#23 第22話 待てば海路の日和あり
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ポセイドン戦もクライマックスです!
第22話、始めます!
──よし。アイツ、乗ってきた。騎士道精神ってやつだな。
翔也は目配せして意思を洸たちに伝える。
──洸、隙を見て、みんなでいったん引いてくれ。
洸は翔也の意図をくみ取るも首を小さく左右に振る。
──翔也君ひとりは不利すぎる。ダメだよ。逃げられない。
翔也も首を横に振る。
──逃げるんじゃない。策を練って出直すんだ。ここで全滅したら終わりだろう?
「何をしておる。他の者を逃がしたいのは分かっておるが、それを認めた訳ではない。『マテバカイロノヒヨリアリ』!」
ポセイドンは洸たち四人に向けて右掌を広げかざす。掌に六芒星が描かれると緑の光線が放出された。
久愛が防御スキル『馬耳東風』を唱えるも、光線のスピードが速すぎて間に合わない。四人は緑色の光線をモロに浴びてしまった。
「な、なんだ!?」
「こ、これは……」
「何の攻撃なの?」
「痛くないにゃ……」
混乱している洸たち四人にポセイドンが声をかける。
「安心せい。『待てば海路の日和あり』の意の通り、貴殿方はただ仲間の勝利を信じて待てばよい。その間、貴殿方はフィールドの外へ逃げることもバトルに加わることもできないが、我も貴殿方へ攻撃はできぬ」
洸たち四人は口々にスキルを詠唱するも全く発動しない。
「これで貴殿の望み通りになったであろう」
ポセイドンが不敵な笑みで翔也の方を向く。
──退路が断たれたってことか。近接脳筋タイプかと思ったのに頭もキレるな。ったく……厄介だ。
翔也はあわよくば洸たちを逃がす策を封じられ、苦虫を噛み潰したような表情をみせる。
──これだと、かえって不利になるじゃないか……。
洸は翔也の手助けができないことに恐怖すら覚えた。
「さぁ。一騎打ちだ。その前に貴殿の名を聞いておこう」
「俺か!? 極月翔也だ!」
「ほぉ。十二月の異名か。それも師走ではなく極月か、良き名だな」
「名を褒めてもらえて光栄だが、これからヤりあうんだろ?」
「我と一騎打ちをして敗れていく者の名をこの胸に刻むために聞いたのだ」
「けっ。余裕だな」
「あぁ、血沸き肉躍るとはこのことを言うのだな。さぁ、遠慮はいらん、かかってこい」
「あぁ、言われなくてもいくぜ!『キエンバンジョウ』『デンコウセッカ』!」
──僕が昔使った『気炎万丈』だ……。
──俺の『電光石火』……。
洸とアヤトが、翔也のスキルに驚く。
「『狂瀾怒濤』!」
ポセイドンも再びスキルを唱える。
翔也は全身から火炎が噴き出るや否や、目にもとまらぬスピードでポセイドンに右回し蹴りをぶち込む。
ポセイドンは左腕でガードするもキックの威力で数メートル吹っ飛んだ。ガードした左腕から水蒸気が立ち昇っている。
「おぉ。良い蹴りだ。スピードもアップしているな。その調子だ」
ポセイドンは左腕を軽く振りながら、笑みをこぼす。
──コイツ……効いてるのか分からねぇんだよ……。
「いくぞっ!」
翔也が再び間合いを詰め、左フックのフェイントをかます。左腕に気を取られたポセイドンに右フックを打ち込んだ。
ポセイドンは刹那ひるみながらも、またもやウェービングで交わし、右ストレートを翔也の顔面に打ち込んだ。
翔也は上体を後方へ反らしながら、右脚でポセイドンの伸びきった右腕を蹴り上げ、体勢を崩したポセイドンに返す刀で踵落としを炸裂させた。
「ぬぉ……やるではないか。格闘技の経験でもあるのか?」
立ち昇る水蒸気の間から覗くポセイドンの額からは青い血が流れていた。
「あぁ、かじった程度だがな」
──これは効いたよな?
言いながら翔也は攻撃の手を止めない。再び、翔也は左右の拳でワンツーを打ち込む。
翔也のスピードアップしたワンツーがポセイドンの顔面をとらえる。
──効いてるな。こいつ、きっと回復スキルも持ってるよな? 回復の時間は取らせん。
翔也は続けざま、左フック、右フックと左右からポセイドンの顔面に打ち込む。ドゴンバゴンと翔也のパンチはこれまでとは打って変わって見事にヒットする。左のハイキック、右のバックハンドブロー、左フックと息もつかせず放つ。
──いけるぞ、このまま決めてやるっ!
翔也は流れるようなコンボで畳みかける。
だが、翔也が渾身の右ストレートを打ちこんだとき──。
ポセイドンは突進するように体を翔也の方へつっこみ、そのままヘッドバッドを翔也の顔面に食らわした。
「ぐあっ」
右フックへのカウンター気味に食らった頭突きで翔也は後方に吹っ飛ばされる。
「貴殿の世界のスポーツなら反則になるのだろうがな」
ポセイドンは額だけでなく顔のあちこちから青い血を流しながらも、吹っ飛んだ翔也に詰め寄る。そして、立ち上がろうとした翔也の髪の毛を左手で掴んだ。
鼻から血を流す翔也の顔面に向けて、ポセイドンは右拳を振りぬく。
ドゴンッという鈍い音とともに翔也はまた吹っ飛ばされた。
「我が拳の味はいかがか? 極月翔也殿」
「あぁ……強烈……だぜ」
翔也は意識が朦朧とする中ゆらりと立ち上がり言葉を返した。左目から左頬にかけて腫れあがっている。翔也はおもむろにファイティングポーズを取った。
──次まともに食らったら意識が飛ぶな……。
ダメージを負ったふたりは再び打ち合う。
「翔也君……」
久愛が祈るように見守っている。
「洸、翔也さんって今、スキルいくつ使ってる?」
「『牛鬼蛇神』『心頭滅却すれば火もまた涼し』『気炎万丈』『電光石火』だから四つかな」
「そうだよな。それでようやく互角か……」
「互角ならまだいいんだけど……」
「……」
洸とアヤトも息をのんで見守る。
次第に翔也とポセイドンの打ち合いは激しさを増していく。
だが──。
「翔也君が押され始めてない……!?」
「まずいね……」
「あぁ……」
徐々にダメージが増えていく翔也を、久愛は目に涙をため見つめている。
洸とアヤトは劣勢の翔也に助太刀できない歯痒さの中で、打開策を必死で練っている。
やがて翔也はガクッと崩れるように膝をついた。
「ここまでだろう。人類にしてはよくやった。貴殿のことは後世まで語りつごう。人類で唯一我と対等に殴り合えた男として」
ポセイドンの言葉に翔也は微笑を浮かべ答えた。
「まだ負けて……ねぇ……俺は……お前に……勝つ……」
力のない言葉で強がる翔也。もとよりネガティヴな発言をしない楽観主義者。だが、今は翔也にとっておそらく初めてであろう悲観的な言葉が脳裏をかけめぐっていた。
──俺は……ここで死ぬのか……?
ポセイドンの蹴りと拳のコンボをモロに食らい続けた翔也の体は既にボロボロになっていた。
「もうやめて……」
久愛が顔をくしゃくしゃにして涙を流す。
そのときだった──。
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□以下、語句とスキルの解説になります。
◇『待てば海路の日和あり』
うまくいかないときもじっと待てば好機が訪れることのたとえ。
ここから敵にフィールド外へ出ることもバトルに参加することも不可能にする反面、詠唱者側も攻撃ができなくなる。一騎打ちに特化した騎士道精神あふれるポセイドンならではのスキル。
◇『気炎万丈』
本来「激しく燃える炎」を意味するが、転じて意気込みが盛んである様子のたとえ。
ここでは、気力が漲り攻撃力がアップするスキル。
◇『電光石火』
本来、電光や火打石の火が光る時間の短さから「極めて短い時間」を差すが、転じて「行動が素早いこと」を意味する。
ここでは、自身のスピードをアップさせるスキル。
※翔也の4つのスキルについて
『牛鬼蛇神』は本来自己の命と引き換えにすべての力を究極まで引き上げるスキルであったが、翔也はスキルをセーブして発動させているので各パワーは究極まで上がっていない。そこで力をさらにアップさせるために、『心頭滅却すれば火もまた涼し』スキルで防御力を、『気炎万丈』で攻撃力を、『電光石火』でスピードをそれぞれアップさせている。これにより桁違いの強さのポセイドンと打ち合えているのだが……。
以上になります!
次話は土曜日に更新予定です!
ここまで読んでくれる方~♪ 好き~♪
(お見送り芸人しんいち風に)
ありがとうございましたm(_ _)m




