#62 第61話 白昼夢・正夢
ずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方もありがとうございます!AI暴走中Ⅱは、無事に!?一周年を迎えました。応援してくださった方々のおかげです。本当に感謝しています。ありがとうございますm(_ _)m
世間はゴールデンウィークに入りましたね。ちょうど洸たちもゴールデンウィーク中でした(長い……(^-^;)
今回から新章に突入しますが、さっそく新キャラの登場です!洸たちの敵か味方か……ぜひお確かめください。
念のため、先に語句解説をひとつさせていただきますm(_ _)m
ONZ
地底世界における反乱組織で、ゼロスをリーダーとする人類一掃計画に反対する組織。第2話で登場して以来、謎の組織として詳しく説明してこなかったのですが、分かりにくくなっていたら申し訳ないです。ONZは、オーディナルナンバーズ(Ordinal Numbers)の略称。オーディナルナンバーとは序数(又は順序数)のことで、ファースト、セカンド、サードなどを指します。すでに登場したのはゼロスとナインスのみです。
では、第10章の序章(第61話)、はじめます!(*´▽`*)
──地底世界に設けられた異次元の空間。
レジスタンスONZのリーダーであるゼロスが純白のドレス姿の少女とともに佇んでいる。
異次元の空間といっても、四方八方、青空に囲まれた空間だったので、ゼロスたちは、まるで空に浮いているようであった。
「話って?」
ゼロスが少女に問いかける。
「そろそろゼウスもしびれを切らす頃じゃないかな? ゼロスくん」
淡い空色の長い髪に、群青のリボンを結った美しい猫耳の少女がゼロスを見つめながら口を開く。
瞳は澄んだブルーだが眉毛もまつげも空色。胸には髪と同じ群青のリボンをつけている。純白のドレスの裾が、長い髪とともに風になびいていた。
ゼロスは彼女を見つめながら微笑を浮かべる。
「だね……ONZメンバーもかなり減ったけれど、彼ら人類のおかげで、ゼウスの側近たちも減ってきてるからね」
「時は熟したでしょう? 私も闘いますわ」
「……いや、まだヘラの手を煩わせるような状況じゃないよ。彼ら人類が僕の想定を超える結果を出してくれてるから、大船に乗ったつもりでいてよ」
猫耳の美少女の名はヘラ・ラヘ。彼女もまた地底世界の住人の一人であるが、レジスタンスONZのメンバーの一人でもあった。
「ただ指をくわえて見ているだけなら、ファーストなんて言う称号はいりませんでしたのに……」
ヘラは口をとがらせる。
「もう少しの辛抱だよ」
ゼロスはヘラをなだめる。
「ん……でしたら、ちょっと、あの子たちにプレゼントを贈らせてもらっても良いかしら?」
ヘラが微笑む。
「プレゼント!?」
ゼロスはヘラの真意が分からず、目を丸くする。
「フフフッ……すぐ戻りますわ──『ハクチュウム』『マサユメ』」
ヘラはゼロスの返事を待たずにスキルを唱える。
ヘラの右の人差し指に真白な光が灯るや否や、その光は卓球のピン球くらいに膨張し、ヘラの顔の前で光の粒子を散らしながら浮遊し始める。
同時にヘラは瞳を開いたまま、眠りについた。
眩い白球だけが飛び去っていく。スキル『白昼夢』でヘラの意識だけが地上へ旅立ったのだ。そしてスキル『正夢』は夢の中で起きたことを現実のものにする。
「ああ……夢の中で、彼らに助言するのだね」
ヘラの意図を察したゼロスは、瞳を見開いたまま眠るヘラをしばらく眺めていた。
地上、卯月邸──。
卯月美伊の邸宅では、死闘の末、ハーデスを撃破したカリンこと水無月霞凜と、前世がタマヨリと判明した如月萌莉が、美伊とともにお泊り会と称した合宿を続けつつ、洸たち一行の帰りを待ちわびていた。
まだ暗い朝方──。
眠っているカリンの耳に、聞き覚えのない小さな声が入ってくる。
「……カリンさん」
「!?」
「……カリンさん」
「ん? ママ?」
カリンは声の主へ目をやる。
そこには淡い空色の長い髪をした見知らぬ美少女が立っていた。
「私はママの萌莉さんではありません。私はヘラ・ラヘと申します」
「ヘラ・ラヘ? え!? ここ、どこ!?」
カリンは目の前の少女にはもちろんのこと、あたりに広がる空に驚く。
カリンはぷかぷかと空に浮いているように感じた。
「お初にお目にかかります。カリンさん、あなたにとっておきの情報を伝えにやってまいりましたの。大丈夫です。ここは夢の中……」
「とっておきの情報!? 夢?」
「はい、バトルに役立つとっておきの情報を、この夢の中でお伝えします」
「え!?」
「カリンさん、あなたは猫や水という言葉にこだわらずとも、この前の鼠のように、小動物にまつわる語句スキルが使えます。たとえばウサギとかね」
「!!! 小動物!? ウサギ!?」
「はい、そうです。それに、このバトルシステムには隠された第三の要素もあります」
「第三の要素!?」
「自身にあった語句スキルの詠唱と、そのスキル効果を具現化するイメージ。この二つ以外に第三の要素がありますの」
「!? それはなに?」
「残念ながら、これは教えられません。ご自身で見つけてください」
「……」
「今のあなたなら、きっと見つけられるはず……」
「見つけられたら、もっと強くなれる?」
「ええ、必ず強くなれます。それにしても……カリンさん、見違えるほど凛々しくなりましたね。私はこの戦いが始まって以来、あなたの大ファンですのよ。あなたのことが好きすぎて猫耳も付けましたわ」
その言葉を聞いたカリンはヘラの頭上へ改めて目をやる。
「ほんとだ! 猫耳! あなたも元は猫なの?」
「いいえ、猫ではありませんよ。あっ、これから他のお仲間方のところにも行かなければなりませんので、そろそろお暇しますね」
ヘラの右の人差し指に白い光が灯る。
「ええっ!? もう行っちゃうの!?」
「あまり時間がありませんから、またご縁があれば会いましょう。私はずっとあなたの味方ですからね」
ヘラの人差し指から白い光球が飛び去っていく。続けざま、ヘラは粒子になって舞い散るように消え去った。
「あぁ……」
何か言おうとしたカリンは声を上げて目を覚ます。
「えっ!? ゆ、夢!?」
隣で眠っていた萌莉も、カリンの大きな声で飛び起きる。
「カリンちゃん、どうしたの!? 大丈夫!?」
「あ、う、うん。夢を見て……」
「怖い夢でも見たの!?」
「ううん、違う──」
小さくかぶりを振ったカリンは、夢で逢った少女ヘラの話を萌莉に伝える。
「え!? カリンちゃんもなの?」
「ママも?」
「うん……ということは……私とカリンちゃんが同時に同じ人の夢を見たってことよね。これは偶然でも夢でもないのかもしれないわ。予知夢とか正夢? 敵ではなさそうだったけれど……」
「美伊ちゃんも見たのかな?」
「どうかな? まだみんな寝てるはずだから、後で聞いてみましょ」
卯月邸のゲストルームのベッド上で、ふたりはヒソヒソと小声で会話を交わしながら、しばらく時を過ごした。
「バトルの第三の要素……」
「あたし、早く見つけて、もっと強くなりたい」
「うん、そうね……」
言いながら、萌莉は改めて娘であるカリンが愛おしくなった。
──本当はこんなバトルに巻き込ませたくなかったけれど……三日会わざれば刮目してみよ、だったかな? 雨後の筍? 私の記憶の中のコタマちゃんとはもう別人みたい。
──もう語尾に「ニャ」って全く付けなくなったし。ああ……子の成長ははやいっていうけれど、本当ね……。
──って私、高校一年生だよね!?!?
「ハハッ」
思わず笑い声をこぼした萌莉の耳にカリンの寝息の音が入った。
──スゥー……スゥー……。
「あら……カリンちゃん!? 寝ちゃった!?」
萌莉は人差し指を口にあてながらヒソヒソ声で言う。
萌莉は毛布をかけ直してやりながら、カリンの顔を覗き込む。
──寝顔は、まだ少しコタマちゃんの面影があるんだけどなぁ……。
カリンの気持ちよさそうな寝顔をしばらく眺めていた萌莉も、もう少し眠ることに決めた。
朝──。
ふたりは美伊も夢の中でヘラと遭遇していたことを知る。
カリンたちが、地底世界から帰還した洸や久愛たちと再会する日の出来事であった。
最後までお読みくださりありがとうございます!今回はずっと謎にしていた地底世界のレジスタンスのことが少し明かされました(*´ω`*)次話以降も洸たちに新たな敵?仲間?が登場しますよ~(ネタバレ防止のため章タイトルは仮称です)お楽しみに(*´▽`*)
ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております。かなり励みになっています。今後ともよろしくお願い申し上げます。
【語句スキル解説】
『白昼夢』
お昼間に目を覚ましたまま空想にふけること又はその際に見る夢のような映像のことを意味する。白日夢ともいう。ここではヘラ・ラヘ(ファースト)が会いたい人のことを思い空想にふけることで、意識のみその人の夢に干渉できる。本来意識のみの存在である地底人にとっては意識のみとなることは特別なことではないが、このスキルにより他人の夢の中に意識を移動させられる。
『正夢』
夢の中での出来事が現実となること又は現実となった夢のことを意味する。ここでは『白昼夢』スキルで空想にふける間、他人の夢に干渉し、その他人の夢を現実に起こさせるスキルだが、ヘラは現時点で助言しかしていないので、夢の中の会話が現実に交わされた会話と同等になる程度(忘れない、はっきりと夢の内容を記憶する程度)の意味しかない。今後真価が明かされるかもしれない。
ではGW中にできるだけ次話もアップしたいと思います!
よろしくお願いいたします(*´ω`*)




