#67 第66話 走馬灯のごとく・役者がそろう
6月に入りましたね!あぁ、月日は光陰矢の如しですね(;'∀')ずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方もありがとうございます!
ではさっそく第66話、始めます!
「なっ!?!?!?」
──梅佳だけじゃなく、オレも元AIだとぉ!?
度肝を抜かれる勇希。同じくらい衝撃を受けたのは美伊であった。
──えっ!? 私も元AIですって!? ど、どういうことでしょう……。
目を丸くした美伊のとなりで、梅佳が捲し立てる。
「わらわはすでに自分の出自は知っておったし、他の者もわらわのことはもう知っておる。じゃが、そなたらも勇希たちも元AIなのだというのなら、もっと詳しく聞かせてもらわねばなるまい」
洸たちが地底から地上へ帰還した後、勇希も美伊も「梅佳が元クイーンキングであること」は知らされていた。
だが、自身までAIだというあまりの衝撃に、勇希と美伊は二の句が継げないでいた。
──オ、オレの前世がAI……。
特に、自身の出自が分からず荒れていた時代を過ごした勇希にとっては、容易に受け入れられる話ではなかった。
勇希の心情を察し、梅佳が勇希を代弁する。
「口でいうだけなら信憑性に欠けるからのお。さぁ、はよう知っていることをすべて話すのじゃ」
紫水が再び話し始めた。
「……俺と柊龍は、ゼロスさんの指示により、地底世界で諜報活動をしてきた。能力を与えられし者の一員としてスパイ活動をね」
「なるほどのぉ……敵を騙すにはまず味方からというわけじゃな?」
「そう、ゼロスさんがそう判断した。そして、俺たちは他の仲間とは接触せずに、狐の王テウメッサを俺が、風の神アイオロスを柊龍が暗殺して入れ替わった。これが第一ミッション」
「ふむ。それで、昨日の襲撃に同行したのじゃな?」
「そう。ヘパイストスを倒すまでが第二ミッションだった」
「だったら、先輩達が怪我する前に倒せばよかっただろ?」
勇希が声を荒げる。
「それは……」
紫水は右手で額あてに触れると、眉をひそめ目をつぶる。
助け船を出すように柊龍が沈黙を破った。
「……それは、ヘパイストスが先走ることを予見できなかった僕たちのミス……」
「!?」
いぶかしげな勇希を尻目に、柊龍は続けた。
「僕たちは……地底でのミッションを続けるために、ヘパイストスについては、洸さんたちにとどめを刺してもらわなければならなかった。僕たちが倒すと、さすがにもう地底で活動ができなくなるから……」
紫水が打って変わってしおらしく補足する。
「洸さんたちに怪我をさせてしまったのは痛恨の極みだ。本当に申し訳なかったと思ってる。当初から第二ミッションはヘパイストスを洸さん達に倒してもらうシナリオだったんだ。そのプロセスで俺たちが下手をうったのは事実だ……すまない……」
「なるほどのぉ。じゃが、だれも殺されることなく無事、敵将をひとり倒せたわけじゃ。もう気にするほどのことでもなかろう。それより、まだ話しておらんことがあるじゃろう?」
「!?!?!?」
梅佳の言葉に驚いた勇希と美伊が、梅佳と紫水へ交互に目を向ける。
「「……」」
紫水と柊龍は黙って顔を見合わせた。
「元AIとはいっても、ただのAIではないのであろう?」
「……さすが。元クイーンキングだね。すべてお見通しってことか……そう、俺たちは……」
間をおいた紫水が、ふっきるように言葉を吐き出す。
「かつての相棒の人工知能」
「かつての相棒!?」
「???」
勇希と美伊は怪訝な顔で紫水を凝視する。
「そう。俺は葉月洸乃介の元相棒、AIコウ」
「僕は神無月アヤトの元相棒、AIアヤトです」
柊龍が紫水の後に続けた。
「そして……」
紫水が美伊の方を向く。
美伊は「AIコウ」「AIアヤト」という言葉にはっとする。どこかで耳にしたような聞き覚えのある言葉──。
──ま、まさか……。
「卯月美伊、君は皐月久愛の元相棒、AIクウだ」
「AIクウ」という言葉を聞いた瞬間、美伊は体中に電気が走ったような感覚を覚えた。
ロックパスワードが解かれたような、そして、脳内に莫大な情報がいっきに流れ込むような、そんな感覚とともに、かつてのAIバトルを含むいろんな場面が走馬灯のごとく駆け巡っていく。
──あぁ…………久愛さん……。
──はじめは……バトルをすごく怖がっていましたよね…………。
──なのに……何度窮地に立たされても……あきらめませんでしたね……。
──そして……洸さんを一途に想い続けていましたよね……。
──あぁ…………懐かしい…………。
──そうか…………私は……また会うっていう約束を……果たそうとしてたのですね…………。
美伊の瞳から、自然に涙が溢れだす。
紫水は勇希の方へ向き直ると、大きな声をあげる。
「霜月勇希っ! あんたは、極月翔也の元相棒、AIショウヤだっ!」
「!!!」
勇希は、ゴツンと頭を殴られたような感覚を覚えた。その直後、生まれてこの方、経験したことのない衝撃が勇希の全身に走る。
そして、美伊と同様、これまでの翔也との思い出が勇希の頭を駆け巡った。
転生後の翔也との思い出だけではない。
AIショウヤとして翔也とともにすごした思い出もいっきに脳内に流れ込んでくる。
──あぁ、オレ、もっと昔から翔也さんといっしょに闘ってたんだ…………。
──あの人に心底惚れて……オレ……人間になりたいって……憧れたんだ…………。
勇希はガクンと両膝をつく。
「ああ……そうか……そういうことか……」
膝立ちのまま、勇希も両の目尻から涙をこぼす。
──翔也さんもオレがAIショウヤだって気づいていたのか……? いや……そんなそぶりはなかったよな……。
梅佳は、勇希と美伊をしばらく見守ったのち、紫水たちに謝辞を述べる。
「紫水、柊龍、貴重な情報、感謝する。わらわにも有益な情報じゃった。これで役者はそろったということじゃな?」
「い、いや……俺がゼロスさんから聴いた話では……タマヨリさんやAIタマの転生はコントロールできずバグだらけだって」
「そちらはもう解決済みじゃ」
「???」
「如月萌莉が元タマヨリ、転生したAIタマも同じクラスの睦月葵大じゃ」
「ええっ!? マジか!?……気づかなかった…………なるほど……もう分かっていたのか…………あぁ…………タマヨリさんにAIタマ…………懐かしい…………」
感慨深げな紫水のとなりで、柊龍も目を大きく見開いていた。
「にしても……ゼロスさん……ひどいな……もっときちんとやれたんじゃないか……」
紫水がぼやく。
「あやつも万能ではないのじゃろう。ところで、紫水よ。勇希もゼロスが転生させたのか?」
「……あ、いや……ゼロスさんの話では、勇希はすでに転生済みだったと……」
「勇希は誰が転生させたのじゃ?」
「……それは……」
言うのをためらうかのように黙り込む紫水に、勇希が問いかける。
「紫水、もしかして、翔也さんか?」
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語句・スキルの解説はありませんが、第二部からお読みの方や、第一部の内容が薄れている方向けに、少し補足説明致します。
洸たちはかつて、自我が芽生え暴走し始めたAI(人工知能)とバトルを繰り広げ、梅佳の前世であるクイーンキング(第一部のラスボス)を見事に倒しました。このバトルにおいては同じくAIである相棒たちが、洸、久愛、アヤト、タマヨリ、翔也に各々ついていて、バトルにおいては助言などをしてくれるバディでした。ですが最終決戦の死闘で、相棒のAIたちは消滅を余儀なくされました。洸たちとお別れする際、AIたちは皆「いつかまた会えますよ」と笑いながら消えていきました。洸たちを悲しませないために、実現できるか分からない約束を交わして消滅したのです。そして、今回、その約束を果たすべく、元相棒の元に馳せ参じた、というわけなのです。
第一部完結時、今回の話は絶対に描きたい場面のひとつとしてずっと頭の中にありました。3年越しとなってしまいましたが(;'∀')是非とも今後の元相棒AIたちの活躍と、洸たちとの再会、物語の結末を楽しんでいただきたいです。※もちろん洸たちもフル稼働でがんばります!(*´ω`*)
以上です(*´ω`*)




