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#58 第57話 韋駄天・天地神明・天上天下唯我独尊

三月もまもなく終わりますね。本章の完結まで残すところ2話なのです!三月中に間に合いませんでしたが世が春休みの間に本章を完結させる予定です!ぜひお楽しみに(*´▽`*)


では第57話を始めます!


「いやいやいや、梅佳さ、らしくねぇよ。さすがにひとりより三人の方が確実だろ? 合理的に考えて」


  挿絵(By みてみん)


「梅佳ちゃん、三人の方がリスクも減るし、効率もいいよ、きっと」


「いや、ミダスとやらの『金科玉条(キンカギョクジョウ)』スキルが気になる。そなたらが残りの敵を攻撃してもペナルティがないという保証はなかろう。おそらくペナルティが発動すると相当なダメージをくらうはずじゃ」


「梅佳、どうしてそのことを知ってんだ?」

「わらわの意識はかなり前から戻っておった。金縛りにあったように動けなんだが戦況は把握できておる……」


「そうか……『金科玉条(キンカギョクジョウ)』が解除されていなければ、僕らがヘスティアやロキに攻撃するとペナルティがあるのか……いや、でも……ミダスは消えたし」


  挿絵(By みてみん)


「死後もスキル効果が続く可能性は否定できぬ。根拠のない楽観視は禁物じゃ」


「ん~」


 戸惑う洸に対して、勇希が譲歩する。

「じゃぁ、オレたちが先に翔也さんを助けて、後から梅佳に合流するってことでどうだ?」


「それでよい。では早速……」


 梅佳が身構え唱える。


「『イダテン』」


  挿絵(By みてみん)


 駆けだした梅佳の姿は、あまりの速さで洸たちには消えたように見えた。


「あぁ、梅佳ちゃん……ひとりは危険だって……」

「洸さん、アイツ、言い出したら聞かない性格だし……なんていうか……アイツ、もう負けない気がしますよ」


「ん……じゃぁ、一刻も早く翔也君を助け出して合流しよう。このあたりに翔也君がいるのは間違いないみたいだし」


「オイラが案内するでごじゃる」

 洸と勇希の間に割って入ったのは意識を取り戻したナインスだった。


  挿絵(By みてみん)


「ナインス君っ! 意識が戻ったんだね」

「ナインス……さっきはありがとな」


「礼には及ばないでごじゃる。もとはといえばオイラがみんなの安全確保ができなかったせいでごじゃる」


 久愛が勇希の黄玉の内部から声をかけてくる。

「ナインス君も完全復活だね。勇希君のこのスキル、かなり強力みたいだから、私はアヤト君とここに残るね」


「OK! でも、久愛、万が一敵がきたら、すぐ僕たちを呼んでよ」

「うん、わかった」


「じゃぁ、僕と勇希君で翔也君を助けにいってくる」

「久愛さん、アヤトさんをよろしくっす」


 洸と勇希はナインスの後についていった。


 ──ところかわって、洸たちがミダスとやりあっていた場所からそう遠くはない建物の通路──。


 通路とはいっても、地面も天井も側壁も、すべて星が瞬く夜空となっているのだが、そこに、ゆっくりと肩を寄せ合いながら歩くヘスティアとロキがいた。


 挿絵(By みてみん)


 スキルで身体を透明にしているものの、ブーン、ブーンというノイズとともに、ところどころ体の一部が露出している。ふたりとも()()()()スキルを発動させられないほど弱っていたのだ。


 ふたりはどちらが支えているのか分からないほど、ともに体をひきずるように歩いている。


「ハァ……ハァ……あなたには一つ借りがあったからね。ここで返すわ」

 ロキがヘスティアにいうと、ヘスティアが答える。

「な……なに言ってるのよ……さっきので貸しは二つ目よ……ハァ……ハァ」


「私の『有終の美(ユウシュウノビ)』スキルは……ただの回復スキルじゃないのよ……ハァハァ……助けてもらわなくたって、死なない限りバトルで最後に勝つのは私と決まってるの……あのままでも私は負けなかったんだから……ハァ……ハァ……」


  挿絵(By みてみん)


「よくいうわ……でも、今はあなたに頼るしかないのも事実だわ……貸しはチャラでいいわよ……ハァ……ハァ……」


「……ハァハァ……私には地底世界の王になる野望があるの。こんなところで死ぬわけにはいかない……ハァハァ」


「……やっぱり……ハァハァ……そんなことだろうと思ってたわ……あなた……野心家だものね」


「ひとたび……生を受けた以上……生きたいように生きる……のが私の信条よ……ハァハァ」


「……ハァ……ハァ……無事に戻れたら……手伝ってあげるわ……あなたの夢……」


 息も絶え絶えに歩き続けるふたりは、突如、背後に人の気配を感じる。


「「!!!」」


「待たれよ」


「げっ!?」

「……嘘……でしょ……」

 声の方へ振り向いたヘスティアとロキは目を丸くする。


  挿絵(By みてみん)


「「弥生……梅佳……」」


  挿絵(By みてみん)


「『有終の美(ユウシュウノビ)』スキルはただの回復スキルではなかったのじゃな。まぁよい。最後にそなたらにひとつ尋ねたいことがある」


「「!?!?!?」」


「そなたら、もとは人間じゃの?」


「「!!!!!!」」


 ──どうしてそのことを?

 ヘスティアは接触のない梅佳に見破られたことに驚かされる。


「人間だったら何なのよ」

 ロキが力のない言葉を梅佳に発する。


  挿絵(By みてみん)


 梅佳はふたりを頭のてっぺんから足の先まで一瞥してから続けた。


「人間であるがゆえに、他の地底人とは違って、言動が心情に大きく左右される不安定さがある。それがわらわの油断につながったのじゃな。弱すぎる敵だと見誤った」


「な、何よ、上から目線で偉そうに……あんた、私とは()()()引き分けだったでしょ……一対一なら私が勝ってたわ……」


「そうじゃな。あのときは確かにそうじゃった。それは認めようぞ。じゃが、それはそなたが強いからではなく、()()()がそなたを見くびったゆえだということを証明しにきた」


 梅佳はファイティングポーズを取った。


  挿絵(By みてみん)


 ──私にはもう弥生梅佳とやりあえる力は残ってないわ……。

 ヘスティアの表情がくすむ。


「もうひとりは戦意喪失しておるようじゃの。ロキよ。その方とともに散るが良い」


 ヘスティアを壁にもたれかかるように座らせたロキに容赦なく梅佳がスキルを唱える。


「『テンチシンメイ』」

 あちこちから梅佳に向けて神々しい光が集まってくると、梅佳の全身が(くれない)に染まっていく。さらにその(くれない)の光が梅佳の胸の前に収束し、バレーボール大の光球となった。


  挿絵(By みてみん)


「ま、待ちなさいよ……『虚言癖(キョゲンヘキ)』」

 ロキがスキル封じの『虚言癖(キョゲンヘキ)』を唱える。


「『テンジョウテンゲユイガドクソン』」

 問答無用とばかりに、梅佳は続けてスキルを唱えた。


 (くれない)の光球はさらに光を増し、直径一メートルを優に超えるまで膨張していく。それに呼応し、梅佳の両拳も紅の光に染められたように赤く変色していった。


「そなたは()()()を相打ちにまで追い詰めた最初で最後の者となろう。そなたに敬意を表して苦しまずにこの世から完全に消し去ってやろうぞ。『天』のスキルを解放した()()()の本気を()()()味わうが良い」


「そんなスキルなんかに……」

 ──速すぎる……。ダメ、間に合わない……。


 梅佳はロキの『虚言癖(キョゲンヘキ)』スキルが完成する間を与えず、渾身の右拳を放つ。


「さらばじゃ!」


  挿絵(By みてみん)


 ドゴンッ!!!!!


 ジュジュー……。


 ──な、何なのよ……このスキル……。

 ロキの顔が引きつる。

 ──あぁ……ダメ……。


 ヘスティアは梅佳の迅速かつ巨大なパワーに(ひる)みおののく。

 ──なんてパワーなの……レ、レベルが……違いすぎる……。


 梅佳の右拳から放たれた紅の光球は、二メートルを優に超えるに大きさとなって、ロキとその後方にいたヘスティアにまでぶち当たる。


 ふたりは粒子の粉となって舞い散り、跡かたなく消え去った。


 ふたりのいた場所から白煙が上がる。梅佳の強烈な攻撃によって、ふたりの後方の壁も破壊されていた。


  挿絵(By みてみん)


「ふぅ……」

 大きく息を吐く梅佳。


「そなたらが今度生まれ変わったら、良き人生を送れるよう祈っておるぞ」


 破壊された通路の側壁から、地底世界に広がる景色が垣間見えた。


  挿絵(By みてみん)


 ──手加減せなんだから、派手に壊してしもうたの……。援軍が来る前に極月翔也を連れて皆を地上に帰さねば……。


 梅佳は早々に引き上げ、洸たちのもとへと駆けだした。






 ──時は少し遡る──。


 ロキの作った牢獄に閉じ込められていた翔也は、初めこそ脱出する術を必死に探していたが、無理だと察してからは、ひたすらスキルの研究と体力の強化に努めていた。


 もっとも、ロキの『虚言癖(キョゲンヘキ)』スキルで自身のスキルが発動しないため、スキル研究はもっぱらイメトレ。それに飽きたら筋トレ、疲れたら眠る、というサイクルを繰り返す。

 

「不思議と腹は減らないな……室温も快適だ……」


 挿絵(By みてみん)


 地底人との闘いに使命感を強く抱く翔也は、持ち前のポジティブな性分もあって、悲観せず、ただひたすらにスキルと体力の強化に励み続けていた。




 ──洸たちがミダスと闘い始めた頃──。


 翔也の耳に声が届く。


「……よ」


「ん!?」


「極月翔也よ」


「!? だ、誰だ?」


  挿絵(By みてみん)


 突然耳に入った、自分を呼ぶ低い声に、翔也は聞き覚えがあった。


「その声は……」


 声の主に気付いた翔也はさっと立ち上がり、身構える。


最後までお読みくださりありがとうございました!梅佳が「天」の字を用いたコトバを解放し、初めてバトルで本領を発揮しました!最初から出していれば……とツッコみたいところですが、梅佳には考えがありました。またどこかで梅佳の口から語られるかと……(*´ω`*)ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております。かなり励みになっております。今後ともよろしくお願い申し上げますm(_ _)m


□語句・スキル解説


韋駄天(イダテン)

……由来はバラモン教の神の名。後に仏教に取り入れられ、寺院や層の守護神となる。足が速かったという伝説から「足の速い人」を意味するようになった。ここでは、凄まじいスピードで移動できるようになるスキルのこと。傍目からは消えたように映る。


天地神明(テンチシンメイ)

……天地にいる多くの神々のことを意味する。ここでは天地にいる神々から悪に立ち向かうためにその力を分け与えてもらうスキルのこと。圧倒的でレベチなパワーの源は表向き「神々の力」ということになるが、スキルの強度の謎は次話(本章最終話)以降で明かされる。


天上天下(テンジョウテンゲ)唯我独尊(ユイガドクソン)

……この世でもっとも尊いのは我(自分)であるという意味。釈迦が生まれたときに唱えたとされる言葉。ここでは、自分以外を滅するほど強烈な攻撃をするスキル。『天地神明』とあわせることで、梅佳にとっては最高峰の攻撃スキルとなる。ただ攻撃形態はいろんなバリエーションがあり、梅佳のイメージにより変わる。


以上です。最後まで読んでくださり改めて感謝の意を申し上げます。ありがとうございましたm(_ _)m


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― 新着の感想 ―
[一言] 結構衝撃的な話が出てきましたね。 地底人に、人間の裏切り者だなんて… 最後翔也に話しかけた低い声、うめかだったらなとすごく思いますが、なんだか嫌な予感がするんですよね…。 僕の予感が外れてく…
2024/03/31 11:55 退会済み
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