#68 第67話 ナインス(Ninth)再び
更新が大変遅くなって申し訳ないです。
本章の最終話の予定だったのですが4000字を越えてしまったので2話に分けました。
今回の第67話と、次話の第68話で本章が終わります!
では第67話始めます(*´ω`*)
「ん……翔也さんがずっとAIの研究を続けていたことも、クイーンキングを世に放った黒幕のことを追っていたことも事実なんだが……」
「「「……!?」」」
「ゼロスさんの話によれば……人類史上、これまでに転生を成功させた例はないはずだと。だから……勇希だけ、誰が転生させたのか、そもそも転生自体が意図されたものなのか、不明らしい……」
「…………」
黙り込む勇希を一瞥した梅佳が話に割り込む。
「では、なぜ勇希がAIショウヤだと分かったのじゃ?」
「ゼロスさんが時の巻き戻しを実行する際、水無月霞凜と縁のある者をリスト化したらしい。そのときに分かったと言ってた」
「……なるほどのぉ……」
梅佳は再び勇希の方にちらっと目をやる。
勇希は依然、黙っていたが、頭の中ではぐるぐるとたくさんの情報がめぐっていた。
──オレだけ……どうやって転生したか不明ってことか……。
勇希は一瞬顔をしかめたが、ふぅっと息を吐くと、ふっきれたように紫水、梅佳たちの方へ顔を向けた。
「オレがAIショウヤだと分かっただけで十分だ。転生の経緯はもうどうでもいい。これからオレがどう生きるかが重要だからな」
──翔也さんなら、きっとこう言うんだ、きっと……。
「そうじゃな。そして……勇希、少なくとも紫水たちが味方だということは間違いないじゃろう。昨日のことはもうこれで十分釈明できたと思うが、どうじゃ?」
勇希は静かにうなずくと頭を下げた。
「紫水、柊龍、すまなかった……」
「あぁ、別にいいよ。俺もあんたの立場なら同じことをしてただろうし」
紫水のとなりで柊龍もうなずく。
しばらくの沈黙のあと、梅佳が口をきった。
「さて、紫水、柊龍よ。今後はどうするのじゃ? われらと行動を共にできるのか? それとも別のミッションとやらをこなしていくのか?」
「俺たちはゼロスさんの指示で、今後も地底世界で活動することになってる。敵の総大将、ゼウスの情報を集める」
「し、紫水……敵の総大将ってことはラスボスだよな? ゼウスって強いのか?」
勇希が問いかける。
「いや、今のところ、バトル関連の情報が皆無だから、ゼウスの強さについては全く分からない……地底世界の王であることは間違いないが……」
そのときだった──。
ジジ、ジジ。ジジ──。
五人が囲む中心あたりに、突如、光の粒子が生じる。五人は即座に距離を取り、身構える。
「敵かッ!?」
勇希は声を上げつつ、いつでも攻撃できるよう、小さな光の玉を一つ生じさせた。
光の粒子は舞いながら徐々に増えていき、その中心部から小さな声が聞こえる。
「……ち、ちが……じゃる……」
言葉が聞き取れないため、依然、警戒したままの五人の前で、光の粒子は獣とも人とも知れぬ形を象るように収束していく。
「な、何者じゃっ!?」
梅佳は声を荒げる。
「やはり敵かッ!?」
紫水も先手を撃つべくスキルを唱える。
すると、紫水の軽く握った右の拳の上部に紫色の火炎がボワッと立ち昇った。
光の粒子は真っ白な物体を象っていく。
「ま、待つでごじゃるぅうううううううう!」
叫びながら五人の目の前に現れたのは、白い犬の着ぐるみのようなフードと上着を身にまとった小さな少年だった。
フードには長く垂れた耳、黒い目と鼻がついていたが、フードから覗く短髪や瞳は明らかに人のものであった。
少年はフードの両耳を掴んだままぷかぷかと宙に浮いていたが、かわいらしい尻尾は下に垂れ下がり硬直していた。
「「誰だっ!? お前っ!?」」
勇希と紫水がほぼ同時に叫ぶ。
五人は臨戦態勢をとったままであったが、美伊は少年を目にして不覚にも思った。
──か、かわいい……。
梅佳が声をあげる。
「その話し方……そなた、もしやナインスか!?」
「そ、そうでごじゃるぅう。『ninthはeが無いんす』のナインスでごじゃるぅ。ゼロスの代理で皆に会いに来たでごじゃるぅう。初めて地上に来たでごじゃるぅううう」
取り乱し昂った声で続けざまに話す少年は、ナインスであった。
人の姿が完成してからもぷかぷかと宙に浮いているナインスに、勇希が声をかける。
「あぁ! ナインスかっ!!! どうしたんだその姿!?」
「姿形は人類に寄せた方が良いと思ったでごじゃる……あぁ……ヒヤヒヤしたでごじゃる……」
ようやく落ち着いたナインスは尻尾をぴくんぴくんと揺らしながら地上に降り立った。
そして五人に対して自分の姿を自慢げに披露し始める。ファッションショーのモデルのようにポーズをとりながら──。
「いかがでごじゃるか? この姿……オイラは気に入っているでごじゃるよ」
「そなたなら、前の姿のままでも大丈夫だったであろう?」
「地上でも珍しくないぞ、空を飛ぶかわいいペットのAIとか」
梅佳と勇希のツッコミを耳にすると、ナインスは少し顔を赤くさせながら口をとがらせる。
「そ、そんなことは知っているでごじゃる……バカにしないでほしいでごじゃる……あっ」
ナインスは急に困った顔を浮かべ黙り込む。尻尾がだらんと垂れ下がる。
「人類に寄せるためとはただの口実ということじゃな?」
「ハハハ、ナインス。どっちでもいいんだぜ。オレはお前に大きな借りがあるしな」
「ただ人の恰好をしてみたかった、ということか?」
紫水がヤレヤレとあきれた表情を浮かべる。
「……」
依然、紅潮したまま口をつぐむナインスに、美伊がやさしく声をかけた。
「す、すっごく、かわいいと思いますわ」
「……かわいいと言われてもうれしくないでごじゃる……かっこいいと言ってほしいでごじゃる……」
「あ、あら、そうでしたか……ごめんなさい……」
気まずい表情を浮かべる美伊の隣で、無口な柊龍がボソッと呟いた。
「面倒くさい子だ……」
最後までお読みくださりありがとうございました(*´▽`*)今回は語句スキル解説はありません。いつも応援ありがとうございます!(*´▽`*)
次話の第68話が本章最終話となります。よろしくお願いいたしますm(_ _)m




