#16 第15話 火の海・銀世界
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美伊が能力者として覚醒しました! この後のバトルの行方をお楽しみくださいm(_ _)m
それでは第15話スタートです!
「ヤレヤレ……間髪入れずに仕掛けてくる奴だ……」
翔也は動じることなく唱える。
「『ヒニアブラヲソソグ』」
翔也の体を真っ赤な光の膜が覆う。
「『ヒノウミ』!」
翔也は続けざま床に向けて右拳を打ち放った。
すると打ち込んだ地点から前方に向かって赤黒い火炎が走り、あっという間にエアバスの床を火の海に変えた。
「ギャァーーーーーーーーーー」
「アツいぃいいいいいいいいい」
鬼や妖怪たちが断末魔の叫び声をあげながら焼き尽くされる。
だがハーデスの腕から落ちる火種はやむことなく、後から後から鬼や妖怪は出現してくる。
「てめえとは相性最悪だがなぁー、客人どもは無限に湧いてくるぜぇ~。ずっと攻撃してろ! マヌケがっ」
ハーデスが翔也に悪態をつく。
──たしかに相殺できても、あと一歩決め手がないと……。
攻めあぐねる翔也。
──わたしも何かできないかな……。馴染みのある言葉……髪の色? 瞳の色? 銀? 炎に対抗できるイメージ……!?
萌莉はふと思いついた言葉を発するべく、ハーデスに向けて右手をかざした。
「『ギンセカイ』!」
すると白銀色の光が灯った右手から氷の結晶が生じ、吹雪となって魑魅魍魎たちをあっという間に凍らせていく。
先刻までの不気味な景色は、真っ白なスプレーをかけていくように美しい銀世界へと変わっていった。
それにとどまらず、エアバスの床一面も、そして、ハーデス自身も、一気に凍らせたのだ。
──き、効いた?
「エクセレントだ! お嬢ちゃん!」
──よしっ! 2人とも、能力者で確定だな。
翔也はふたりに声をかけた。
「ここはいったん引き上げよう。このまま死んでくれたらありがたいが、確認してまたバトル再開になるよりはマシだろう。少なくともしばらく動けないだろうから」
「「は、はい」」
三人は翔也の空けた穴からエアバスを脱出する。
エアバスを降りた翔也は、エアバイク──空飛ぶバイクを停車している場所までふたりを連れて行った。
この時代のエアバイクは販売された当初こそ話題を呼んだが、今ではもう誰も驚かないほど普及している。翔也のバイクは赤と黒でカラーリングされたスクーター型。後部座席に2人座れる3人乗りの大型だ。
「おふたりさん、ちょっと後ろに乗って! ここから少し離れよう! 急いで!」
翔也がエアバイクの運転席に飛び乗る。
「「は、はい」」
萌莉と美伊は後部座席に並んで座る。
──エアバイクに乗るのは初めてだ……。
萌莉は初体験のエアバイクにソワソワして落ち着かない。それに対して、美伊は自宅にこの時代のあらゆる乗り物(宇宙船を除く)があるため全く動じていない。
「あ、あの……もしよかったら私の家の付近までお願いしてもよろしいでしょうか?」
「OK! じゃぁ、君の家の住所を教えてくれる?」
ふたりを乗せた翔也のエアバイクは、会話に反応して美伊の端末から目的地を検索した。
「ショウヤさん、卯月宅ニ目的地ヲ設定イタシマシタ」
エアバイクは翔也に告げると、離陸し、空を移動し始めた。
「俺は極月翔也と言うんだが、君たちの名前を教えてもらってもいいかな?」
「あっ、私は、如月萌莉です」
「私は卯月美伊と申します」
「萌莉ちゃんと、美伊ちゃんね。とにかく二人のおかげで俺も助かったよ。ありがとうな」
「いえいえ、こちらこそです。私たち、翔也さんに助けてもらえてなかったらあのまま……」
「殺されていたかもしれません」
萌莉と美伊は、翔也に礼を告げる。
エアバイクはあっという間に卯月家付近に到着した。着陸したバイクから降りた萌莉と美伊は翔也に声をかけた。
「翔也さん、あの、教えてほしいことが……」
「私も……」
「うんうん、さっきの奴が何者か、とか、このスキルは一体何なのか、だろ?」
「「はい」」
ふたりは同時に返事をした。
「ズバリいうと……」
萌莉と美伊は、ごくっと息をのんだ。
「俺もわかんないんだな、これがっ!」
翔也は頭を掻きながら照れくさそうにふたりを見た。
「「えええええええ」」拍子抜けするふたり。
「まぁ、今、俺が分かっている確かなことだけ伝えておくとだな、アイツらは敵だってこと。そして、かつて俺が闘ったAI暴走事件のときとバトル仕様が似てるってこと。ただ、そのときとの決定的な違いは、バトルでケガをしたり死んだりする可能性があるってこと、だな」
「AI暴走事件?」
「やっぱ死ぬこともあるんだ……」
ふたりとも怪訝な顔をしている。
「さらに、ここからは推測なんだが、萌莉ちゃんと美伊ちゃんも、そのAI暴走事件に何かしら関係していたはずなんだ。能力者はAI事件関与者じゃないかと俺は推測してるから」
「AI暴走事件っていうものに私たちが関わっていたということ?」
「私には心当たりがございません」
「そうか。俺の推理が外れてるかもしれないから、それならそれでいいんだ。それより、今、ふたりがスキルを使える能力者であって、敵に狙われてるっていう事実を受け入れないとな。その上で、どうしていくか考えた方がいい。まずはバトルに慣れること、そしてできるかぎり仲間を探すんだ」
「「仲間……」」
「これも仮説なんだが、何の因果か、君たちも俺も月の異名が苗字だろ? AI事件に関わった中で、他にも三人、月の異名を苗字に持つ者がいてさ。ただの偶然だと思うかい?」
「あっ! そういえば……同じクラスに……」
「何人かいましたわ……」
「まぁ、確信があるわけでもないから慎重にな。だれかれ構わず今日のことは話さない方がいい。 俺は今から約束があるから、とりあえず……」
翔也はバイクに乗ったまま、極薄端末を出してふたりの前にかざす。
「俺の連絡先を送っておいたから、また何かあれば遠慮なく連絡してくれ!」
すがすがしい笑みで別れの挨拶をする翔也にふたりは深々とお辞儀をする。
「「ほんとにありがとうございました」」
「じゃ、またな!」
右手を挙げて別れを告げた翔也は颯爽とエアバイクで飛び去っていった。
翔也の姿が小さくなるまで見送るふたり。
「すっごく……かっこいい……翔也さん」
「ですよね……萌莉さん……」
「……美伊ちゃん、さっきのバトル、ほんとに怖かったけど、逃げちゃダメな気もするのよね」
「私もですわ。デジャヴ……でしたっけ?」
「そうそう。私も感じた。よく思い出せないけど……」
「あのバトル……初めてではない気がしましたわ」
「うんうん。私も。それに……翔也さんと過去に会ったことがあるような気もするし……」
「私も初対面ではないような……話しているだけで元気がもらえる人……」
「あっ!!! 美伊ちゃん!!! 門限!!!」
「あああ、ま、まずいですわ」
「とりあえず、今日は帰ろう! 明日も一緒に学校いこうね! バイバイ」
「もちろん! では」
ふたりはそれぞれ自宅へ向かった。
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今後ともよろしくお願い申し上げます。次話は一週間以内に更新したいと思いますm(_ _)m
◇語句・スキルの解説です。
火に油を注ぐ……さらに勢いが増すこと。
ここでは、火力をアップさせるスキルのこと。
火の海……一面、炎をあげて燃えていることのたとえ。
ここでは、詠唱者のイメージする範囲を火炎で攻撃するスキル。ただし、面積が広くなるほど火力は弱まり、逆もまた然り。スキルの一般的な威力の強弱についてはまだ謎に包まれている。
銀世界……あたり一面、雪が降り積もって真っ白になった景色のこと。
ここでは吹雪を生じさせ、あたり一面に氷の攻撃をする(=凍らせる)スキルのこと。
以上です。
次話は一週間以内に更新したいと考えていますm(_ _)m




