#42 第41話 光陰矢の如し
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第41話、さっそく始めますm(_ _)m
久愛は洸の言葉に頭を抱える。
「どうしよう……。勇希君の意識がまだ戻らないのに梅佳ちゃんも意識がないって……」
傍で洸と久愛のやりとりに耳を傾けていたアヤトが口を開く。
「俺だけでも先に洸のところへ行こうか?」
「梅佳ちゃん、かなりマズいって言ってたから回復スキルが使える私が行かなきゃ」
「そうだよな」
そのとき、傍らにいたナインスが話し始める。
「オイラが霜月勇希を回復させておくでごじゃる」
「「え!?」」
突然の申し出に耳を疑った久愛とアヤトがナインスの方に目をやる。
「ナインス君も回復スキルが使えるの?」
「使えないでごじゃる」
「!?」
「ちょ、今、ふざけてる暇はないんだけどな」
「ふざけてないでごじゃる、皐月久愛の回復スキルを一時的にコピーして、ここで霜月勇希を回復し続けることはできるでごじゃる」
「ナインス君、そんなことができるの!?」
「できるでごじゃる。ただ……」
「「ただ?」」
「一日一回しかできないでごじゃる。もともとオイラはバトルには不向きなタイプでごじゃるが……オイラの作戦でみんなを危険にさらしたお詫びに死ぬ気で回復させるでごじゃる。ふたりは弥生梅佳を助けに行くでごじゃる」
「でも、ここに敵が来るかもしれないよな?」
「そうよね……」
「葉月洸之介の話を聞くかぎり、急いだ方が良いはずでごじゃる。この場はオイラを信じて任せるでごじゃる。オイラはバトルには不向きでごじゃるが、敵に見つからない自信はあるでごじゃる」
「……そうか。じゃぁここは任せて、俺と久愛は先に行くぜ」
「了解したでごじゃる。ではコピーするでごじゃる」
ナインスは、耳をパタパタと動かし、久愛の方へ向きを変える。そして『清廉潔白』スキルを放つ久愛の手を見つめる。
「ムムムッ……ムムムムムッ」
唸るナインスの額の中央に瞳が生じる。瞳が虹色に光ると、久愛の手から発せられているスキルの光を吸収するように、ナインスの体に光が収束していった。
「コピー完了でごじゃる。ふたりは先に行くでごじゃる」
今度はナインスの三つ目から虹色の光が勇希にむけて降り注がれ始める。
「ナインス君、万が一の時は連絡してね」
久愛とアヤトは爆発音がした方──ロキの部屋へと駆け出した。
ロキの部屋の前──。
久愛とアヤトが爆発で崩れた壁から室内へ入っていくと、満身創痍で倒れている梅佳と傍らで介抱する洸の姿が目に入った。
「う、梅佳ちゃんっ!? ひ、ひどい……」
変わり果てた梅佳の姿を見た久愛の瞳にぶわっと涙が溢れる。それでもすぐに涙をぬぐい『清廉潔白』スキルで治療を始めた。
「洸、敵は?」
アヤトが洸に声をかける。
「あそこで倒れたままだよ」
洸は膝の上に梅佳を寝かせたまま部屋の奥の方を指さす。
「アイツか……」
アヤトが目をやると、体が丸焦げになったロキが横たわっていた。
「うげ。真っ黒じゃん……」
「……うん……」
「アイツ、相当強かったんだよな?」
「うん、かなりの手練れだったはず。梅佳ちゃん、あいつにスキルを封じられてたみたいだったし……」
「このバトルシステムでスキル封じはもはやチートだよな。よく倒せたな……」
その言葉を聞いた洸は伏し目がちに言葉を零す。
「何もできなかった……梅佳ちゃんの捨て身の自爆だよ」
「でも、自爆にしては梅佳の方は体がキレイだな……爆発の影響なさげじゃね?」
「あぁ、僕がスキルで召喚した玄武が梅佳ちゃんを守ってくれたみたい」
「玄武!? 新しいスキルか! なら、最低限のことはやってんじゃん。気にしすぎんなよ。洸。翔也さんを助けて地上に戻るまでは落ち込んでる暇はないぞ」
「……うん……あ、ゆ、勇希君は?」
洸の問いかけにアヤトより先に久愛が答えた。
「えっとね、まだ意識が戻らないから、ナインス君が回復してくれてる」
「ナインス君て、スキルを使えたの?」
「ううん、ナインス君がいうには、私の回復スキルをコピーするって。一日一度だけなら使えるって言ってた」
「そっか……」
「ナインスの奴、責任を感じてたな、自分が勇希君を回復させておくから先に行けってさ」
「そっか……。梅佳ちゃん、相当ヤバかったから助かったよ」
「久愛、どう?」
梅佳とは犬猿の仲だったアヤトも気にかける。
洸が抱いたままの梅佳に、久愛は悲壮な面持ちで手をかざし続けていた。
「ん……少しずつ手と目が再生してるのは分かるんだけど、やっぱり以前よりスキル効果が弱いよね、回復が遅いの……」
「ナインスの話だと、回復スキルの効果が弱まってるのって敵の仕業なんだよな?」
「僕たち敵地にいるからね。スキル封じとか回復スキルの弱体化とか、何があるか分からないってことだね」
そう言いながら洸が改めてロキの方に目をやるとロキの体が光っているのに気づいた。
「あっ!!! アヤト!!!」
「ん!?」
アヤトも洸の目線を追いかけロキを見る。
「敵が光ってる、まだ息の根があるのかも……」
「ちっ。回復スキルだったらマズいぞっ」
「久愛、梅佳ちゃんを頼むよ」
洸はそういいながら梅過をそっと寝かせ、久愛に預ける。
「俺がとどめを刺してやるっ!『コウインヤノゴトシ』」
アヤトが唱えると、その左手から白銀色の光が上下に伸びて緩い曲線を描き、右手には同じく白銀色に輝く矢も現れた。
次第に美しい羽で装飾された白銀の弓矢へと変わっていった。アヤトは矢を弓にかけると、ロキに狙いを定め、弓を引く。
アヤトの所作に呼応するかのように弓と矢は帯電し、バチバチと音をあげた。
「くらえっ!」
アヤトが放った矢が白銀の光の粉をまき散らしながら一直線にロキへと向かう。
『光陰矢の如し』とは月日が経つのがはやいことを意味する。スキルで放たれる矢の速度は、付近の時の流れを加速させることで拳銃の弾丸並みに速く、避けるのは不可能なのだが──。
パリンッ、バチバチバチッ──。
ガラスが割れるような音が稲妻の音とともに響きわたる。
「「!?」」
矢はロキの頭部にあたる寸前、何かにぶつかり、地面に落ちて弾けるように消失した。
「ぼ、防御された?」
「や、野郎、まだ生きてやがるのか!?」
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