾の鞭で封じていたのだ。


  挿絵(By みてみん)


「ほぉ~やりますねぇ~」

 ──鼠ごときが『絡繰り人形(カラクリニンギョウ)』の糸の動きを封じるとはねぇ~。


 カリンは慌てて右拳を前方に突き出し、防御スキルを唱える。


「『焼け石に水(ヤケイシニミズ)』『蛙の面に水(カエルノツラニミズ)』」


  挿絵(By みてみん)


 カリンの右拳に水色の光が灯るや否や、周囲から水色の光の粒子が収束していった。大きな塊となった光は、ぬるぬるとしたスライムのような液体へと変化していく。


 そして、ゼリー状の液体はカリンの体を包み込むと光り輝き始めた。


「ハーデスに使った二つの防御スキルだね~。『焼け石に水(ヤケイシニミズ)』はスキル攻撃を無効化し、『蛙の面に水(カエルノツラニミズ)』は物理攻撃を防御するんだったかな?」


「データにあるけど、 ()()()()のスキルコンボだよね。さらに進化させたようだし」

 ──水属性の防御だよね~、尾の鞭と同時に消してやろうか~。


「『ツチニカエル』」

 ディオは右手で今度は白ではなく、茶色い土のような粉を右手でまいた。


 ディオのまいた粉がキラキラと輝きながらカリンと梅佳にふりかかる。カリンの全身を覆うゼリー状の液体は、粉が降りかかると、土に吸収されていくかのように消えていく。


 梅佳の動きを止めている尾の鞭は、みるみるうちに腐り、朽ちて消えていった。


  挿絵(By みてみん)


「なっ!?」

「なんと……」

 カリンも白鼠も目を丸くする。


「僕の大事なペット梅佳ちゃんも、これからペットになるカリンちゃんも、心配ご無用~君たちは土に還さないからね~鼠男くんはどうしようかねぇ~」


「くっ……」

 ──やはり奴のスキル……手強いのぉ……頭もキレる上に……バトルセンスも相当高いのぉ……。


 梅佳の顔が再びくもる。


 そのとき、白鼠が動いた。


「私は、あなたを豊穣の神の末裔と決して認めませぬ。いざっ!『袋の鼠(フクロノネズミ)』」


  挿絵(By みてみん)


 白鼠はアレスを仕留めたスキルを唱える。白鼠が白い袋をディオの頭上に放り投げた。


「ふはははは。()()()()さぁ~()()()ってさぁ、袋に入るのは()()()でしょうよ? 『ウリフタツ』」


 ディオが座したままスキルを唱えると、右の掌に瓜が出現する。


 ディオが瓜を空中にある白い袋に目掛けて放り投げると、白鼠が投げた白い袋をコピーしたかのように瓜二つの白い袋へと形を変えた。


 ディオが右手の指をパチンッと鳴らすと、ディオの袋の方がさらに大きく膨らみ、白鼠を頭からすっぽりと覆って中に閉じ込める。


  挿絵(By みてみん)


「ぬうっ……」

 白鼠は瞬く間に真空パックされるがごとく袋に締め付けられていった。


「む、無念……カリン様、まことに……申し訳……」

 最後まで言い切る前に、袋がパーンとはじけ、白鼠は粒子の粉となって舞い、消えていった。


「……ひ、ひどい」

 カリンは目を潤ませながら立ち上がり、ディオを睨みつける。


 だが、非情にも梅佳の追撃が再びカリンを襲う。


 今度は梅佳の右のローキックがカリンの左膝にヒットする。


  挿絵(By みてみん)


「うぅっ」

 

 体勢を崩したカリンの頭部に梅佳の左ハイキックが炸裂する。


  挿絵(By みてみん)


「うぐぁっ」

 またもや吹っ飛ばされるカリン。


  挿絵(By みてみん)


なーな()ろーく()、ふふふ」

 悠長に椅子に腰をかけたままカウントダウンするディオの声が、梅佳とカリンを嘲るように響いた。


 ──不幸中の幸いは……わらわの()()()ではなく、()()()()ですんでいるところじゃが……それでも……このままではカリンがもたない……。


「カリンちゃん、ペットになります、と言うだけで助かるんだよ~」


「……な、なるもんか……」

 カリンがゆっくりと立ち上がる。


「カリン……」


「ごめんね、梅佳ちゃん。あたし……偉そうに絶対諦めないって言ったのに、どうしようもできない……」

 痣だらけのカリンが目を潤ませながら立ち尽くす。


  挿絵(By みてみん)


「すまぬ……()()()()()のは、わらわの方じゃ……」


「ん~僕は飽き性なんだよぉ~これ以上、同じ展開がつづくと飽きちゃうんだよね~。梅佳ちゃん、これを使おうか」


 言いながらディオはワイングラスをテーブルにたたきつけ割り、ステム──手に持つところを梅佳に向けほり投げた。


「なっ……」

 梅佳の意思に反して、ワイングラスのステムを梅佳の右手がキャッチする。


「カ、カリン、逃げるのじゃ……」


「ダ、ダメ……だよ……」


「後生じゃ……頼む……」


「はいはい、感動のシーンなんていらないよ~『ウゴシュンジュン』」

 ディオがまた左手の五指で梅佳を操りながら、さらに右手で梅佳を指さしスキルを唱えた。


  挿絵(By みてみん)


 ディオの右人差し指から緑の光が放たれ、梅佳が手にもつステムに命中すると、ステムがニョキっと伸びて槍状になる。


「や、やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」


 梅佳の叫びも()()()()、ガラスの槍をもった梅佳がカリンを襲う。カリンに飛びついた梅佳は、カリンを押し倒し、馬乗りになった。


  挿絵(By みてみん)


「ぐぅうううっ」

 梅佳は必死に自身の体を動かそうとするが、全く体が言うことを聞かない。


  挿絵(By みてみん)


 仰向きのカリンのお腹の上にまたがる梅佳がガラスの槍を振り上げる。


「きさまぁっ、やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」


最後までお読みくださりありがとうございます。ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております。かなり励みになっています。今後ともよろしくお願い申し上げます。


□語句スキル解説


青菜に塩(アオナニシオ)

……青々とした野菜(青菜)に塩をふりかけるで水分が奪われてしおれることから元気だった人が何かをきっかけに元気をなくしてしまうことを意味する。ここでは命あるものの命をけずり、動きがあるものの動きを鈍くさせるスキル。


土に還る(ツチニカエル)

……有機物が完全に分解されて土の一部となることを意味する。ここでは命あるものの命を奪ったり、水属性のスキルの効力を無効化するスキル。これによりカリンの防御スキルも無効化された。


瓜二つ(ウリフタツ)

……よく似ていることを意味する。ここでは敵のスキルをコピーするスキル。ただし力に差がない場合は相殺する程度にとどまり、力に差がある場合は相手のスキルを打ち破ることもあるスキル。


雨後春筍(ウゴシュンジュン)

……雨が降った後たけのこがたくさん物凄い速度で生え出ることを意味する。 ここではワイングラスのステムを引き延ばし槍と化すに至ったが、本来は武器の力や速度をアップさせるスキル。


以上になります。


いよいよ次話で本章(第11章)が完結します(万が一2話になった場合、同日に2話更新します)!お楽しみに(*´▽`*)

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