#13 第12話 お弁当、お弁当、嬉しいなぁ~♪
不定期な上に深夜の更新となって申し訳ないですm(__)m
ずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方もありがとうございます! いいね、感想、ブクマ、評価してくださった方々、感謝していますm(_ _)m
翌日のお昼休み──。
入学して三日目にして、初めて学校で食べる昼食。クラスメイトたちは仲良くなった者同士で各々グループをつくって机の上にお弁当を広げている。
カリンは隣の席の梅佳と昼食を取るべくカバンの中から、久愛の作ったお弁当を──といっても、この時代は食材を入れてワンボタンで完成するAI特製弁当なのだが──満面の笑みで取り出した。
そのとき、ふたりの少女がカリンたちの席に近づいてきた。
「弥生さん、水無月さん、よかったらお昼、一緒にたべない?」
明るく声をかけてきたのは、銀髪をツインテールに結ったかわいい少女。両方とも鮮やかなブルーのリボンでとめている。瞳はシルバーとブルーの混色だ。
「私は如月萌莉。一緒にたべようよ~」
萌莉のとなりにいる少女はセミロングの髪も瞳もピンクで、清楚な雰囲気の少女だった。
「私は卯月美伊といいます。よろしくね」
「わらわはかまわぬぞ」
「あたしもいっしょに食べたいにゃ」
「じゃぁ、決まりね。美伊ちゃん、こっち座って」
「はい」
萌莉と美伊はカリンたちの前の椅子の向きを変え、萌莉がカリンと、美伊が梅佳と向かい合うように席に着いた。
各自がお弁当の蓋を開くと、萌莉が全員のお弁当を順に覗いていく。
「やっぱり思った通り。水無月さんも弥生さんもかわいいお弁当! Wooferのキャラ弁!」
旧時代に流行したキャラ弁も、この時代はAIが作る。予めデザインを入力して、必要な食材さえセットすれば、あっという間にデザイン通りのお弁当を作ってくれる。
Wooferとは数年前から流行しているキャラ育成ゲームのことで、精巧な3Dホログラムのキャラクターを育てるゲームだ。そのためキャラ弁で使われるデザインでも人気ナンバー1なのだ。
「わらわは興味ない。流行りの設定にしたら、これが勝手にできあがっておっただけじゃ」
「あたしは久愛姉にゃに、かわいいの作ってってお願いしたにゃ」
「お姉さんが作ってくれるんだ!」
萌莉の言葉に一瞬カリンはとまどいつつ、おもむろに答える。
「い、いとこにゃ……」
「いとこのお姉さんがお弁当を作ってくれるのですね。素敵ですわ」
美伊はまるで良家の令嬢のような、品のある口調だ。
「うらやましい! 私は自分で作ってる」
「わらわも自分で作っておるが、作るっていっても、ボタンひとつか、一声で済むではないか。たいそうなことではない」
「そうなのにゃ……みんなすごいにゃ」
「あ、私は家事使用人が作ってくれます……」
「家事使用人って、AIの、だよね?」
萌莉は美伊の方を見ながらたずねる。
「い、いえ。私の家にはAI執事もAIメイドもいませんわ」
「すごい!!! 美伊ちゃんの家、金持ちなんだ!」
「そ、そんなことございませんわ……」
「いや、このご時世、生身の家事使用人がおる家は国民の0.1%ほどじゃ。そなたはれっきとした富裕層じゃのお」
──そういえば……久愛姉にゃの家にはAI執事がいたはずにゃ……。なんだったっけ、AIサツキだったか……にゃ……。
カリンは人型で目覚めてからAI執事を見かけていないことを思い出した。
「にしても……弥生さんも、美伊ちゃんもバスケうまかったねぇ」
「いえいえ、私なんてとんでもない。弥生さん、ほんとにお上手でしたわ」
「そなたら、クラスメイトのよしみじゃ。わらわも下の名で呼んでもよいぞ」
「いいの!? 梅佳ちゃんでいい?」
「あ、あたしはウメたんと呼んでるにゃ……」
「水無月さんはカリンよね?」
「そうにゃ」
「じゃぁ、梅佳ちゃんとカリンちゃんで!」
「くるしゅうない。わらわはそなたらを、萌莉と美伊と呼ぶぞよ」
「梅佳ちゃんて、平安時代の貴族みたいな話し方ね」
「そうか?」
「あたしは、萌たん、美伊たんと呼んでいいかにゃ?」
「もっちろん! 『たん』って、カリンちゃん、かわいい話し方するよね」
「そうにゃ?」
──やっぱり「にゃ」をつけたり「たん」をつけたりしない方がいいのかにゃ……。
カリンは一昨日まで猫だった自分の感覚がクラスメイトたち──つまり人間とズレているのではないかと気が重くなる。
「うんうん、かっわいー! ねぇ、美伊ちゃん」
「私もそう思いますわ」
「そうにゃ!? ありがとにゃ」
ほっと胸をなでおろすカリン。4人は談笑しながらお弁当を楽しむ。
「梅佳ちゃんて、中学はバスケ部?」
「いや、クラブ活動なんぞしておらぬ。昨日が初めてじゃ」
「えええええええ」
萌莉は思わず声を上げた。美伊も目を丸くしている。
「初めてであのプレー? うそ!? 梅佳ちゃんて運動神経すごすぎじゃない?」
「ウメたんはすごいにゃ。昨日もバトルで敵をあっという間に……」
「カリン!」
梅佳は大きな声をあげた。
──あっ! バトルの話はしちゃダメだったにゃ……。
久愛からも梅佳からも、バトルやスキルの話は口外しないように釘を刺されていたカリンの顔は青ざめていた。萌莉はしばらくカリンを見つめてから切り出した。
「やっぱり……昨日の放課後、何かあったの?」
「やはり、そなた、昨日校門付近でわらわを見ておった者じゃな?」
「そうそう。気づいてたんだね、梅佳ちゃん。声をかけようと思ったんだけど、すぐ梅佳ちゃん学校内にもどったよね?」
「そのとおりじゃ」
「その後、端末を見たら、クラス全員下校済みになってて、あれおかしいな?って」
カリンと美伊はふたりの話を真剣な眼差しで聴いている。
「それは端末の不具合じゃろう」
「ん……ふたりだけ不具合? 私たちのデータは正常だったよ」
「はて、わらわには何のことか……」
「その後、ふたりで校舎から出てきた時、ふたりとも暗い表情でそそくさと校門から出てきたのも見た」
「ぬ……」
「何があったの?」
「おぬし、なぜにそこまで気に掛けるのじゃ?」
「ん……」
「おぬし……よもや敵ではあるまいな?」
梅佳の険しくなった表情とその物言いに気圧された萌莉はたじろぐ。
「え!? 敵ってまさか……」
「ぬ……」
「梅佳さんも、もしかしてだれかに襲われたのですか?」
ただならぬ雰囲気を見かねて美伊が率直に質問を投げかける。
「『も』ということは、そなたらも敵に襲われたのじゃな」
「梅佳ちゃんもなんだ……」
「私たちもですの……」
「萌たんも、美伊たんも、襲われた……にゃ?」
「そう。昨日の夕方ね。美伊ちゃんと寄り道した帰り……」
萌莉は昨日の顛末をカリンと梅佳に話し始めた。
最後までお読みくださりありがとうございます。ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、本当に感謝しております。かなり励みになっています。今後ともよろしくお願い申し上げます。




