#32 第31話 霜月勇希(しもつきゆうき)
ずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方もありがとうございます!予定より遅くなりすみませんm(_ _)m 朝方までかかりっきりになってしまいました(;'∀')
第31話始めたいと思います!
「ちっ。思い込みが激しい奴はめんどうだな。マジで一戦交えるか?」
アヤトが日本刀を鞘から抜くと、鞘も黒い刀へと形を変える。帯電している両刀には小さな稲光が走っている。
「アヤトもちょっとまって。君、翔也君はバトル中に敵に連れ去られたんだよ。僕たちは翔也君を助けるためにずっと動いてるんだ。誤解だよ」
「え!?」
「敵を倒せたのに、その後、突然大きな手が現れてさ、僕たちも応戦したんだけど、なす術もなく連れ去られたんだ」
「そ、そうなんすか……オレ、早とちりしました。スンマセン」
急にしおらしくなった勇希が深々と頭を下げる。
「そちらの先輩も殴ってしまってスンマセン。何発かオレを殴ってください」
「ははは。分かってくれたならいいよね。アヤト」
「あぁ、ガードの上からでも結構効いたけど、ケガもしてないしな。これでも手加減して殴ったんだろ? 刀出されたらそりゃ先手打つよな」
「ほんとにスンマセン」
勇希はまだ頭を下げている。
「勇希君だっけ? こちらが神無月アヤトっていう僕の同級生で、彼もいっしょに闘ってきた仲間だよ」
勇希は頭を下げたまま続けた。
「翔也さんから、洸之介先輩と、アヤト先輩の名前も聞いてます。あと、皐月久愛さんっていう洸之介さんの彼女さんのことも知ってます」
勇希の言葉に少し顔を赤らめる洸。
「そ、そうなんだ」
「ははは」
アヤトの顔も穏やかになった。
「あぁ、もう頭上げなよ。そんな上下関係気にしないタイプだよ、みんな」
「俺は気にするけどな」
と言いながらも笑みを浮かべているアヤト。
頭を上げた勇希が真剣な表情で洸たちに再び問いかける。
「スンマセン、で、翔也さんが連れ去られた先って?」
洸とアヤトは、ポセイドン戦の詳細や、ゼロスのこと、そのほか諸々の出来事を改めて勇希に伝えた。
「オレ、地底に行って、翔也さん助けに行きます」
「だからぁ、どうやって地底に行くんだ?」
「え、そ、それは、その……」
アヤトのツッコミに黙り込んでしまう勇希。
「勇希くん、僕たちも今、地底に行くのに情報を集めてるところなんだ。でも、全然ダメだ。情報がなさすぎて」
「そもそも地底にいるのかも定かじゃないんだけどな。勇希は何か知らないか?」
「オ、オレも地底については全く分からないっす」
「そもそも翔也君とはどういう関係なの?」
「あぁ、えっと、オレ、翔也さんには東京でお世話になって。翔也さんはオレにとって人生の師匠なんです。オレ、高校に入学するときにこっちへ引っ越すことが急に決まったんすけど、ここが翔也さんの故郷だからいろいろと聞いてました。洸之介さんたちもいずれ紹介するって言われてました」
「そうなんだ」
「義理堅いヤツだな」
「そんなことないっすよ。ほんとに翔也さんにはお世話になったんで」
「勇希君、これからも僕たちは翔也君を救出するために動くし、あと、今回のバトル仕様について研究して訓練もしなきゃいけないんだ」
「お前も一緒にやるか?」
「はい、オレ、もっと強くなって早く翔也さんを助けたいんで、やります。なんでも」
勇希もまだ回復スキルは使えず──正確にはそもそも回復スキルを使えるようになるのか分からず──実戦形式は久愛とカリンが戻るのを待つことにして、三人でスキルを試しては議論し、試行錯誤を重ねた。
一方、久愛とカリン──。
ふたりは梅佳の家の近所に着いていた。梅佳が指定する場所でふたりは梅佳を待っている。
「ふぅ。カリン、ここでいいんだよね?」
「だと思うニャ」
「待たせたな」
「うわっ」
「びっくりニャ……」
「そなたら、これくらい気づかんでどうする? バトルには向いておらんぞ」
言葉はキツいが、久愛は初対面のときよりも穏やかな口調だと感じた。
「梅佳ちゃん、ごめんね、急に呼び出したりして」
「な、何用じゃ? 端末で聞いても良かったのじゃぞ」
「ん……私たち、大事な話は端末を使わないことにしてるの」
「よ、良い心がけじゃ」
「あ、あのね。極月翔也君ていう、私たちの友達が連れ去られたの。カリンの話からすると、連れ去った敵は地底人?で、地底に連れ去られたのかもしれないの。それでね、私たち、翔也君を助けに行きたいの」
「それをわらわに話してなんになるのじゃ?」
「地底への行き方を知らないかな?と思って」
「極月翔也という男が敵に捕まっておるのは知っておる。連れ去った奴と一戦交えたからのお。だが、逃がしてしもうた。さすがのわらわにも地底への行き方はわからぬ」
「そうなんだ……」
「梅佳たん、またバトルしたのにゃ……」
残念そうにする久愛たちを見て、梅佳は急いで言葉をつづけた。
「ただ……わらわが地底へ同行することはやぶさかではない」
「梅佳たん、いっしょに来てくれるのニャ?」
「梅佳ちゃんが来てくれると心強いな。カリンから聞いてるのよ。梅佳ちゃんのバトルセンスのすごさとかね」
「じゃが、ひとつ条件がある」
「なになに?」
「何ニャ???」
「カリンは地底へは連れて行かぬ。そして地底へ行く際は、地上に残るカリンに護衛を付ける」
「どうしてニャ。あたしも行くニャ」
「カリンはバトルに向いておらぬ。危険な地底へ行くのは自殺行為じゃ。かといって地上に一人残すのも危険じゃ。それまでに萌莉と美伊を護衛ができるように育てるつもりじゃて」
「いやニャ。翔也たんを助けたいニャ。一緒に闘ったのにひとり連れ去られたにゃ。それにママも地底にいるかもしれないニャ……」
「翔也とやらがまだ生きているのならわらわが必ず助ける。それにカリンの母親が地底にいる証拠は何一つないはずじゃ。見つけたら地上に連れ帰ってやるから安心するがよい」
「分かったわ。ひとまず梅佳ちゃんの気持ちは分かった。地底へ行くことになったら、条件が守れるようにしてみる。だから、地底に関する手掛かりがあれば私たちにも教えてほしいの。お願い」
両手を合わせて懇願する久愛に対して、梅佳は目を反らしながら答えた。
「わ、わかったのじゃ。地底に関する手掛かり、わらわも真剣に探るとしよう」
「カリン、梅佳ちゃんはカリンのことを思って出した条件だからね」
「い、いやニャ……久愛姉ニャたちと離れ離れになるニャ……」
「大丈夫よ。他にもお友達できたんでしょ!?」
「……」
「梅佳ちゃん、ありがと。また連絡させてね。今日はこれで失礼するわ」
「では、さらばじゃ」
梅佳はそそくさと自分の部屋に戻った。
──ふぅ……ダ、ダメじゃ……。クイーンキングのときの記憶が戻ったせいで、あやつらとまともに会話ができぬ。わらわともあろう者が……バレるのをおそれておるのか……。
部屋に戻ってからも胸の鼓動が鳴りやまない梅佳は、椅子に腰を掛け、静かに目をつぶった。
最後までお読みくださりありがとうございます。霜月勇希とガチバトルは回避されました。どんなスキルを使うのか、今後の展開にご期待ください!
ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております。かなり励みになっています。今後ともよろしくお願い申し上げます。
p.s. 長時間椅子に座るのは本当にダメですね(;´・ω・)足がむくみます……(;'∀')今から仮眠します!おやすみなさい!




