#5 第4話 沈黙は金・一獲千金
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今日までが仕事や学校だった方もいらっしゃると思いますが、大半の方は明日からはお休みですね!
(ちなみに僕は個人事業主で、休みなしです(;´・ω・)マジw)。
明日、明後日、1話ずつ更新予定ですのでお楽しみに!
↓では、第4話、はじめます(*´ω`*)↓
「おはようー!」
久愛はいつもの合流地点で、洸とアヤトに挨拶をした。
「おはよー」「おっす」
洸とアヤトも挨拶を返す。
「おはにゃ」
「洸にぃ、アヤトたん、ちょっと聞きたいことがあるにゃ」
「「ん……!?」」
洸とアヤトが、カリンの口調にちょっとした驚きを隠せないでいると久愛が苦笑いをしながら言った。
「カリン……朝からこの調子なの」
「何かあった? 『にゃ』って」
洸も苦笑しつつ尋ねると、カリンが答えた。
「洸にぃ、あたしね、人間になったにゃ。タマヨリママ、どこにいるか知らないかにゃ?」
「……!? 人間になった? タマヨリママ?」
目を丸くする洸に対して、久愛が割って入った。
「ずっとこの調子で……何か悪い夢でも見ただけならいいのだけど、何かの病気だったら……」
「カリンは病気ではないにゃ! おかしいのは久愛姉にゃの方にゃ」
──ダメにゃ……洸にぃたちからも、ママの記憶が消えてるにゃ……。
顔が曇ったカリンを見て、それまで黙って3人の会話を聞いていたアヤトが口を開く。
「洸、久愛、今日の放課後、ちょっと話す時間ないかな?」
「……まさか……アヤトもなのか?」
洸が言うとアヤトは真剣な面持ちで言った。
「あぁ、今朝だ、やはり洸もか。もしかすると、カリンの話も関係しているのかもな」
「えっ? なになに? 何かあった? 私、放課後、大丈夫だけど」
「カリンも参加するにゃ」
「僕も予定ないし、みんな学校、昼間までだから、帰りに校門のところに集合しよう」
「おう」
「OK!」
「了解ですにゃ」
四人が学校へ向かって歩き始める。周囲の桜並木は盛りが過ぎて物寂しい数の花がぽつぽつと咲いているだけだった。駅の近くの公園を抜けると駅までショートカットできることもあって、洸たちはいつもここを通り抜けていた。
公園に入った矢先、突然四人にグレーのスーツ姿の白人男性が話しかけてきた。金髪で背丈はアヤトよりも高く、すらっとしてハリウッド俳優のような整った顔立ちをしている。
「スミマセン、最寄リで充電デキル地点ハドコデスカ? イマ、充電ガ切レテシマッテ……」
「すぐそこの駅にあるので、よかったらご案内しますよ。私たち駅まで行きますし」
久愛の言葉に男性が満面の笑みでお辞儀をしつつ、片言の日本語で続けた。
「オォー、アリガトウゴザイマス、親切ナ人タチデスネ。デハ付イテイキマス」
──久愛って、こういうところ、優しいよな……。と感心する洸。
四人の後方に移動しながら男性がなおも続ける。
「私ハ昨日、日本ニ来タバカリデス。私、日本人ハ優シイト聞イテイマシタガ、ソノ通リデスネ。日本ノ言葉モ大好キデス。『チンモクハキンナリ』トカ、『イッカクセンキン』トカネ」
男性がニコリと微笑む。
「そうなんですね。日本はいいところだと思います」
久愛が答えたとき、男性の右手に突如出現した金色の筒──ダイナマイトを、洸とアヤトは見逃さなかった。
アヤトが叫ぶ。
「おい、お前、何者だ?」
洸も久愛とカリンの前に割り込んで身構える。
「その手の筒は何だ?」
男性はため息まじりにぼやいた。
「ヤレヤレ……」
その表情が険しい悪人顔へと変貌したのも束の間、白かった肌がみるみるうちに青色へと変わり、額にはタトゥーのような紋章も浮かび上がった。同時に、右手に所持していた金色の筒も消失した。
「勘ノ鋭イ子タチダ」
「「……!」」
洸とアヤトの表情がさらに引き締まる。
「えっ、えっ、どういうこと? 顔色が……」
「気味の悪い顔にゃ……」
久愛とカリンはゾクっと背筋に冷たいものを感じた。
「一気ニ四人ヤレルト思ッタノデスガネ」
「久愛、カリン、もっと下がって」
「AI暴走事件の再来かもな」
洸とアヤトが久愛たちふたりを守るように、さらに前に出る。
「またあの……AIの暴走……?」
かつての死闘がよぎり二の句が継げない久愛。カリンは何のことか分からず、怪訝な顔をしている。
「マァ、AIト言エバAIデスガネ。『能力ヲ与エラレシ者』タチハONZメンバートモドモ、皆殺シ、デス」
「「……」」
──みなごろしって……
──こ、こわいにゃ……
久愛とカリンの動揺が恐怖心へと変わっていく。
「洸、スキルはどれくらい試した?」
「試すも何も、今朝だよ、気づいたの。しかもリアルに発動するよね。燃えたよ、紙が」
「あぁ、ヤバいぜ。俺は早朝のランニングで気づいたから、多少は試した。前と違っておそらく物理攻撃ができる。ケガもするはずだし、下手すると……」
「死ぬ?」
「あぁ、マジでしゃれになんねぇシステムのはずだ」
「ソコノオフタリ。戦ウ気ハアルノデスカ? ナイノデスカ?」
──逃げるべきか?
応戦するのを少し躊躇う洸に対して、アヤトが言う。
「俺が一番スキルを試してるから、時間を稼ぐ。洸は、久愛とカリンを連れて逃げろ。俺も隙をついて逃げるから」
──四人全員、無事に逃げられる? いや……。
「ダメだ。アヤト。僕の直感だ。得体の知れないアイツから逃げきれるか分からない。アヤトひとりで相手をするのも危険すぎる。あの時みたいに力を合わせた方がマシかも」
「じゃぁ、洸、二人でやるぞ」
「うん。久愛はカリンを連れて、逃げて」
洸が言うと久愛が悲壮な表情で答えた。
「洸、もし、あのときのようなことが起こるのなら、私も逃げられない。私の叔父が関与しているかもしれないから」
久愛も逃げることを拒んだ。かつてのAI暴走事件の黒幕が久愛の叔父「皐月逢生」ではないかという疑惑──久愛はこれをずっと気に病んでいたのだ。
「チョット、イイ加減ニシナサイ。モウ待テマセンヨ。タイムイズマネー、時ハ金ナリ、デス」
男性の表情がさらに険しくなったのを見て、久愛はカリンに声をかけた。
「カリン、ちょっと大事なお使い。駅の交番に行って警察を呼んできて」
「あわわわ。おっおまわりさんを呼んでくればいいのにゃ? い、いってくるにゃ」
恐怖心で青白くなっているカリンは久愛の言いつけを聞き入れて後ずさりした。
カリンが振り返って駆け出すと男性がまた口を開く。
「ワザワザ、交番ニ行カセテ逃ガシマシタカ。マァ、アノ子ハ後デ料理スルトシテ、三人ハココデ闘ウ気ニナッタトイウコトデスネ」
「うぜぇよ、てめぇ」アヤトがキレ気味に叫んだ。
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今後ともよろしくお願い申し上げます。
以下、語句の意味です。スキルの詳細解説はネタバレの可能性もあるので、できるかぎり本編に譲ります。
『沈黙は金』
沈黙すべきときを心得ていることは価値があるということ。
雄弁は銀、沈黙は金なり、という哲学者の言葉が語源。
『一獲千金』
一度にたやすく多くの利益を手に入れること。
『情けは人の為ならず』
人に対して情けをかけると、その人だけでなく、めぐりめぐって自分にも良い報いが返ってくるものだというたとえ。
『時は金なり』=タイムイズマネー(Time iz money.)
時間は金銭と同じくらい貴重なものだから無駄にしてはいけないということ。