#46 第45話 魑魅魍魎・百鬼夜行・阿鼻叫喚
更新が遅くなって申し訳ありません。言い訳がましいですが繁忙期な上に、寝落ち絡みの改稿消失が久しぶりにありましたm(_ _)mお待たせしてすみませんm(_ _)mずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方も本当にありがとうございます!
本章はかなり重要な章のひとつになります。年内に本章を完結させられるよう突っ走ります!
では第45話、スタートです!
「『魑魅魍魎』『百鬼夜行』~」
突然、低く野太い声が三人の耳に入る。
「えっ!?」
「なにっ!?」
「ニャニャっ」
萌莉と美伊にとっては、忌まわしい記憶を呼び起こすような、聞き覚えのある声であった。
「も、萌莉さん、この声、このスキル……」
「……あのときの……バスの運転手……!?」
萌莉と美伊はかつて一戦交えた地底人が近くにいるのではないかとあたりを見渡す。
「萌莉さん、あのときの敵……見あたりませんわ」
「そ、そうね……アイツ、なんて名前だったっけ……?」
「たしか……ハーデスだったかと……」
すると、ブーンとあたり一面に青黒く光るサークルが生じる。
「き、きたの!?」
「!!!」
「ニャッ」
二つ三つ、三つ四つ……と無数に生じていくサークルから、次々と気味の悪い妖怪や怪物が青黒い炎をまといながら這い出てくる。
「き、気持ち悪いにゃ……」
「前より増えてる気がする……」
「ですね……」
「ア、アイツはどこ!?」
「見あたりません……」
ズブズブズブと這い出てきた魑魅魍魎たちは全身が地上に現れきると三人のいる方へと歩み始めた。
「『先見の明』!」
「『水泡に帰す』ニャ!」
「『一心岩をも通す』!『核心を突く』!」
ボーンを倒したときのように、萌莉が魑魅魍魎を分析し、カリンがスキルを無効化し、美伊がスキルで一体ずつ倒していく。
だが、多勢に無勢。倒しても倒しても後から後から這い出てくる魑魅魍魎を相手に三人は必死に闘い続けるも、魑魅魍魎との距離は縮まっていく。
「埒が明かないわっ! ふたりとも下がって!」
萌莉はふたりの間から前に歩み出た。
──アイツが現れてから一気に凍らせたかったけど……。
萌莉が両手を前方へかざし唱える。
「『銀世界』!!!」
萌莉の両手から白銀の光が放たれるや否や、それは白銀のブリザードへと変貌する。
魑魅魍魎たちは、前から後へ次々に凍結していく。
「す、すごいにゃ! カッチカチにゃ!」
「さすがですわ。萌莉さんっ!」
「まだよ……まだ出てきてるわ……」
萌莉はスキルを止めない。
後方にはまだ這い出てくる魑魅魍魎がいた。だが、それらも地上から出た部分が凍り、動きが止まっていく。それらも含めると魑魅魍魎の数は優に三百体を越えていた。
「萌莉さんっ! 敵の出現がすべて止まりましたわ!」
「美伊ちゃん、よろしく!」
「承知しましたわっ!」
美伊は杖から放つ桃色の光線で、凍てついた妖怪や怪物にとどめを刺していく。
「全滅ニャっ! 全滅ニャっ!」
喜々としているカリンとは対照的に、萌莉と美伊の表情は緩まない。
「……まだ本命が残っているはずですわ……」
「出てきなさいよ! いるんでしょ!?」
すると、目前の地表に巨大な魔法陣が生じ、青黒い炎がボワっと立ち昇った。
「フハハハハッ」
「「!!!」」
不気味な笑い声を耳にした美伊とカリンの表情もくすむ。
魔法陣の真上から広がるようにして青い空が不気味な濃い紫色の空へと変わっていく。真白な雲も薄気味悪い黒雲へと変わっていった。
「よく覚えていたな~お前ら~うれしいぜ~」
また低く野太い声が響き、それとともに、青く長い髪をした、肌の青い男がぬるっと地面から顔を出す。首、肩、胸、腰と順にあらわになる男は白い法衣を身にまとい、インナーの黒い衣で覆い切れない胸筋の真ん中には紋章が浮かび上がっていた。
「やはり……ですか……」
「アイツね……」
現れた敵は、かつて萌莉と美伊を恐怖のどん底へ突き落したハーデス・デーハであった。腕を組んで不気味な笑みを浮かべている。
「お前らぁ~強くなったみたいだな~その自信たっぷりの鼻っ柱をへし折って~泣きわめくところを見るのが楽しみだぜ~さぁ~やってみろ~凍らせてみろぉ~!」
「言われなくてもやるわよっ! くらえっ『銀世界』っ!」
萌莉が再び、スキル『銀世界』を唱える。萌莉が放った白銀のブリザードはハーデスを呑み込み、一瞬でその全身を凍らせた。
「やったニャ!」
「凍りましたわ!」
「……ダメよ」
──手ごたえがない……。
不安げな萌莉の傍から美伊がとどめのスキルを唱えようとした矢先──。
ピキピキピキ──。
パリンッ!
ジュジュ──。
ハーデスを覆っていた氷片はひび割れ、青黒い火炎が焼き尽くしていく。
「ふぅ……思ってたより強力だったな~かち割るのに手間取ったぜ~三秒もかかっちまったぁ~」
ハーデスは皮肉めいた口調で、コキコキコキと首や肩、腕の関節をほぐしながら再び萌莉たちを睨みつける。
「この俺様に二度も同じ手が通じると思ってるのかぁ~?」
「うるさいわね。私たちはもうあのときと違う! 強くなってるわ」
「願わくば、退散していただきたいのですが……」
「フハハハハッ。寝言は寝て言えってな。あぁ~たまらんな~。お前たちの恐怖で引きつる顔を見たくて仕方ねぇ~」
──嫌なおっさんニャ……嫌いニャ……アレをもう一度試してみるニャ……。
カリンはおびえた表情で黙っていたが、ポセイドン戦で使ったスキルを再び唱えた。
「『井の中の蛙大海を知らず』!」
カリンの右手から光の環が生じ、大きな水玉を創り出された。カリンはハーデスに狙いを定め、その水玉を指ではじき飛ばした。
「フハハハハッ。『阿鼻叫喚』!」
ハーデスは動じることなく、上に向けた右の掌から青黒い火炎を生じさせる。
カリンの水玉に向けて放たれた青黒火炎は、不気味な唸り声や叫び声をともない髑髏を象っていった。
ジュジュジュウ──。
青黒火炎にぶち当たった水玉はあっけなく蒸発し、消えていく。
「ガキはひっこんでろっ。お前のスキルは俺様には一切通じねぇぜ。あきらめなっ。ふたりをヤった後、たっぷりかわいがってやるよ」
「あわわわわ……」
カリンの顔が一瞬で真っ青になった。
「カリンちゃん、大丈夫?」
「……うんにゃ……」
「カリンさんは水属性なのに……火属性に弱いってことでしょうか?」
「確かに、ゲームなら火は水に強いことが多いよね……」
「カリンさん、カリンさんは属性的に不利みたいですわ……」
「回復とかさ、サポートをまかせるから、カリンちゃん、よろしくね」
「はいニャ……」
しょぼんと意気消沈するカリン。
「いきますわ。『核心を突く』!」
美伊はハーデスに向けて、杖をかざす。
「『コウジ、マオオシ』!」
ハーデスの右手にロンギヌスの槍の如き二股の槍が出現し、槍の先に燃える玉が現れる。
ブーンと美伊の放った光線はハーデスが振るう槍先の玉を追跡するかのように軌道を変えた。
「槍が弱点なの!?」萌莉が声を漏らす。
だが、桃色の光線は槍先の玉に吸収されるように、シュンと消えていった。
「萌莉さん、違いますわ。軌道を変えられたようです……あの玉に吸収されちゃいました……」
「フハハハハッ。察しがいいな~お前。これ~攻撃が凄いほど、効きが良いんだぜ~」
『好事、魔多し』とは良いことには邪魔が入りやすいことを意味する。このスキルによって、ハーデスの槍先の玉は相手の攻撃スキルを邪魔するように引き寄せて吸収し、無効化するのだ。
「どうしましょ……」
──今の私たちでも勝てないのでしょうか……。
カリンに続き、美伊の顔も青ざめた。
最後までお読みくださりありがとうございます。ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております。かなり励みになっています。今後ともよろしくお願い申し上げます。
□語句スキル解説※今回は以下、再掲分のみとなります。
『魑魅魍魎』……さまざまな妖怪、化け物のこと。
『百鬼夜行』……さまざまな鬼が夜中に出歩くこと。
ここでは、ハーデスが鬼や妖怪を無限に召喚して攻撃させるスキル。かなり強力なスキルである。
『銀世界』……あたり一面、雪が降り積もって真っ白になった景色のこと。
ここでは吹雪を生じさせ、あたり一面に氷の攻撃をする(=凍らせる)スキルのこと。
『阿鼻叫喚』……仏教用語の阿鼻地獄と叫喚地獄からできた語で、地獄に落ちた者が苦しみ泣き叫ぶむごい状態を意味する。そこから悲惨でむごい状態一般を意味する語としても用いられる。
ここでは、冥府の神ハーデスの末裔らしく、地獄で苦しむ者たちを象った火炎攻撃をするスキルのこと。




