#27 第26話 有終の美・諜報と謀略
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では第26話はじめます!
「ぎゃあああああああああ」
──痛い痛い痛いイタイイタイイタイィイイイイイ。
「もう一度きく、そなたがいう玩具の人間の名はカリンか?」
「くっ……ち、ちがうわよぉ~」
切断された右手首のあたりを押さえながらロキは蹲る。
「早く言うのじゃ! 嘘をついたら次は首チョンパじゃっ。『血眼になる』!」
「ひぃ~」
──なになに!? また何かスキルを唱えた!?
梅佳は刀を鞘におさめ、両手の人差し指をこめかみにあてる。ロキは第二撃を警戒して身動きが取れないでいる。
「極月翔也って男の子よぉ~嘘じゃない、本当よぉ」
──うぐ……。ちょっとからかってやろうと思っただけなのに、なんなのよ。そんなにカリンていう猫耳っ子が大事なの? 同じ猫耳だから? あぁ……血が止まらないわ……回復しないと……でも……下手に動くと次の攻撃がくるかも……。
「……」
梅佳にはスキル『血眼になる』によって少し前のロキの姿が見えている。ロキの瞳にうつる人物をさらに分析する。そこには洞窟仕様の薄暗い牢獄にいる赤い髪の男が映っていた。
──こいつか。カリンではないのは間違いないようじゃな……この男は……極月翔也か……かつて闘ったときより成長しておるが。此度、萌莉と美伊を助けたのもこの男……。たしか……火炎の使い手でかなりの手練れであったはず……あやつが玩具ということは……こやつに負けたのか!?
──チャーンス。
「じゃ、そういうことで、まったねぇ~キキキキキ」
梅佳が考え込んでいるうちにできた一瞬の隙を、ロキは見逃さなかった。言葉を残しつつ姿を消す。
「ま、待てっ!」
梅佳は付近を少し捜索するも敵の気配は完全に消えていた。
「逃げられたな……ふぅ……記憶が戻ったのは良いが……敵の動きが気になるのぉ……。今の奴、強そうには見えなんだが、なぜ極月翔也は連れ去られた!?」
時計をみて、もうひと眠りできると踏んだ梅佳は部屋に戻って腰を掛ける。
──わらわがクイーンキングだということを知ったらあの者たちはどう反応するのじゃろうか……。
梅佳は柄にもなく不安に駆られながら静かに目をつぶった。
一方、地底神殿の自室に戻ったロキはすぐに『有終の美』スキルで切断された右手を治癒する。
「ふう……。あの子、すごいわ。太刀筋が見えなかったねぇ~やっぱり欲しいわ……キキキキキ」
ペロッと舌なめずりするロキ。
その時、ロキの自室入口付近から何者かの足音がコツコツと聞こえた。
「だ、だれ?」
気配を察知したロキが声をあげる。
「ロキ、私よ」
ロキの目の前にヘスティアが姿を現す。王室でのドレス姿とは打って変わって、淡い紫のタイトなスーツにメカニックなマスクを着用しており口や鼻は隠れている。ピンク色の長い髪も活動しやすいようにふたつの団子状に結ってあった。
「ヘスティアか。あら、いつもと違う恰好ね。何の用?」
「ロキ、セレネとポセイドンが死んだことは知ってる?」
「え!? 知らないわ。初耳よ」
「……相変わらず、嘘つきね……。ポセイドンがやられたとき、あなた、傍にいたじゃない?」
「ちょっとぉ~知ってるなら聞かないでよね~キキキキキ。でも、セレネの話は本当に初耳よ~キキキキキ。セレネは誰にやられたのさ?」
──せっかく下っ端が入ってきたからパシリにでもしてやろうと思ってたのに~早すぎるわよぉ~残念だわねぇ~。
「何者かに時限式爆弾を仕掛けられてたの」
「ふ~ん」
──時限式爆弾だって? ダッサい死に方ねぇ……。
「さっそく本題に入るわ。ロキ、ゼウス様からあなたへの質問を預かってきてるの」
「なぁに~?」
「まず、ひとつめ。どうしてポセイドンに加勢しなかったの?」
「あぁ~、ポセイドンは終始圧倒していたわ。彼ってサシの勝負を邪魔されると怒るタイプでしょ? 最後の最後、あちらさんの中に得体の知れないスキルを使った子がいて加勢する間もなく決着がついちゃったのよ~あんなスキル見せられたらひとまず退散だわ~」
──だぁれがポセイドンなんか助けるかっ。自分より上の奴が減って好都合じゃん。
「得体の知れないスキル?」
「そうそう、急に弱くなったと思ったら燃え始めたわ……あのポセイドンを火炎で焼き殺すってヤバくない?」
「た、たしかに、そうね」
「その代わり、ちゃんとお土産は持ち帰ったわ~キキキキキ」
「ふたつめの質問がその土産のことよ。能力を与えられし者は抹殺せよとの命令でしょ?どうして生かしているの?」
「それは人質に取った方がもっと釣れると思ったからよぉ~私なんかが一人殺したところで大した出世もしないでしょぉ~? あの子たちはきっと助けに来ようとするから餌にして一網打尽にするつもりなのよぉ~」
──私の玩具よぉ~いつ殺そうが私の勝手でしょ? 計画実行までに殺せばいいんでしょ?
「なるほど。まだ作戦を実行中ってことね。たしかに、あなたが大きな手柄を上げたい気持ちも理解できるわ。わかった。じゃぁ、ここからは私の質問」
「な、なによ?」
「弥生梅佳と接触した感想は? どうだった?」
「あなた、私を監視してるの? 見てたのならそのままよ」
「まぁ、一瞬で右手を切られてたのは見てたわ。私はゼウス様の命でセレネにアナログ式の時限爆弾を仕掛けた者を探していたの。それでね、調査した結果、今のところ弥生梅佳があやしいの。あの子はセレネとも対戦してるしね」
「見てたのなら、あなたこそ加勢しなさいよぉ~」
「私は今、諜報を命じられているから、バトルをするつもりはなかったわ。あなたこそ早々に逃げ帰ったじゃない? 弥生梅佳を倒す気はあったの?」
「も、もちろん、殺すつもりだったわよ~キキキキキ。まだ困難だとみていったん引いただけよぉ~死んだら元も子もないじゃない? そもそも私、武闘派じゃないし」
「まぁ、弥生梅佳は元AIが人類に転生してるからね。それも全知全能のAIクイーンキングの転生。あなたの判断は正しかったかもしれない。能力を与えられし者の中ではおそらく最強よ」
「あら、そうなのぉ~逃げて正解だったってことね~キキキキキ」
──ちっ。もうそこまで掴んでるのね。ヘスティアの諜報能力はさすがねぇ~。
「ねぇ、ロキ。あなた何か企んでない? 弥生梅佳を手駒にして謀反を起こすとか? 裏切りは許さないわよ」
「な、なによぉ~失礼ねぇ~。何も企んでないし、裏切るわけないじゃない。あの子には仲間をひとり人質に取ってるって伝えただけよ。謀略よ、謀略!」
「ふ~ん。まぁ、そういうことにしておいてあげる。その代わり、あの子について何か分かったことがあったら教えてね。じゃ、そろそろいくわ」
「わかったわ。じゃぁまたねぇ~キキキキキ」
──この子、どこまで知ってて聞いてるのか分からないわねぇ~。私の偉大なる計画はバレてないはずだけど。
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