#7 第6話 清廉潔白・時期尚早
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GW中の一挙4話更新の最終話になります。どうぞよろしくお願いいたします。
久愛に迫る金の刃。絶体絶命!
スパン──。
刃の餌食になったのは久愛ではなく、洸であった。
洸の右腕の肘から先が宙に舞う。それを追うかのように血しぶきもあたりに飛び散った。ドサっと洸の右腕が地面に転がる。
「うぐぁあああああああああああああああああああああああ」
右の二の腕をおさえながらうずくまる洸。
それを目にした久愛は一瞬頭が真っ白になるも、すぐさま正気を取り戻してスキルを唱えようとする。
──セイレンケッパク! セイレンケッパク!
かつてのバトルで何度も洸たちを救った回復系スキル『清廉潔白』だが、発声できない久愛は「うー、うー」と唸ることしかできない。半狂乱気味に全身に力を入れるが身動きも依然取れなかった。
悶える洸はあまりもの激痛に気を失う。
切断された箇所から大量の血が流れ落ちるのを見たアヤトはこれまで感じたことのない憤怒の情を覚えた。
「て、てめぇ、許さねぇ」
ブチギレたアヤトがミダスに向けてスキルを唱える。
「『シップウジンライ』!『フウジンライジン』!」
アヤトが両腕を広げ、両方の手のひらを上に向けると左右に小さな雷雲が生じた。
──このスキルで威力はどれくらいだ?
怒りがこみ上げながらも、アヤトは最低限の冷静さを保つ。あえて2つのスキルを同時に唱えたアヤトの周囲に稲光が走る。
「ワォ、面白ソウナダブル攻撃デスネ、チョット楽シミ……デス」
かつてのAI暴走事件で「風雷」属性だったアヤトの2つのスキル──『疾風迅雷』は風の精霊と雷の精霊を召喚し、他方、『風神雷神』は文字通り、風神と雷神を召喚するスキルで、ともに威力絶大であった。
しかし、早朝の試し打ちでそれぞれ片方──雷のスキルしか出現しないことを認識していたのだ。
アヤトの右掌の上方に雷の精霊が、左掌の上方に小さな雷神が現れる。
「和洋折衷デスネ……ジツニ、興味深イ!」
先ほどより見るからに強力であろうスキルを目の前にしてもまだ余裕を見せるミダス。
雷の精霊と雷神が同時にミダスへ襲い掛かる。
雷の精霊は疾風迅雷の意味のごとくすばやい動きでミダスの周囲を飛び回りながら、激しい雷の攻撃を繰り出した。ひとつひとつの威力は小さいながら、無数の電撃をミダスに浴びせる。
雷神は地に降り立つと同時に巨大化して、ミダスに攻撃を食らわせる。雷神はスピードこそ精霊に劣るものの、帯電した腕から力強い雷の塊を放出させ、何発もミダスに命中させた。
精霊と雷神の攻撃に、ミダスが再び動揺の色を見せる。
「グハッ……凄マジイ……デスネ……」
──これはさすがに効いたか……。
アヤトはふと気を失っている洸と金縛りにあっている久愛を確認した。
──久愛を早く動けるようにしないとな……。
アヤトはさらに唱える。
「『デンコウセッカ』!」
アヤトの右掌に光る球が2つ生じる。アヤトは自分たちではなく、精霊と雷神に向けてそれらを放つ。精霊と雷神にぶつかると球ははじけて彼らに光が降り注がれた。電光石火の速度アップ効果が精霊と雷神に生じたのだ。
攻撃速度のアップによってみるみるうちにダメージが大きくなったミダスは苦し紛れにスキルを唱えた。
「『金縛り』」
精霊と雷神の身動きができなくなる。
「フゥ……ヤット攻撃ガ止マリマシタ……ヤレヤレ」
──ちっ。次、どうする……。
アヤトが策を考えあぐねていると久愛の声が耳に入った。久愛にかけられた『金縛り』の効果が解けていたのだ。
「『清廉潔白』!」
久愛は洸のそばに駆け寄り、左手をかざし回復スキル『清廉潔白』を唱えた。
すると、近くに落ちていた洸の右腕が洸のもとへ飛んできて、目を見張るスピードで元通りに治っていく。
「うそ……」
久愛は『清廉潔白』の治癒効果に驚愕した。止血を急ごうと思っていたのだが、腕は止血されるどころか、傷跡ひとつない元の状態に戻ったのだ。そして、洸は目を覚ます。
「はっ、久愛、大丈夫? あっ、僕、右腕……あれ?」
「なんか……よくわかんないんだけど、『清廉潔白』で元通りになったよ。大丈夫? 痛みは?」
「大丈夫。全然痛くもかゆくもない。それより、敵は?」
「まだ、闘ってる」
「洸、大丈夫か? なんか、このバトル、ヤバいけど、回復スキルもすげぇな」
アヤトも駆け寄ってきた。
「洸、平気か?」
アヤトが声をかけると、洸は切断されたはずの右腕を触ったり動かしたりしながら確認する。
「あぁ。全然大丈夫みたい。バトルもできるはず」
「洸、ちなみに、俺の『疾風迅雷』と『風神雷神』は見ての通り……」
洸たちが見た方向には、金縛りにあって身動きが取れない雷の精霊と雷神がいた。そのそばでミダスが回復スキルを自身に施している。
「あのレベルのスキルも効かないのか」洸が嘆く。
「初めてダメージは与えられたけどな。バトルを終わらせられるほどじゃない」
「私たち、勝てるかな……」
久愛が不安げにもらしたときだった。
「どうしたんだ? 君たちぃ!」と遠くから声が聞こえた。
三人が振り返ると、公園の出入り口あたりから大声で呼びかけている警察官とカリンの姿が目に入った。
「久愛姉にゃ、みんな大丈夫にゃあ???」
カリンも大きな声を発しながら一直線に駆け寄ってきた。
「青白い顔をした変な男性がいたと聞いたのだけど」
警察官が話すと、三人はミダスのいた方を向くが、そこにはもう誰もいなかった。
アヤトがボソッと口を開く。
「いたけど、顛末を話したところで信じてもらえねぇし」
「あ、僕が説明します」「私も」
割って入った洸と久愛が警察官に一部始終を説明した。
ミダスは警察官の姿を見た瞬間、すぐさま姿を消していたのだ。
──残念デス。アレ以上アソコデバトルヲ続ケルト騒ギガ大キクナリマスネ。マダ我々ノ存在ヲ知ラレルニハ時期尚早。今日ハコレニテ退散スルトシマショウ。アァ、残念……デス。デモ……暗殺ヨリバトルノ方ガ楽シイデスネ、実ニ興味深イ人間タチダ」
ミダスは後ろ髪を引かれる思いでその場を去っていった。
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この4日間で、もはや筆を折りそうな状況でした( ;∀;)
改稿原稿保存ミス(第4話~第6話でやらかしました……)から始まり、連日寝落ちでGW中、ベッドで一度も寝ていません(;´・ω・)今日と明日はベッドで寝られると思いますが!
こんな感じですがなんとかがんばってまいりたく思っています。今後ともよろしくお願い申し上げます。