#25 第24話 虚言癖・殻に閉じこもる
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新章突入・新キャラ登場です!第24話始めます(*´ω`*)
洸たちは翔也のもとへ駆け寄る。久愛とカリンは翔也を回復させるべく各々スキルを唱える。
「『清廉潔白』!」
「『明鏡止水』!」
ブーン──。
だが、放たれた癒しの光は、拒絶されるかのように消えていく。
「え!?」
「治らないニャ……」
「「!?」」
洸とアヤトも驚く。
久愛とカリンは再びスキルを唱えるが、またしても光は消え、治癒できない。
「ど、どうして!?」
「なんでニャ……」
「ダメージが大きすぎるのか?」
「過去のバトルにとらわれすぎてるって話か?」
「そんなことない、今まで回復スキルはうまくいってた」
「あたしもニャ」
意識を失っている翔也の傍らで狼狽える四人を、遠めに眺めている者がいた。
──キキキキキ、バカねぇ~。そんなにいっつも回復ができると思っちゃダメよぉ~。人類風情が調子に乗っちゃダ~メ。キキキキキ。私の『キョゲンヘキ』スキルで回復は無効よぉ~キキキキキ。
奇妙な笑い声を漏らすのは緑のショートヘアで緑の瞳をした女性。肌はやはり青い。ノースリーブのタイトな黒いスーツを身にまとい中性的な雰囲気も強く、意地の悪そうな笑みをこぼしている。
──ポセイドンの奴もざまぁだねぇ~。騎士道精神? 反吐が出るねぇ~。わざわざ弱っちぃ人間相手に一騎打ちとか、おまけに回復スキルも使わず打ち合うとか? ダサいねぇ~。もっと早い段階で胸か腹をぶち抜くか、頭をぶっ潰しておけば楽勝だったんじゃないのかねぇ~? ロキの末裔の私なら、あんなヘマはしないわ。まぁ、私は武闘派じゃないけどねぇ~キキキキキ。
北欧神話の神ロキは「閉ざす者」「終わらせる者」という異名をもつ、嘘つきで悪戯好きな神であるが、後に神々を滅ぼした逸話さえある頭脳派の異端児でもある。
ポセイドンに悪態をついたかと思いきや、今度は翔也の方を向いて何やら企んでいる。
──ポセイドンの奴は死んだよねぇ? プログラムは完全に止まってるけどねぇ~? あの赤い人間はまだ息の根があるねぇ~キキキキキ。このまま死ぬのを待つのもいいけど、人質に取っておくのも面白いわよねぇ~キキキキキ。このロキ・ロキロの玩具にでもしようかねぇ~キキキキキ。
「『カラニトジコモル』!」
ロキの緑色の瞳が光る。さらに胸の前で両手を広げると黄緑色の靄が生じた。
同時に翔也の上方には黒い靄が生じ、その中から巨大化したロキの手が現れた。
「な、なんだ!?」
「敵!?」
「こ、攻撃!?」
「にゃにゃ!?」
翔也の傍にいた洸たちは驚き、敵襲に備えて身構える。
両手は、翔也の身体を鷲掴みし、そのまま両手の指をからませる。
「やめろー」
「離せっ!」
「だれ?何するのよ」
「やめるニャー」
洸たち四人は口々にスキルを唱えるも発動しない。
巨大な手は、祈るかのように翔也を握りしめるとゆっくりと小さく圧し潰していく。
「やめてー」
「ニャー」
「くそっどうしてスキルが出ない!?」
「みんなスキルが無効になってるのか!?」
巨大な両手が広げられると手品のごとく翔也の体は消え、代わりに両の掌の上方にテニスボール大の光球が大きな光を放ちながら浮遊していた。
「「「「……!!!」」」」
光球と巨大な手は黒い靄に包まれると跡形もなく消失した。
「翔也君が……」
「消えた!?」
「どこいったの!?」
「ニャニャニャ……」
他方、ロキの手元に光球が現れる。
「キキキキキ」
ロキが掴んだ光球は小さくなりビー玉サイズにまで萎んでいく。
洸たち四人は慌てて付近を探し回るが誰もいない。
「翔也君、どうなったの?」
「怪我も治ってなかったにゃ……大丈夫かにゃ……」
「連れ去られたのか……?」
「いや、殺されたかも……」
四人の表情には悲壮感が漂っていた。
「さて、いったん戻るとしますかねぇ~キキキキキ」
ロキは地底の神殿に戻るべく姿を消した。
真の地球人たちが住む地底の神殿──。
「キキキキキ。あいつらの顔ったら……キキキキキ。最高だねぇ~キキキキキ」
右の人差し指と親指で、翔也を閉じ込めた光球をつまんで眺める。空にかざしてみたり、口の中に入れて舌で転がしてみたり──。
「久しぶりだねぇ~キキキキキ。人間の玩具ぅ~キキキキキ」
幼児が買ってもらったおもちゃにはしゃぐように陽気にふるまうロキは、神殿内にある自室までいそいそとやってきた。
「どこがいいかねぇ~キキキキキ」
自室内を見回したロキは、ある狭い一室の扉を開き、唱える。
「『チッキョヘイモン』!」
ロキのかざした右の掌から黄緑色の光が放たれると、四方の壁も天井もごつごつした岩へと変わっていく。部屋は薄暗い洞窟のような牢獄へと姿を変えた。
ロキが部屋の中心付近に向けて光球を投げ入れると、光球は輝きながら宙を舞い、放物線を描く。
「『ウソカラデタマコト』!」
ロキが続けて唱えると『殻に閉じこもる』スキルの効果が解除される。
光球は落下速度を落として床の上10センチあたりで停止すると、再び光が大きくなり、翔也の体が少しずつ現れていく。全身が現れると光は完全に消失した。
「意識のない玩具はつまんないからねぇ~キキキキキ。回復してあげるねぇ~『ユウシュウノビ』!」
ロキは瀕死の翔也に向けて回復スキル『有終の美』を唱えた。右の人差し指で何重も輪を描くような所作をすると、筆跡をなぞるように白い光が生じ渦を巻いていく。
光の渦は次第に広がり、翔也に降り注いでいった。
「……ん?……」
意識を戻した翔也に向けて、ロキは再び右手をかざし『虚言癖』スキルを浴びせる。
──このスキルだけは早めにかけておかないとねぇ~。時間がかかるからねぇ~。
「はぁい! おはようございますぅ~私のオ・モ・チャ・君! キキキキキ」
「……!?」
──なんだ!? 夢か? それとも、あの世か?
翔也が現状を飲み込めないまま上体を起こすと、ロキが続けた。
「あなた、がんばったわよ~ポセイドンに勝ったわ~キキキキキ。そのあなたを私が買ったの、あなたを飼うためにねぇ~キキキキキ。これからあなたは私のオ・モ・チャ。キキキキキ」
ロキは不敵な笑みを浮かべ翔也を見下ろす。
──なにを言ってやがるんだ?コイツ……だれだ!?。
翔也はようやく自身が敵に捕まっていることを把握した。
「ちょ、待て。お前、洸たちはどこだ?」
言いながら翔也は立ち上がる。
「コウ!? あぁ~お仲間のことねぇ~キキキキキ。全員殺してやったわ~」
「なんだとッ!!!???」
「嘘よぉ~ウソウソ!キキキキキ。私はねぇ~利口だから、勝てるバトルしかしないのぉ~。あんな、得体の知れないスキルを見せられたら、ひとまず撤退だわよ~キキキキキ」
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以下、語句・スキル解説になります。
◇『虚言癖』
嘘をよくつく性質のこと。
ここでは敵を嘘つきに変えて、スキルも嘘となる、つまり、効果が発動しなくなる恐ろしいスキル。
ただし、詠唱してから効果が確定するまでに1分ほどかかるため、バトル中には使いにくい。
◇『殻に閉じこもる』
他人との交流をせず、ひとり心を閉ざすことを意味する。
ここでは光の玉に閉じ込めるスキル。意識がある者が閉じ込められた場合、外界とのやりとりは手段を問わずできなくなり、中から殻を破ることもできない。
◇『蟄居閉門』
本来、江戸時代における刑罰の1つで今でいう自宅謹慎の意味だったが、転じて、家や部屋にこもって外へ出ないことという。
ここでは、一室を牢獄へと変え、外へ出られないようにするスキル。
◇『嘘から出た実』
嘘のつもりで言ったことが真実になることを意味する。
ここでは自身のスキルの効果を解除するスキル。敵のスキル効果は解除できない。
◇『有終の美』
最後の最後まで立派にやり抜きすばらしい結果を残す意味。
ここではバトルにおいて最後まで立派に闘えるよう回復させるスキル。
以上になります。
次話は土曜日に更新予定です(*´▽`*)よろしくお願いいたします(∩´∀`)∩読んでくださいねぇ~キキキキキ( *´艸`)




