#72 第71話 血路を開く・天涯地角
ギリギリ間に合いませんでしたm(_ _)m申し訳ないですm(_ _)m更新日時を予告すると毎回のようにアクシデントがあります。これは界隈あるあるなのでしょうか(´;ω;`)
さっそくですが第71話を始めます(*´ω`*)
カリンたちをAI店員が出迎える。
白いワイシャツに赤いリボン、紺のジレに黒のスカートのユニフォームと、水色のホログラムヘッドフォンがトレードマークのAI店員が空中に浮かぶモニターをタッチして操作している。青い瞳に黒髪セミロングのかわいい少女のAI店員だ。
「いらっしゃいませ。如月萌莉様ですね」
「はい」
萌莉がAI店員とやりとりをかわす。
「五名で予約を頂いておりました。ご変更等はございませんか?」
「はい、大丈夫です」
「では、お席にご案内いたします」
AI店員が先導して店内へと入っていき、五人がその後につづく。
一番奥の広い席が見えてくると、カリンが真っ先に声をあげた。
「わぁ~、すごいすごい、きれいっ」
他の座席よりうす暗い一画にあるテーブルには、ホログラムモニターがメニューを表示している。その周りをカラフルな光がハートを描きながら舞っている。奥にある大きな窓からは外の景色が眺望できる特等席だった。
カリンは座席に駆けていき、窓から見える景色に目を輝かせている。
「お飲み物が決まりましたら、メニューをタッチしてご注文してくださいませ。ではごゆっくりお楽しみください」
AI店員は一礼すると座席から去っていった。
「さぁ、飲み物を選んだら、始めるよ~。私はコレ」
萌莉は自身の飲み物をタッチし、皆にも促す。
四人もホログラムモニターに映るメニューから各々飲みたいドリンクをタッチしていく。
すると間もなく先ほどとは別のAI店員が飲み物を運んできた。出迎えてくれたAI店員と同じ制服で容姿もそっくりなのだが、瞳の色はブラウンだった。
「お待たせしました」
AI店員が五人のいるテーブル近くにくると、お盆の上に五つのグラスと、フルーツと白玉とあんこが一面いっぱいにのったホールケーキが出現する。
すると、突然、AI店員が歌い始めた。
「ハッピバースデートゥーユー♪、ハッピバースデートゥーユー♬」
萌莉と美伊、そして葵大も店員にあわせて歌い始める。梅佳も照れくさそうに小声で口ずさむ。
歌が進むにつれて、グラスやケーキのあたりにハート形のシャボン玉が次々と現れ、ぷかぷかと浮かんでいる。
「えっ!? なになに!? 誰かのお誕生日!?」
自身の誕生日だとまだ気づいていないカリンはただ驚くばかりであった。
「ハッピバースデー、ディ~ア、カリンちゃ~ん♪」
同時に、ケーキの上にホログラムで「HappyBirthday!Karin」という誕生日のお祝いメッセージが出現する。
「えっ!? あたし!?」
カリンが声をあげる。
「ハッピバースデートゥーユー♬」
萌莉たちとAI店員が拍手をする。
「「「おめでとう!」」」
「「おめでとうございます!」」
「カリンちゃん、十六歳になったね! 母としても友達としても本当に嬉しいわ」
「あ、ありがと……」
──そうか……あたし、今日、誕生日だったんだ……。
転生前の記憶つまり猫のときの記憶がそのまま残るカリンにとっては、一歳の初めての誕生日になるので、自身の誕生日を意識していなかった。
それだけでなく、萌莉たちがサプライズのため誕生日の話題を避けていたことと相まってカリンは感動することを忘れたかのようにただ目を丸くするばかり。
猫としても人としても初めての誕生日会を開いてもらい、友達に祝ってもらうことも、お祝いメッセージが書かれたホールケーキを見るのも、すべてが初めてのことだったのだ。
それでもじわじわと感動がこみあげてきたカリンは大粒の涙をぽろぽろと零す。
「内緒だったのは、あたしの誕生日だったからなんだ……」
「そうよ~サプライズ誕生日会っ!」
「カリンさん、このケーキも絶品ですわ」
葵大も目頭が熱くなっていた。
──あぁ……あのタマヨリさんが娘の誕生日を祝ってる……来て良かった……。
梅佳も不思議なあたたかい気分に包まれていた。
──人間は、こうやって親子や友人との絆を深めていくのじゃな……。
「乾杯しましょ~♪」
皆がグラスを手に取り、萌莉が音頭をとる。
「カリンちゃんの誕生日を祝って~」
「「「「「乾杯っ!」」」」」
五人は束の間の楽しいひと時を過ごす。
梅佳のグラスが空っぽになっているのを見た萌莉と美伊が声をかけた。
「梅佳ちゃん、飲み物、おかわりする?」
「何か飲みたいものはございますか? 飲み放題メニューはこれです」
美伊はホログラムのメニューを指でつまむようにして梅佳の前に移動させた。
「あぁ、かたじけない、それでは──」
──飲みたければ自身で注文するのじゃったな……こういう場は不慣れじゃ……。
そのときだった──。
ホログラムのメニューを見ている梅佳に悪寒が走った。梅佳の顔が一瞬で青ざめていく。
──なぜじゃ……。
──なぜ、気づかなんだ……。
梅佳はメニューではなく、その先のテーブルに座っている三人を見ていた。
──い、いつからじゃ……!?
──やつらはいつからあそこにおった……!? わらわが気づかぬとは相当な手練れのはず……。まずい。みなを逃がさねば……。
「梅佳ちゃん? 決まらない?」
萌莉が尋ねる。美伊が先に梅佳の異変に気付いた。
「梅佳さん……顔色が悪いですわ。ご気分が良くなくて?」
「い、いや、大丈夫じゃ……ちょっと時間をくれぬか……」
──やつらが攻撃を仕掛けてくる前に、みなを逃がすには……。
梅佳が気づいたことを察知した向かいのテーブルの三人が思念で会話を交わしはじめる。
藤色の長い髪、紫のワイシャツにジーンズを着た美しい女性が頬杖をついたまま二人に伝える。
──どうやら気づいたようね。観察は終わり。さぁ、はじめましょう。レア、ディオ。
──弥生梅佳だな。さすが抜け目のない奴だ。俺が相手をしよう。よいな?
黒のワイシャツ、オフホワイトのスーツを着た、空色短髪の男は血気盛んなアレス・レア。
──レア、いいんだけど、弥生梅佳だけはお持ち帰りの許可が出ているから一応確認だけはしてね。まぁ任意だから、基本的にこの場で皆殺しよ。
──ああ、分かってる、テア。
女性はアテナ・テアだった。
もうひとり、ブラウンのジャケットを着た紫髪の男、ディオは欠伸をしながら気怠そうにふたりに伝える。
──こちらも面子が減ってるからさぁ~弥生梅佳くらい、きっちり仲間にした方がいいんじゃないの~? にしても、それ以外は、みーんな吞気なもんだねぇ~これから死ぬっていうのに。あんなに楽しそうにしている人、地底じゃ見たことないよ~。いっそのこと、みんな仲間にしてみない?
──冗談言ってる場合じゃないわ、ディオ。ああいうのを最後の晩餐っていうのよ。さぁ、やるわよ。
──ディオ、邪魔するなよ。
──あいよ~じゃぁ、僕はここにいていいかい?
──好きにしろ。
──いいけれど、確実に仕留め終わるまで油断しないでよ、ディオ。
──あいよ~。
三人のうち二人が立ち上がったのを見た梅佳はスキルを唱える。
「『ケツロヲヒラク』『テンガイチカク』」
梅佳の両拳が真っ赤に染まり、拳から赤い光の粒子が四方八方に飛び散っていく。
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◇語句スキル解説
『血路を開く』
……敵の包囲から逃れるという意味から転じて、困難な状況を解決する方法を見つけること。類義語に活路を開く、もある。ここでは格上の敵から仲間を逃がすためのスキルとして梅佳が発動させている。攻撃過多の梅佳が仲間を逃がすためのスキルを開発したのはやはり仲間への愛から。スキル効果は次話にて。
次話もできるだけ早いうちにアップしますので、今後ともよろしくお願い申し上げますm(__)m




