#45 第44話 先見の明・水泡に帰す・核心を突く
ずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方もありがとうございます!いいね、感想、ブクマ、評価してくださった方々、この上ない感謝の気持ちでいっぱいですm(_ _)m 今回は、カリン、萌莉、美伊の成長ぶりを、ぜひ挿絵とともにお楽しみくださいませ~!!!(*´ω`*)
では44話、始めます!
突如、卯月家に来襲した敵──。
話せないのか、話す気がないのか、ギギギという音を発するのみで、三人をじっと眺めている。
「あんた、だれ!? 何しに来たの!?」
「ギギギギッ」
「萌莉さん、とりあえずフィールドを設定しますね。『KAYA』」
美伊が下方へ右手をかざし、卯月邸の敷地一帯にバトルフィールドを設定する。
──これで、これ以上の被害は出ない……勝てば、ですけれど……。
「ギギギギッギギギギッ」
「あんた、話せないの?」萌莉がぶっきらぼうにたずねる。
「ギしか言わないニャ……」
カリンが言うと、突然、目の前の骸骨ロボが流暢に話し始めた。
「……我はボーンーボ。お前たちをコロしにきたボーン」
敵であることを確信した萌莉と美伊は戦闘態勢に入る。
──ボーンボー? ボーンーボ? 発音にしくいわね。
萌莉がカリンに声をかける。
「カリンちゃん、後ろに下がって、サポートお願いね」
「わ、わかたニャ」
「危なくなったら地下シェルターへ逃げてくださいね」
「逃げる気はニャい……」ともらしながら、カリンは数歩後ろに下がった。
「『センケンノメイ』!」
萌莉がスキルを唱えながら手を前方にかざすと、空中に時計が三つ現れ、うち一つが大きくなるや否や、針が時計回りにグルグルグルと回り始める。
「ボーンって骨のことよね。この敵は骨に関する言葉で攻撃してくるみたい」
「なるほどですね。骨に関する言葉……どんな攻撃なのでしょう?」
「ん……なんだか、自身の体?骨?に傷をつけたり、折ったりしてる……」
「もしかして……呪いの藁人形みたいな術式でしょうか」
「みたいね。私たち、何も物理攻撃されていないのに負傷してるわ」
「なるほど……さて、どうしましょう」
萌莉は「時」を操るスキルを相当強化していた。萌莉のスキル『先見の明』は対象とした敵の数分先まで早送りして映像で確認できる。早送りゆえにすべてを正確に把握できないのが玉に瑕ではあるが、先を見通したバトルを可能とする強力なサポートスキルだ。
「お前たちをコロすボーン」
ボーンが何か仕掛けようとした矢先、今度はカリンが後方からスキルを唱えた。
「『スイホウニキス』」
カリンの右手にシャボン玉を作る器具が現れ、そこからシャボン玉が大量に生じていく。
カリンの体の周りに浮遊した無数のシャボン玉は、カリンが左腕を前方へ突き出すのを合図に、一斉にボーンに向かって飛んでいった。
ボーンはシャボン玉を避けながらスキルを唱えた。
「『ホネニキザム』」
だが、次々と向かってくる大量のシャボン玉を避けきれず、シャボン玉はボーンの体にパシャン、パシャン、パシャンとぶつかっては弾け消えていく。
それでもシャボン玉ではダメージがないと察したボーンは、右手の鋭い指先で自身の肋骨三本に傷を入れた。
チクッとした痛みを覚えた萌莉が右手で左脇腹あたりを押さえる。
──こ、これが……攻撃? 食らったの……? にしては……痛くない……。
「美伊ちゃん、カリンちゃん、この『骨に刻む』スキルって、やっぱり自身に付けた傷を私たちに刻みつける術式みたい」
「私は何にも感じませんわ。萌莉さんとカリンさんは?」
「あたしは大丈夫ニャ」
「私はアイツが傷つけたところと同じ個所がチクッとしたの。でも、全然痛くないわ」
「どうだ? 激痛、ダロウ? 次は、お前だボーン」
ボーンは美伊の方を向きながら、自身の右手で、左手の小指の骨を折る。
ポキッと骨が折れる音とともに、今度は美伊の左手の小指にチクッと痛みが走る。
「!? 萌莉さん、私もチクッとしましたっ!」
「大丈夫!? 攻撃対象はひとりずつで間違いなさそうね」
美伊は左手の小指に触れて確認するが、異常は見当たらない。
「大丈夫みたいです」
「『水泡に帰す』スキルで攻撃を防いだのニャ!」
得意気のカリンがピースサインを萌莉と美伊に送る。
「あぁ、なるほどっ! カリンちゃんのスキルってことかっ!」
「呪いの藁人形みたいな敵のスキル効果を無効にしてくれたのですね」
「すごい……いつのまに……こんなスキルを!?」
「カリンさん、助かりましたわ!!!」
「こっそり特訓したニャ」
カリンは満面の笑みで答える。
「おかしい……平気そうだボーン……お前たち……ムカつくボーン」
「次は私の番ですね! いきます!『イチイセンシン』」
美伊の全身を真白な光が包み込む。光は美伊の背中に収束するや否や、美麗な天使の羽へと変貌する。右手には桃色の杖が生じ、その先で光る玉が煌々と輝いている。体の周りには光るハート型のオブジェが舞っていた。
お嬢様育ちの美伊は本来バトルに向かない性格なのだが、『一意専心』スキルによってバトルで勝つことに集中でき、倒すべき敵に対しては非情になれるのだ。
「いきますわっ!『ウツクシイバラニハトゲガアル』」
美伊が唱えると、杖に桃色の光が灯り、杖の先は赤いバラの花へ、杖は棘のあるバラの茎へと姿を変えていく。
続けて杖をボーンへと向けると、無数の棘がボーン目掛けて発射された。
「『ムダボネヲオル』、ムダムダムダボーンッ!」
ボーンが唱えると、ボーンの前に魔法陣の防御壁が生じた。サクサクサクっと無数の棘が壁に刺さっては消えていく。
「じゃぁ、これならどうでしょう?『イッシンイワヲモトオス』」
美伊の杖の先から、今度は桃色の光線が放出される。
バリンッとガラスが割れるような音が響き、桃色光線が防御壁を破壊する。
「ヌヌヌッ。壁こわれた。だが、その程度の攻撃、愚の骨頂ボーン『ニクヲキラセテホネヲタツ』ボーン」
ボーンの体表に光る膜が張っていく。
「美伊ちゃんっ!」美伊の後方から萌莉が叫ぶ。
萌莉の声にもかかわらず、美伊は追撃する。
「もひとつ、くらいなさいっ!『一心岩をも通す』」
再び桃色の光線が杖から放出される。
「ダメッ。攻撃を跳ね返すよ」
萌莉はカリンと美伊が攻撃している間に、再び『先見の明』で未来を読み解いていた。
ブン──。
桃色光線はボーンに当たったところで一瞬蓄積され、反射し美伊へと向かっていく。
「きゃっ」
美伊は叫びながらも、萌莉の声のおかげもあり、間一髪避けることができた。
「ふぅ……萌莉さん、すみません」
「危なかったけど、間にあって良かった!」
「ありがとうございます」
「美伊ちゃん、アレだと効くんじゃないかな」
「アレ、ですね。分かりました!」
凜と引き締まった顔つきになった美伊がボーンの方へと向き直す。
「その程度の防御、あなたこそ愚の骨頂ですわ!『カクシンヲツク』!!!」
美伊が杖をかざしながら唱えると、杖の先が眩いほどの閃光を放つ。
今度は杖先の光玉の中心点あたりから、細い桃色の光線が放たれた。
「これで終わりですわっ!」
桃色光線は『一心岩をも通す』スキルのときより格段に速いスピードで放たれ、一瞬でボーンの肋骨の下部にある、円盤のような個所を貫通した。
「美伊ちゃん、すごいっ!」
「バッチリ当たったにゃ」
──あそこが弱点だったのね……。
『核心を突く』スキルは、敵の弱点を自動で解析し『一心岩をも通す』より凝縮された細い光線で瞬時に破壊する強力なスキルだった。
「我の敗北!? 我が消滅する!? 骨身にしみるボーン……」
機械が故障したようにバチバチッと火花を散らしながらボーンの動きが完全に停止する。そして、粉々になって弾け、消えていった。
「倒した!?」
「やったにゃ」
「ふぅ……やりましたわ」
「美伊たん、すごいにゃ……」
「カリンさんもすごかったですわ」
「三人寄れば文殊の知恵ね。楽勝、楽勝っ」
「特訓の成果にゃ!」
「私たちが強くなったということでしょうか……」
「ん……そう思いたいのは山々なんだけど……たしかに、ちょっと弱すぎる気がしないでもない……」
そのときだった──。
最後までお読みくださりありがとうございます。ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております。かなり励みになっています。今後ともよろしくお願い申し上げます。
□語句スキル解説
KAYA
既出ですが久しぶりですので説明いたします。バトルフィールドを設定するときの言葉。「蚊帳」が語源。フィールド内は異次元なので外部への影響がない。
『先見の明』
物事がおこる以前に見抜く見識。将来のことを見通すかしこさ。
『水泡に帰す』
努力したことが無駄になる。水の泡となるともいう。ここではシャボン玉で攻撃し敵のスキルを無効にできるスキル。当たれば当たるほど無効にできる数が増え、持続時間も長くなる。
『骨に刻む』
深く心にとどめて決して忘れないこと、肝に銘じることをいう。ここでは自身に傷をつけ、それを記憶し、対象の体にも同じ傷をつけるスキル。
『一意専心』
他に心を動かされず、ひたすら一つのことに心を集中すること。
『美しい薔薇には棘がある』
美しい薔薇に棘があるように、美しいものには人を傷つける恐ろしい一面があるというたとえ。ここでは、杖を薔薇に変えて、棘で攻撃するスキル。
『無駄骨を折る』
無駄な苦労をすること。ここでは防御壁となる魔法陣を出現させるスキル。
『一心岩をも通す』
不可能と思われることであっても集中し専念すれば成し遂げられること。ここでは杖から強力な光線を発射し、物理攻撃では破れないものを貫いたり破壊したりできるスキル。
『肉を切らせて骨を断つ』
自身の痛手と引き換えに相手にそれ以上の打撃を与えること。ここでは敵のスキルを反射するスキルだが、反射時にそこそこの痛み、ダメージがある。捨て身の倍返しスキル。
『核心を突く』
物事の最も重要な点を鋭く指摘すること。ここでは敵の最も重要な部分=弱点を分析して、鋭く攻撃するスキル。美伊は杖で攻撃しているので光線で弱点を貫いた。
骨身にしみる
①骨までしみとおるくらい苦痛であること。
②心の奥底まで強く深く感じいること。
以上です。最後まで読んでくださりありがとうございます(*´▽`*)




