#38 第37話 人目を忍ぶ・スカイウォーク
またまた更新が予定より遅れてしまいましたm(__)mいつも読んでくださっている方には感謝しかありません。初めてお越しくださった方々もありがとうございます。文章は2800字程度ですが挿絵が10枚あります。
では第37話、はじめたいと思います。
ナインスの後に五人が続く。小一時間もしないうちに遠くにポツリと小さな灯りが目に入った。
「出口?」
「やっとか」
「結構長かったね」
「こんなに歩いたの久しぶりっす」
「そう、もうすぐでごじゃる」
出口の手前まで来ると、ナインスがピタッと動きを止め、おもむろに振り返った。
「ここからは油断禁物でごじゃる。今着用しているスーツが役に立つでごじゃるよ」
言い終わると、ナインスが目を閉じて体に力を入れスキルを唱えた。
「『ヒトメヲシノブ』」
すると五人のスーツにうっすらと光が灯り、頭のてっぺんから足元まで光の膜に包まれる。
「みんなスーツと同じ色で光ってる!」
「自分のは見えないんだな」
「これでどうなったの? ナインス君」
久愛がナインスに尋ねる。
「これで敵に見つからないでごじゃるよ。この世界の最新技術でも捕捉不能でごじゃる」
「そうなんだ! ナインス君、すごいっ」
久愛が感嘆の声を漏らす中、洸はふとある疑問を抱く。だが洸より先にアヤトが同じ疑問をナインスに投げかけた。
「最初からこれでも良かったんじゃね?」
「……説明してなかったでごじゃるが……さっきの通路は量子トンネルと似た仕組みで、二〇〇〇キロメートルは移動したでごじゃるよ」
「えぇーっ!? 私たち一時間も歩いてないわよね?」
「かなりの距離だな……日本の稚内からだと……」
「直線で鹿児島くらいまでだね」
アヤトの言葉に洸が続けた。
「先輩たち、物知りっすね」
「私、このふたりには国語以外で勝てないのよね」苦笑する久愛。
「なるほど! でも久愛さんは高校からの入学組でしょ? 十分凄いっすよ」
ナインスの説明に興味津々と耳を傾ける四人とは対照的に、梅佳はひとり険しい表情を続けていた。それに気付いたナインスが、少し気まずそうにまた耳をパタパタとさせながら前を向いて声を上げる。
「さぁ、いくでごじゃる! 極月翔也の居場所までもうすぐでごじゃる!」
五人はナインスに続き、通路から外へ足を踏み出した。
「うわぁ……これは……」
「地上より綺麗だよね? 洸」
「おぉぉ、ビルが輝いてるな」
「すげぇっすね」
通路を出てすぐの地点から、地上と同じような高層ビル群のある景色が見渡せた。ビルに光が反射し、まるで宝石のように輝いている。その美しさは、険しい表情をしてきた梅佳でさえ一瞬目を奪われるほどであった。
ただ地底であるにもかかわらず、強い風も吹いていて、真白な雲が空を流れていた。
「外観は地上と大して変わらないでごじゃるが、ここは地下資源が豊富だから、建物の素材は地上と違うでごじゃる。人工太陽の光が映えて地上のどこよりも美しいといわれているでごじゃる」
「人工太陽も地上のと違って本物の太陽みたいよね」
「地底のエネルギー源って人工太陽光なの?」
洸と久愛のことばを聞いたナインスが説明を始める。
「ん……地底では地熱が一番のエネルギー源でごじゃる。その次に放射性物質から生じさせたエネルギーで、人工太陽は地底世界に昼をつくるのと植物の光合成をさせるのが主な目的でごじゃるよ」
「そうなんだ」
「地底の方がエネルギーが豊富ってこと?」
「そうでごじゃる」
「して、ナインス、我らはどこへ行けばいいのじゃ?」
しびれを切らした梅佳がナインスに問いかける。
「あそこに見える一番高い建物が真の地球人の王、ゼウスのいる神殿でごじゃる。あの西の端、向かって左のブロックに行くでごじゃる」
「結構遠くない?」
「大丈夫でごじゃる。みんなの履いているシューズはスカイウォークといって、宙に浮いて飛べるでごじゃるよ」
「空飛ぶシューズなら地上にもあるよね」
「今、着用している空飛ぶシューズは完全に無音でごじゃる。地上のはシューっていう音がうるさいでごじゃる。なにより、地上のは危ないでごじゃる。練習しないとうまく使えないし怪我をするリスクもあるでごじゃる。こちらのは地上のより簡単でごじゃるから使ってみるでごじゃる。スーツの袖口にシューズの操作パネルがあるでごじゃる」
「このパネルはシューズ用だったんだ」
「なるほど、さっそく……」
アヤトと勇希が真っ先に空飛ぶシューズ「スカイウォイーク」をONにすると、地面から三〇センチほど体が浮いた。
何より二人を驚かせたのは、バランスをとるのに困らない点にあった。地底世界では反重力装置の技術も進んでおり、使い心地の良さは地上のものと比較にならないほどであった。
「すっげぇ。俺、地上のシューズは嫌いだったけど、これはいいな。全然ふらつかない」
「乗り心地? 履き心地? なんか最高っすね」
洸、久愛、梅佳の三人もスカイウォークをONにして宙に浮く。
「ほんとだ、すごく楽だね、僕、シューズが怖くてボード派だったんだよな」
「私も試した時、怖くてすぐあきらめたのよねぇ~。これは私でもすぐ乗れるぅ~すごいすごい」
梅佳も初めて使うスカイウォークで前後左右に移動したり、急ブレーキをかけたりと試している。パネル操作だけでなく発声でも操作ができる上に、スーツとも連動しスピードを上げたいときには空気抵抗をなくすため縮んで体にピタッとフィットするのだ。
「では、このままあの神殿の屋上まで飛んでいくでごじゃる。向かって一番左の端の屋上で集合でごじゃる」
「「OK」」
「了解じゃ」
「了解っす~」
「ナインス君のスピードだと付いてこれないんじゃ?」
ふわふわと浮いているナインスを久愛が気に掛ける。
「フフフ。オイラを見くびらないでほしいでごじゃる。地上のどの乗り物よりも速く飛べるでごじゃるよ、エッヘン」
誇らしげなナインス。
「ナインス君って見た目に寄らず、すごいのね」
「し、失礼でごじゃるっ。オイラは見た目通り、デキル男の子でごじゃる」
「あははは、そうね。ごめんね。ナインス君」
「気にしないでよいでごじゃる! では、出発するでごじゃるっ!」
「オレ、一番乗りするっす~」
勇希はそういうと神殿屋上に向けて真っ先に飛び出した。
「い、勇み足じゃて……」
梅佳がそれを追いかけるように飛び立った。その後を洸たち三人が追いかける。
「このスカイウォークに……人間は多かれ少なかれ手こずると思っていたでごじゃるが……さすが、ゼロスが選んだ人間たちだけのことはあるでごじゃる……」
性能が良いとはいえ長年使い慣れたもののように履きこなしている五人に感心しながら、ナインスも猛スピードで五人の後を追いかけた。
神殿屋上付近──。
「あっという間だな」
勇希が降り立ったすぐ隣に、梅佳も舞い降りた。
「勇希、そなた、先走るでない。慎重に進むのじゃ」
「……わ、わかってるよ」
勇希は梅佳に内心イラつくも「喧嘩は厳禁」という久愛の言葉を思い出し堪える。
洸たち三人も次々と降り立ち、ほぼ同時にナインスも到着した。
「五人とも、オイラに続いてここから一番下まで降りるでごじゃる」
今度はナインスに続いて、神殿の側面付近を五人が飛び降りる。五人とも着地間近で速度を落とし、ふわりと降り立った。
「この神殿の最西端の部屋に極月翔也がいるはずでごじゃる」
五人は、神殿の入り口から次々に中に入っていく。
そのときだ。神殿内に侵入してすぐに五人は人の気配を感じる。
「誰かいる!?」「「「え!?」」」「何者じゃっ!?」
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、感謝しております。第38話の文章は完成していますが挿絵がまだまだなのでやはり一週間後くらいになりそうです。次話から衝撃の内容が続きます。お楽しみに!(*´ω`*)
□語句・スキル解説
人目を忍ぶ
人に見られないように気を使う様子、という意味から仲間を敵に見つからないようにできるスキル。




