#20 第19話 時の経過への違和感と既視感
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Twitterの行く末が気になるところです……たとえTwitterを辞めたとしても、この物語は続けます。エタることがあるとすれば僕が死んだ時だけですm(_ _)m
洸や久愛、アヤトの会話が中心になります。
第19話、はじめます!(*´▽`*)
入学式の3日後──カリンや萌莉、美伊が梅佳によるスパルタ特訓を受けた日の夜、皐月家には、皐月久愛、葉月洸之介、神無月アヤトが集まっていた。3人は、かつてのAI暴走事件の再来を危惧し、バトルの訓練を続けていた。ただ今日は訓練後も解散せず、リビングで話しながら来客を待っていた。久愛は鏡を見ながらリボンを直している。
「あのね、私、最近、なにか、言葉で言い表せない違和感?ていうのかな……感じることが増えたのよね……」
「あぁ、それ、僕もだよ。バトル訓練のときも感じたし、よくあるんだ」
「俺も、明らかに既視感のような奇妙な感覚が続いている」
バトル訓練中、カリンではない、けれどもよく似た誰かの記憶の断片が3人によぎった。それ以外にも3人ともに何とも形容しがたい違和感を覚えていたのだ。
「そもそも、私たちって一度高校生活を終えたような気もするし」
「あぁ、それも分かる。高校2年、2回目みたいな」
「それ、俺だけじゃなくて2人もなんだな。まるでフィクションで読む『過去へタイムリープした』とか『パラレルワールドにいった』とかいう感覚な」
「そうそう、それ。私の言いたいこと」
「パラレルワールドって理論上はあるっていうけどさ、確かめようがないもんね。過去に戻るのは今でも不可能だよね?」
「あぁ、未来は可能だけど、過去はダメってな。俺も量子力学とか好きで読み漁ってるけど未だにパラレルワールドの存在も解明されてないし」
「これって、今回のできごとと関係あるのかな」
「ん……僕は関係があると思ってるけど……ひとまず翔也君を待とう。翔也君なら何か知ってるかもしれない。もうすぐここに着くって」
「私、翔也くんと会うの、久しぶりだわ」
「俺もだ」
「僕もリアルに会うのは久しぶりだよ。今回の件、翔也君もスキルが出現してから速攻で連絡をくれてさ」
「翔也君、何か情報をつかんでるのかなぁ、私、いろいろ聞きたいことがあるわ」
「俺もだ」
アヤトはそう言いながら、制服の上着のボタンをはずし、胸を張って伸びをする。
3人はかつての盟友で3つ上の先輩である極月翔也を待っていた。ただの話なら、わざわざ会わずとも仮想空間でリアルに会うのと同じ状況を作れる時代だ。翔也がそれを避けること自体に何か意味があるのだろうと3人は了解していた。
キンコーン。
家に誰かが入ると鳴る綺麗な鐘の音が響いた。
「あれ、翔也君!?」
「え!? 翔也君なら自動で開かないはずよ……」
「だれだ?」
3人にわずかながらも緊張が走る。
「ただいまにゃ~」
家に着いたカリンはさっそく久愛に特訓の成果を報告するべく、いそいそと玄関からリビングへと向かう。
「なんだ、カリンか……」
久愛の零した声はカリンの耳にも届いた。
──なんにゃ。久愛姉にゃ、ガッカリしたような言い方してるにゃ!?
カリンはおそるおそるリビングをのぞく。久愛のほか、洸、アヤトもいるのに気づいた。
「おかえり~」
「た、ただいまにゃ」
「カリン、学校どうだった?」
「久愛姉にゃ、さっき『なんだ、カリンか』て言ってたにゃ……」
「ち、ちがうの、今ね、お友達を待ってて」
「誰か来るのにゃ?」
「そうそう。翔也君っていう、昔から仲の良かった大学生の先輩。カリンは会ったことないよね?」
「うん……あ、ショウヤ君? 強いイケメンの人ニャ?」
「あれ? カリン、翔也君に会ったことあった?」
「ないにゃ……でも、萌莉たんと美伊たんを助けてくれた人も同じ名前だったはずにゃ」
カリンは仲良くなったクラスメイトの如月萌莉と卯月美伊が襲われて翔也君に助けられたことを伝える。
「この3日間、僕たちの学校だけで3件も事件が起きたってことだよね」
「みんな無事だったのは幸いだわ」
「俺は敵がまだ本腰を入れていないという線が濃厚だと思うが」
「ねぇ、カリン、その2人のお友達はスキルを使えるの?」
「えーっと……」
カリンはふたりが1つずつスキルを使えた話や、今日の梅佳の特訓で、ふたりがさらに強くなったこと、カリン自身もスキルを使えるようになったことを久愛たちに伝えた。
「そっか! カリンもスキルが使えるようになったんだ、よかったね」
「うんにゃ!」
「僕たちも梅佳たんに特訓してもらおうか」
「俺は嫌だ」
アヤトがぶっきらぼうに言い放った。
「梅佳たんはスパルタだけど、言われた通りにしてたらみんな強くなったにゃ……」
満面の笑みだったカリンは少ししょげた調子で呟いた。
「アヤト、そんなこと言ってられない状況かもしれない。同じ日に能力が出現して、僕たちより使いこなしていたことは事実なんだし」
「それは否定しないが、あいつに教わるのは勘弁してくれ。だから俺は翔也先輩に期待しているんだ。聞きたいことリストもまとめた」
アヤトは洸たちに自身の端末を見せる。質問事項がぎっしりと書かれてあるのを見て洸と久愛が苦笑する。
「私の聞きたいこと、全部含まれてるよ」
「翔也君が梅佳たん並みならいいんだけど、僕には実際に会うまで詳細は話さないって言ってたからね」
「ねぇねぇ、カリン。使えるようになったスキルってなあに?」
久愛が話題を少し変えようとカリンに話をふった。
「えとね、んと……『明鏡止水』と……『猫に小判』にゃ!」
「「「……」」」
カリンが口にしたスキル名を聞いた洸たち3人には、思い出せそうで思い出せない、脳内の霧の奥にある何かを掴み損ねた感覚が残る。
「どうしたにゃ?」
3人のリアクションをいぶかしそうに見つめるカリン。
そのとき洸之介の端末が鳴った。
「翔也君だ!」
洸が翔也と会話を開始する。
「翔也君、洸です」
「洸、まずい。敵がいる」
「「「えっ!?」」」
「……にゃにゃ!?」
翔也の言葉を聞いた4人はあわてて皐月宅から外に出た。
最後までお読みくださりありがとうございます。洸と久愛が主人公のはずなのですが、群像劇みたくなってきています。ぶっちゃけ、全キャラ大好きなのです(;^_^A
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