#17 第16話 明鏡止水
今日はカリンからのお礼ですニャ!
ずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方もありがとうございますニャ!
いいね、感想、ブクマ、評価してくださった方々、もう感謝しかないですニャ感謝ミ•ω• ฅミ
お昼のお弁当タイムに始まった萌莉の独白を聞き終えると、梅佳はふむふむと頷いた。
「なるほど、そなたらはハーデスとやらの襲撃に遭い、極月翔也というイケメンに助けられ、能力者として覚醒したというわけじゃな」
萌莉と美伊はこくんと頷く。
「イケメンに助けられたのじゃな?」
梅佳は好奇の視線をふたりに向ける。
「いやいやいや、イ、イケメンはともかく……」
オロオロする萌莉を見ながら梅佳は大口を開けて笑う。萌莉も美伊も顔を赤らめている。
話に盛り上がる三人を尻目に、カリンはひとりうつむいていた。
──萌莉たんも美伊たんもスキルが使えるのにゃ……いいにゃぁ……みんな……。
梅佳は伊集院白夜ことセレネ・レセに襲われ勝利したことを萌莉と美伊に説明した。
「梅佳ちゃんは敵を倒したんだ」
「さすがですわ……梅佳さん」
「わらわに敗北はない。だが、騒ぎになる前に早々に去ったからのお。倒せたのかどうか、わらわにも分からぬ。戦闘不能にはしてやったがのぉ」
「梅佳ちゃんはいつからスキルが使えるようになったの?」
「入学式の日からじゃ」
「どうしてそこまで慣れてるの?」
「わらわに不可能はないのじゃ。そういえば……誰かにも同じことを聞かれたのお」
「私たちにバトルのこと、もっと教えてほしいんだけど、ダメかな?」
「私からもお願いしますわ」
梅佳の才覚に一目置く萌莉と美伊は、梅佳に師事するべく願い出た。
──あ、あたしも教えてほしいにゃ……ウメたんに教えてもらったらうまくいきそうな気がするにゃ……。
カリンは、萌莉や美伊に負けない熱量で梅佳を見つめた。
「ウメたん、あ、あたしもお願いします……にゃ」
「……よ、よかろう。さっそくじゃが、今日の放課後、駅近の公園で特訓じゃ!」
──なぜ能力者がこんなにおるのか、わらわにも分からぬ、こやつらをもっと知れば何か分かるやもしれん。敵の実態もまだ分からぬことだし、味方はひとりでも多い方が良いしのお……。
「梅佳ちゃん、他の能力者も知ってるの?」
「ぬ。わらわの知る限りでは、カリンのいとこの皐月久愛とやらと……その連れの男ふたり、葉月洸之介と神無月アヤトとかいったか、あぁああ、あのたわけ。あぁ、思い出したら怒りが込み上げてきたぞ……」
「「????????????」」
急に不機嫌になりイラつく梅佳をいぶかしげに見つめる萌莉と美伊。
「ど、どうかしたの? 梅佳ちゃん」
「どうもせぬ。ちょっとムカつく奴を思い出しただけじゃ」
「ご機嫌ナナメでございますね」
「あ、洸にいにゃも、アヤトたんも、とてもいい人にゃ……」
カリンがフォローするも焼け石に水だ。
「この話はもうよい。そろそろお昼休みも終わりじゃ。続きは放課後にのお」
「う、うん」
「承知しましたわ」
──やったにゃ! あたしもスキルが使えるようになるにゃ! 放課後が楽しみにゃ……。
放課後──4人は駅近くの公園にやってきた。
「KAYA!」
公園に着くと早々に梅佳がバトルフィールドを作る。
「え!? なになに!?」
四方を囲むフィールドに目を丸くする萌莉と美伊に、梅佳はKAYAシステムの説明を一通りすませた。
「外からは何にも見えなかったニャ」
「なるほど……中にいる私たちのことも見えないんだ」
「これだと安心して特訓ができますわね」
「そなたらも後でKAYAの設定の仕方も練習しておくのじゃ」
「了解しました! センセー」
萌莉が少し茶化すように言うと、梅佳は顔を赤らめ、照れくささを隠すように説明を再開した。
「ス、スキルは大別して、攻撃系、防御系、サポート系、回復系の4種類じゃ。治癒・回復系は早めにマスターしておいた方がよいぞ」
「「ふむふむ」」
萌莉と美伊は自身に所縁のある漢字と回復にまつわる言葉を考えてみたが……。
「思い浮かばない……」
「私もです……」
──桃弧棘矢は回復系になるのかしら……。
カリンも必死に考えるのだが、語彙力の乏しさも災いしてお手上げ状態。しょげて3人の様子を、ただ指をくわえて見るほかない。
──また、あたしだけ置いてけぼりかにゃ……。
「実戦形式の方が習得も早かろう。人は必死になったときに真価を発揮するものじゃ。少々手荒になるが、よいな?」
「う、うん……」
「は、はい……」
萌莉と美伊は梅佳の勢いに気圧されて返事をしたものの、実戦形式だということに不安を覚える。
「心配はいらぬ。死にはせん程度に手加減してやるゆえ、ひとつでも多くスキルを習得するのじゃ」
──死にはせん程度って……。
──梅佳さん、ちょっと怖いですわ……。
「カリン、端末にそなたの使えそうな言葉を送っておいたぞ。試すがよい」
「んにゃあ!? ウメたん!!! あ、ありがとにゃ!!! がんばるにゃ!!!」
暗い顔をしていたカリンも梅佳の計らいでモチベーションが爆上がりする。
「3人共闘で良いぞ。わらわを敵と思うて、本気で攻撃してくるのじゃ。そなたらは加減せんでよい。わらわを殺す気でくるのじゃ!」
「い、いや、それは……」
「さすがに気が引けますわ……」
顔を引き攣らせるふたりに対して、梅佳は口の端を歪める。
「まぁ、そんな気遣いができるのも今の内じゃて。ではいくぞよ」
梅佳はそう言いながら身構えて唱える。
「『血の雨を降らす』! フフフ」
梅佳の右手に灯った赤い光がワインレッドの銃を形作る。
梅佳は容赦なく、三人に向けて銃をぶっ放した。
バシュ、バシュ、バシュ──。
水鉄砲の水が壁に当たるような音が響く。
「キャァ」
「い、痛い……」
「ニャニャ……」
昨日のバトル時とは異なり、梅佳の手にあるのは本物の銃に似せた水鉄砲であった。ただ発射されたのは水ではなく紅色のインクだ。
着弾箇所は紅色に染まり、実弾ではないといえ、当たれば当然痛む。3人は紅色に染まった脇腹を押さえてうずくまる。
「「「うぅ……」」」
「ほれ、何をしておる。回復系スキルを唱えるのじゃ」
「……『桃弧棘矢』!」
美伊は実戦で初めて使った唯一のスキル『桃弧棘矢』を唱えてみたが治癒の効果は生じない。
──このスキル……。回復系ではございませんの!?
「美伊! それは防御系スキルぞ。怪我の治癒には効かぬ。他を試すのじゃ」
「そうなのですね……」
「……難しいよね、美伊ちゃん、私は思い浮かばないよ……」
「カリン! 『メイキョウシスイ』を唱えてみるのじゃ! 治癒するイメージをもってな」
梅佳の言葉にハッとしたカリンは慌てて唱える。
「めっ『明鏡止水』……にゃ!」
カリンの右手がぼわーっと水色に光る。光はバレーボール大に膨らむと美しい水の玉へと姿を変える。
カリンは光る水玉を萌莉に向けて放つと、すぐに2つ目の水玉を作り、今度は美伊に向けて放った。それから自身の脇腹にも光る水玉を当てる。3つの水玉は制服に触れるとシャボン玉がはじけるようにパチンと割れ、ダメージを受けた箇所に沁み込むように消えていった。
みるみるうちに3人の脇腹を染めた紅色インクも消えゆき、それとともに痛みも治まった。
最後までお読みくださりありがとうございますニャ!
ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、作者がかなり励みになっていますニャ!
今後ともよろしくお願い申し上げますニャ!ミ•ω•。ミ
以下はあたしが習得した明鏡止水についての解説ニャ!
明鏡止水……邪念のない、澄み切った心の状態
この意味から、敵から受けたダメージを綺麗な元の状態に戻す治癒・回復系スキルですニャ!
次話は、6月23日(金)の予定ですニャ!ฅミ•ω•。ミ
ヨロシクですニャ!




