#69 第68話 胸にしまう・同じ思いを胸に抱く
また予定よりずれてしまい申し訳ないです。ずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方もありがとうございます!
今回の第68話で、本章が終わります!(*´▽`*)
では、さっそく──。
「ナインス、余談、余興はここまでじゃ。ゼロスの代理ということは、何か目的があるのであろう? 本題に入れ」
梅佳がしびれを切らしたように急かす。
「あっ、そうでごじゃる。オイラが地上に来たのはゼロスから皆へ伝言があるからでごじゃる……」
ナインスが右手を前方にかざすと、掌に光が灯る。同時にナインスの尻尾が再びゆらゆらと揺れ始めた。
ナインスの掌から放たれた光は、七色に輝きながら、瞬く間に五人の目の前で長方形を描いていった。
ジジ、ジジ。ジジ──。
長方形はモニターへと変化していく。モニターの縁には虹色の光が走る。そして、光の粒子が画面内で舞うや否や、収束していき、ゼロスの顔が映し出された。
「……やあ、みんな、元気かい?」
「「「「「!!!!!」」」」」
「申し訳ないのだけれど、僕は皆の前に姿を見せることはもちろん、話すことさえままならなくなってきてる。だから、ナインスを使者として地上に送ることにしたんだ」
「「「「「!?!?!?」」」」」
唖然とする五人に、ナインスが付け加える。
「このメッセージはライブではなく録画でごじゃる。重要なメッセージがあるでごじゃる。ちなみに、オイラは代理と言ってもただの使者で、正式なリーダー代理はファーストが務めることになったでごじゃる」
「あっ! 夢でお会いした、ヘラ・ラヘさんのことですか!?」
美伊が尋ねると、ナインスは頷く。
「そうでごじゃる……とりあえず、話を進めるでごじゃる」
ナインスが指を鳴らすとモニターのゼロスが再び話し始める。
「では、さっそく本題に入るよ」
「一、紫水君と柊龍君の地底でのミッションは終了とする。ふたりとも重要なミッション、ご苦労様。この上なく感謝してる。だけど、今後は他の者たちと活動をともにしてほしい」
「二、能力を与えられし者は全員、バトル能力をアップさせることを急務とする。これからの敵はこれまでより相当な猛者たちだと心しておくこと。こちらのファースト”ヘラ・ラヘ”が各自の夢で話したアドバイスにしたがって、皆バトル訓練に励んでほしい」
「お、俺たちの地底での活動が終了……?」
紫水が声をもらす。
隣の柊龍も驚きを隠せない。
「仕方ないでごじゃる。うまくいっていただけに、オイラも歯がゆいでごじゃるが、文月紫水、長月柊龍のふたりだけで、地底世界で諜報活動を続けるリスクが高くなったと判断されたでごじゃる」
「地上でバトル訓練をしてろってことか……」
紫水はひとまず納得し、柊龍と顔を見合わせ頷き合った。
再びナインスが指を鳴らす。
「そして最後に──」
モニター内のゼロスが一瞬、間を置いた。
「三、前世がAIの者は元相棒にその事実を知らせないこと。人類滅亡を阻止するまでは辛抱してほしい」
「「「「「!!!!!!!!!!」」」」」
「以上。このメッセージは自動で消去されないからね。ナインスに頼めばいつでも再視聴できる。では、健闘を祈ってるよ。また会おう」
ゼロスがニコッと笑みを浮かべる。
ゼロスを映し出していたモニターをナインスが右手の指で弾くと、モニターは光の粒子となって弾けるようにして消えていった。
「オレたちが元AIだってことを秘密にしなきゃいけないだとぉ……?」
勇希が愚痴をこぼす。
美伊もナインスに問う。
「元相棒だと知ったら何か不都合があるということでしょうか?」
「そうでごじゃる。ただでさえ友達思いの皆の性格から、元相棒のAIだということ、転生して生身の人間になっていることを知ったら、バトルでいざというときに足枷になる可能性が高いでごじゃる」
「非情な決断ができぬ可能性があるということじゃな?」
──そうか……わらわと違ってあやつら同士の絆は……。
刹那、寂しそうな表情を浮かべた梅佳にかまわず、ナインスが続けた。
「人類を守ることを優先するなら、知らない方が良いということでごじゃる。残念ながら全員が無事で済む可能性は極めて低いでごじゃる。出自を知らない方が生存確率や生存者数が増えるという試算が出ているでごじゃる……」
「……もっともなことじゃな……わらわのことはもう皆知っておるが問題なかろう……」
──そうじゃ……こやつらにはわらわと闘ったときにできた深い絆がある。
──いざというとき、仲間のために命を張りかねぬ。わらわとの関係とは次元が異なるのじゃ。
──皆とわらわとの関係は希薄……当然じゃ……自業自得……因果応報……。
自分に言い聞かせるようにして梅佳は前を向く。
紫水が静かに口を開く。
「……俺と柊龍はもとより覚悟できてる。闘いが終わったあとすべてを明かして再会を喜ぶんだ」
紫水のことばに柊龍もうなずく。
「……なるほど、そういうことか……なら、オレも……了解した」
「……私も……秘密は胸にしまっておきます……」
勇希と美伊も「元相棒のAIだと明かさない」というゼロスの言葉を受け入れる。
「……皆、命は大切にするでごじゃるよ……では……オイラはちょっと地上見物をしてから地底へ帰るでごじゃる。失礼……」
ナインスはそう言い残し、光の粒子となって消えていく。
五人はナインスが消えるのをただ黙って見送った。
誰も口にしなかった、というよりは何も口にできなかった。「生存確率や生存者数が減る」という物騒な言葉が脳裏に焼き付いていた五人は、皆、同じ思いを胸に抱く。
──たとえこの命にかえても──。
──絶対に、誰も死なせない──。
お昼休みの終了を告げるチャイムが静寂を破った。五人の誓いに呼応するかのように──。
最後までお読みくださりありがとうございます。ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております。かなり励みになっています。今後ともよろしくお願い申し上げます。
今回も語句・スキル解説はありません。次話からは新章突入となります!新たな敵の予感!(/ω\)お楽しみに(*´ω`*)※少しお日にちをいただきます。6月中にもう一話分、更新できると思います!




