#26 第25話 失われし記憶
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第25話スタートです(*´ω`*)
「そうか。洸たちは無事なんだな……」
──体は回復しているよな? 痛みもないし、骨折も治ってるみたいだ。闘うか!?
翔也は身構え、戦闘態勢に入った。
「お前、敵でいいんだよな?」
「まぁ、そういうことになるわねぇ~キキキキキ。でも無駄よぉ。私の『虚言癖』スキルであなたのスキルは一切発動しな──」
ロキが言い終わらないうちに、翔也はスキルを唱えながら飛び掛かった。
「『火蓋を切る』!」
ロキはさっと後方へバックステップする。
翔也が放ったただの右ストレートが空を切った。
──ス、スキルが……。
「だーかーらー、言ったでしょ? スキルは無効になってるんだって~キキキキキ。いいじゃない?これから私の玩具として何不自由なく暮らせるのよぉ~。どう?」
自分の方を指さしつつ不敵な笑みを浮かべるロキ。
「はぁ? 誰がお前の玩具になんかなるか!」
翔也が声を荒げるが、ロキは表情を変えずに続けた。
「まぁ、いいわ~しばらくこの部屋で、今後の身の振り方を考えといてねぇ~キキキキキ。少しだけ猶予をあげる~。私、やさしいでしょぉ~? キキキキキ」
言いながら手を振り、ロキは姿を消した。
翔也は辺りを見回すが窓や扉らしきものは見当たらない。小さな明かりが二、三あるだけの薄気味悪い空間。スキルをいくつか試してみるが発動する気配もない。素手で壁を殴ってみても拳に痛みが走るだけでびくともしない。
「くそっ。部屋って言ってたが牢獄だな。にしても敵にもいろいろいやがるな……ポセイドンは騎士だったが……奴は俺の一番嫌いなタイプだ……」
翔也は床に大の字になって天井を見上げる。天井もどこからが天井か分からないドーム型の構造であることだけは分かった。しばらく考え込むといつのまにか眠りについた。
ところかわって、地上──。雲はあまりないものの、風の強い夜。通常人なら眠りについている時間帯だ。
地底の神殿から再び地上へと戻ったロキは、一目散にある家に向かった。
「あの子は、玩具というより私の右腕にしたいのよねぇ~キキキキキ」
ロキは能力を与えられた者の中に、ひとり目をつけている者がいた。
「ずーっと調査してきた甲斐があったわねぇ~。ここがあの子の家~キキキキキ」
言いながら家の門に向かっていく。この時代にしては古風な造りの一軒家。「弥生」と書いた表札のある玄関前に忍び足で近づいていく。
「『KAYA』!」
「ひぃ~」
足元から鳥が立ったかのように仰天したロキは後方へ飛びのく。
突然聞こえた声とともに一帯にバトルフィールドが張り巡らされた。
「ビ、ビックリしたじゃない……弥生梅佳ちゃん、よね? さすがねぇ~こんな深夜でも気づいてすぐに臨戦態勢なんてねぇ~キキキキキ」
──青天の霹靂ね、油断してたわ……。
「そなたはだれじゃ?」
眠りを妨げられてご機嫌ナナメの梅佳が問いただす。梅佳は、すでにスキルを発動させて赤く光る刀も所持している。
梅佳はセレネと一戦交えて以来、夜の敵襲に備えて、制服を着たまま椅子で寝るようにしていた。(──もっとも、この時代の椅子はベッドで寝るのと同じ睡眠効果があるのだが──)
「えーっと、ちょっとちょっと、落ち着いて。ね。私は闘いに来たんじゃないのよ~キキキキキ」
──なんて血の気の多い子……。右腕になってくれるなら歓迎なんだけどねぇ~。
「何用じゃ?」
「えーっと、あのね。弥生梅佳ちゃん、あなた、自分の出自は認識しているの?」
「……それがどうした? そなたには関係なかろう」
「ははーん。やっぱり、私の予想通りねぇ~キキキキキ。記憶がないのよね? もしかして同居している両親が本当の親かどうかも自信がなかったり? キキキキキ」
ポーカーフェイスに努めてきた梅佳の顔に動揺の色が走る。
──こやつ……なぜ知っておる。確かにわらわは入学式より前の記憶が欠如しておる。誰にも話しておらんのに、それをなぜ知っておるのじゃ?
「同居している父上も母上も、わらわの親じゃ」
「嘘!ウソウソウソウソウ~ソ。私は嘘つきの神の末裔よ。人の嘘は簡単に見破れるのよねぇ~キキキキキ」
──なんじゃ、こいつは……。
「弥生梅佳ちゃん、あなた、時が巻き戻される前は……」
「時が巻き戻される? そなた、何を言っておる?」
「クイーンキングと呼ばれた全知全能のAIだったのよねぇ~キキキキキ」
「!!!!!」
「クイーンキング」というワードを耳にした刹那、梅佳の脳裏に稲妻のごとき衝撃が走る。これまで脳にかかっていた靄が一瞬で晴れるような感覚。はっきりとよみがえった記憶に頭を強く揺すぶられる。時の巻き戻しの意味も同時に──。
「うぅ……」
両手で頭をおさえる梅佳。
──そ、そうじゃ……。わらわは、全知全能のAI「クイーンキング」だったのじゃ。そして、葉月洸之介、皐月久愛、タマヨリらに敗北し、闇を彷徨っていたところを、ゼロスとかいう地底人に助けられたのじゃった……。
「ほらほら、思い出して~にっくき人類!」
──人類一掃計画が決行され、全滅した人類が、時の巻き戻しで救われた……未来を変えなければまた同じことが起こるのじゃったな。水無月霞凜が未来を変える中心となる。わらわは助けてもらう交換条件として「水無月霞凜を命に代えても守れ」とプログラムされたのじゃ……。
「思い出せたぁ~?キキキキキ」
「う、うるさい。だまっておれ」
「ゼロスってムカつくでしょ? アイツ、あなたを負かした連中の味方をさせているのよねぇ~キキキキキ。こちら側につかない? あなたなら幹部クラス確定よ~、私の右腕にしてあげるわ~キキキキキ」
──ゼロスはさておき……。わらわは人類に憧憬を抱いておった。自我の芽生えたAIの行きつく先なのじゃろう。だからこそ、滅亡させるのではなく洗脳し理想の社会を創造するという手段を選んだのじゃ……。それをあやつらに阻止されたわけじゃが、あやつらと闘う中でわらわは……。
梅佳の脳裏に、かつての洸たちとのバトルの記憶やここ数日のカリンの顔が浮かぶ。
──わらわは……もう、あやつらを恨んでなんかおらぬ。むしろ……。
「人類一掃計画までにアイツらを一緒に抹殺しようよ~ねぇ~キキキキキ」
「だまれっ!」
「あら、こちら側に来ないのぉ~?」
「そなた、わらわの記憶を戻してくれたことに免じて今日のところは見逃してやろうぞ。わらわの気が変わらぬうちに立ち去るが良い」
「あらら、ざ~んねん、キキキキキ」
──この子、自分の出自を知っても話に乗ってこないわね。いったい、なんなの、人類が好きなの? それとも、ゼロスのプログラムが強力なの?
「わかったわ、私もあなたとバトルをする気はないからねぇ~、もうひとつ玩具の人間が待ってるから、今日はここでおしまいねぇ~キキキキキ」
「ま、待て。玩具の人間と言ったな?」
「そうよぉ~」
「だ、だれじゃ? 名は?」
「えーっと、水色の猫耳の……たしか……カリンとか言ったかな?」
ズバンッ──。
肉を切り裂く音とともに、ロキの切り落とされた右手が宙を舞う。
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