#29 第28話 嘘は泥棒の始まり
予定より更新が遅れてすみません。Twitterではその旨お知らせしていましたが、本来なろうの方で告知すべきでした。申し訳ありません。ずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方もありがとうございます。今週はこの一話のみとなりますm(_ _)m
あとロキのバトルは残酷でグロいので、苦手な方はご注意ください。チェーンソーマンが平気な方は全く問題ないと思います。鬼滅の刃、呪術廻戦と同レベルくらいのグロさかなと。
では第28話始めますm(_ _)m
「だ……誰?」
葵大が突然現れたロキに尋ねる。
「ん?」
──こいつも能力を与えられし者だね~睦月葵大……か。弥生梅佳を探りに来たのに面倒なことになったわねぇ~。
「コ、コスプレ? レイヤー? いや、急に現れたよね?」
「あら~バレちゃったぁ? そうそうコスプレして隠れてたのよぉ~。あなたこそ、だあれ? キキキキキ」
──こ、こいつ、ちょっと間抜けなのかい???
「僕は睦月葵大です。君は何のコスプレをしてるの?……全身の肌、青いよね?」
「そうねぇ~青いでしょお~これ、地肌よぉ~キキキキキ」
「え!? 地肌? コスプレじゃないってこと? とすると……まさか、オバケとか幽霊とか……」
──い、いやオバケや幽霊は、ヒトの脳のバグで見える幻覚だって、もう証明されたからありえない。ということは……。
「き、君……まさか……宇宙人とか未来人とか?」
「的中~そうそう、私は宇宙人よぉ~キキキキキ」
──こいつ、まだ私たちと遭遇したことがないようだねぇ~間抜けだし、ひとりだし、弱そうだし……。ここなら一目もつかないからサクッと殺っちゃおうかねぇ~。
葵大が登下校で使うルートは普段、人気が少ない。葵大は好んでこのルートを使用していたのだが、それが災いすることとなった。
「え、本当に!? 宇宙人!?」
「そうよ~でも、私、『虚言癖』があるのよねぇ~キキキキキ」
──話を引き延ばして『虚言癖』が完成したら、たっぷりかわいがってあげる~。
「虚言癖って、ウソつきってことだよね? ということは、宇宙人ていうのもウソ?」
──なんだろう……この変な感覚……。この人、なんか……ヤバい……?
「そうよ~ウソウソ。私、本当は地底人よぉ~」
「それも嘘?」
「あなたすごいわねぇ~そうそう、ウソウソ。本当は真の地球人だもの、ウソはダメよねぇ~キキキキキ」
──そろそろ完成かねぇ~。
「真の地球人???」
「そう、これは本当よぉ~」
「完成かな?」
「カンセイ?」
「あなた、まだ、私たちと出会ったことがなかったのねぇ~私の『虚言癖』はスキル効果が完成するまでに少し時間がかかるから、油断してくれてありがたいわ~。いやぁ~簡単すぎて笑いが止まらないわ~キキキキキ」
「ス、スキル……!?!?!?」
「そうよぉ~スキルが使えなくなったあなたはここで私に殺されるのよぉ~キキキキキ」
「!!!」
──こ、殺すって!? 敵なのか!? また昔のようなAIの暴走!?!?!? スキルが使えないだって? ちょっ、それも嘘ってこと? いやいや、最悪を想定しなきゃダメだ。本当ならマズい。闘わないとヤられるっ!
「『テッポウミズ』」
葵大はあわてて右手を銃のように構えスキルを唱えるが発動しない。
──え!? マジか……。ヤバい。本当にスキルが使えないならマズいぞ……。
「だからぁ~私の『虚言癖』スキルが完成したからあなたの負けよぉ~。あなたはスキルが使えなくなったからねぇ~キキキキキ」
「『ヤケイシニミズ』!『ミズヲエタウオ』!」
葵大は回復系や支援系のスキルも唱えてみるが何も起こらない。
──本当に使えなくなってるのか!?
「サクッといこうと思ったんだけどねぇ~あなた弱そうだから、ゆ~っくり嬲り殺すことにするわねぇ~キキキキキ」
ロキの言葉に葵大の顔が歪む。
──スキルを使えないようにするって、そんなのチートじゃないか……マズいぞ。これ、もう詰んでるじゃないか……いや、何か打開策があるかもしれない。あせるな……落ち着くんだ……。
「『ウソツキハドロボウノハジマリ』っていうでしょ?」
ロキの両目が光る。
「!?」
「私は嘘つきだから泥棒なの。まず何を盗ませてもらおうかねぇ~キキキキキ」
──何かくる!? 逃げよう……逃げるに越したことはない。逃げるが勝ちって言葉もあるし。
葵大が後ろを向いて逃げ出そうとしたときだった。
「右の踵、も~らおっとぉ~キキキキキ」
ブシュッ──。
葵大がバランスを崩して派手に転ぶ。
「ぐあああああっ」
葵大は地面に寝そべったまま、転んだ痛みなのか右足の踵をブチ切られた痛みなのか、自覚しないまま悶え苦しむ。
「逃がさないわよぉ~キキキキキ」
「な、何を……した?」
起き上がろうとした葵大は再び尻もちをつくように倒れた。右足に力が入らないことに気付く。
──右足が……ヤバすぎる……。これじゃ逃げられない……。
「右足の踵をいただいたわぁ~アキレス腱添えでねぇ~キキキキキ」
そう言いながらロキは血で真っ赤に染まった肉の塊をくわえたが、すぐにペッと地面に吐いた。肉塊を掴んでいた右手が血まみれになっている。
「やだねぇ~踵は固くて不味いわ~」
──あれって、まさか……僕の……!? どうやって攻撃したんだ?
「さぁ~て、お次は……右手の小指をいただこうかしらん」
ブチンッ──。
「ぐああああああああああっ」
骨ごと指を引きちぎる音に続き、葵大のうめき声が響く。葵大は切断された指をおさえながら蹲る。
葵大の目には攻撃されたような形跡は映らなかったが、ロキは切断された葵大の小指を摘まんでいる。
そして切断面から滴り落ちる血を舌で舐めながらニヤリと笑う。
「小指は踵より美味しそうねぇ」
──まずい、本当にまずいぞ……ガチでチートじゃん、こんなスキル……このままだと殺される……。
「次はどこをいただこうかしら? 脳と心臓は最後にするとして……」
葵大の身体を嘗め回すように眺めるロキ。
「決~めたっ! 耳ぃいいいい!」
ブチンッ──。
「ぐあああああああああああああああッ」
血が噴き出す左側頭部を手で押さえながら転げまわる葵大。血は後から後から溢れ出てくる。
ロキは左手で葵大の左耳を摘まんでいる。
切断面を長い舌で舐めまわしてから口にくわえる。
「滴る血が美味しいわ~耳は柔らかいから美味しそうねぇ~キキキキキ」
──ダ、ダメだ……なんて卑怯なスキルだ……。そもそも転生したこの世界でスキルを使う人を見たことさえなかったのに……。それに……もし敵がいたって、回復スキルが強力だから大丈夫だと高をくくってた……。知らない間にスキルが使えないようになるなんて……。ひどすぎる……。
「あらぁ~もう限界なの? ダメダメダメよぉ~ 早すぎぃ~キキキキキ。もっと楽しませてよぉ~キキキキキ」
葵大は地面にうつ伏せの状態で痛みをこらえている。
──どうせ死ぬなら……こんな化け物にいたぶられるより……事故とか災害とかで即死する方がマシじゃないか……どうしてこんな目に……。
葵大は大量の出血のため意識が朦朧とし始めた。
──あぁ……もう逃げることもできないし……良い策も浮かばない……あぁ……ヒトが死ぬときってこんな感じなのかな……また転生するのかなぁ……。
「ねぇ~睦月葵大く~ん。苦しいでしょ? 痛いでしょ? もし私の忠実な下僕となるなら助けてあげるけど、どうかしらん?」
ロキはニヤニヤしながら問いかける。
「……」
──何て? 下僕だって?
「……冗談……言うなよ……」
「冗談!? 本心よ~キキキキキ」
「……」
──うざいなぁ……こいつ……。
最後までお読みくださりありがとうございます。ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております。かなり励みになっています。今後ともよろしくお願い申し上げます。
□語句・スキル解説
◇嘘つきは泥棒の始まり
「嘘をつく人はいずれ人から何か盗むことも平気になる」という意味から、嘘をつくことはよくないという戒めの諺。ここでは、敵からイメージしたものを盗めるという恐ろしいスキル。ただし『虚言癖』スキルで敵のスキルを封じていないと発動できないという縛りがある。
以上です。




