#11 第10話 ど阿呆めがっ!
ずっと読んでくださっている方々も初めてお越しの方もありがとうございます!
いいね、感想、ブクマ、評価してくださった方々、本当に感謝していますm(_ _)m
カリンと梅佳はそそくさと校門をくぐりぬけ、駅へと向かう。
「ウメたん……先生は大丈夫かにゃ?」
「AI教師だから大丈夫じゃろう。われらは気にしなくても良いと思うぞ」
「そうにゃ……」
「ふぅ……にしても今日は大変じゃったが面白い日でもあったのぉ」
満面の笑みでカリンに語り掛ける梅佳。
「ウメたんと仲良くなれてよかったにゃ」
カリンは昨日に続き今日もつらい経験をしたが、梅佳との出会いによって心身ともに救われたのだ。
駅に着く直前──。
「カリーン!!!」と遠くから呼ぶ声が耳に入る。
「あっ! 久愛姉にゃ!」
「遅いから心配して探しに来たのよ! 寄り道してたの?」
久愛の後方には洸とアヤトもいた。
「敵に襲われたかと思ったが大丈夫のようだな」
アヤトがボソッと低い声で言うと、洸も「ひとまず安心だ」と胸をなでおろした。
「寄り道してないにゃ、おそわれたにゃ……」
「「「えっ!?」」」
「英語のAI教師のシステムを乗っ取った敵とバトルになったのじゃ」
話に割り込んだ梅佳とその言葉に洸たち三人は目を丸くする。
「え、AI教師が?」
「あ、あなたも? スキル発動できるの? えっ!? カリンもバトルを?」
「ウメたんに助けてもらったにゃ」
「そうなの!?」
カリンの言葉を聞いた久愛は梅佳の方を振り向く。
「あなたが……ウメたんさん?」
「人に名をたずねるなら、まずは自分から名乗るのが礼儀じゃ」
「あぁ。ごめんなさい。はじめまして、カリンのいとこの皐月久愛です」
久愛は隣にいる梅佳にお辞儀しながら自己紹介をする。
梅佳は刹那、久愛に見惚れてしまうが我に返って問う。
「そなたらは上級生か?」
──こいつ、話し方、偉そうだな……。
アヤトが少し不満げな表情を浮かべると、それを察した洸がごまかすように答えた。
「あぁ、そうだよ。高二だから1学年上になるね」
「さようか。まぁ、カリンの知り合いならくるしゅうない、ウメたんでよいぞ」
「あはは、じゃぁウメたんと呼ばせてもらうよ。僕は葉月洸乃介でこちらが神無月アヤト」
洸は険悪なムードにならないようアヤトの紹介までしたが、アヤトは梅佳に問いかけた。
「お前もスキルが使えるのか?」
「そうじゃ」
「いつから?」
「今朝からじゃ」
「今朝から発現したスキルをもう使いこなせるのか?」
「わらわにすれば容易いことじゃ。量子AIによるシステム解析じゃ」
「量子AI? お前、そもそも人間なのか?」
「あたりまえじゃ! 失礼な男よのお!」
ヒートアップしつつあるアヤトと梅佳のやりとりにカリンが割って入る。
「アヤトたん、あのね。ウメたんはテストも満点だったし、バスケも一番うまかったし、バトルもめちゃんこ強かったのにゃ。ウメたんがいなかったらあたし……」
涙目で訴えるカリンの姿をみて、アヤトも梅佳のおかげでカリンが助かったのだという事実をようやく受け入れた。
「梅佳ちゃん、ごめんね。私たちも今朝襲われて大変だったから警戒心が強くなっちゃってて。カリンを助けてくれてありがとね」
久愛の言葉に洸も続ける。
「僕なんて、マジで右腕、ぶった切られたからさ」
洸の右腕を一瞥した梅佳が続ける。
「ということは、回復系スキルで治したのじゃな?」
「そうそう、久愛に治してもらったよ」
「三方とも無事だということは、敵も倒せたということか?」
「いや、逃げられた」
アヤトがぶっきらぼうに答えたのにすぐさま洸が続けた。
「警察官が来たと思ったらすぐにいなくなったんだ」
「私たちの話をまったく信じてくれなかったんだけどね、その警察官」
「む……ということは、そなたらはKAYAシステムを発動させなかったのじゃな」
「「「KAYAシステム!?」」」
「そうじゃ、空間をイメージして『カヤ』と唱えるだけでよいぞ。イメージさえできておれば、『フィールド』などでも大丈夫じゃ。バトルフィールド内は異次元空間になっておる。外とは異なる時間が流れているようじゃ」
「梅佳ちゃん、どうしてそこまでもう知ってるの?」
久愛は驚嘆して声を漏らした。
「わらわに不可能はないのじゃ」
「じゃぁ、どうしてこんなスキルが発現したんだ? 何が起こってる?」
アヤトが突っ込むとギクッとした梅佳がしどろもどろになる。
「わ、わらわにも、わ、わからぬことが、たまに、まれに、少しは、あ、あるのじゃ……」
顔を真っ赤にしてうつむきながら答える梅佳にカリンからの助け船が入る。
「ウメたんは、あっという間に倒してくれたのにゃ!」
「そ、そうなんだ。カリンの命の恩人。梅佳ちゃん、ほんっとにありがとうね。これからもカリンをよろしくね」
「く、くるしゅうないぞ」
久愛の顔をちらっと見た梅佳は赤面しながら視線をそらした。
「ウメたん、よろしくにゃ」
すると、アヤトが切り出した。
「今から試すか?」
「うん、公園でKAYAシステムを試そう」
「そうね、私も賛成」
「カリンも行くにゃ。ウメたんも一緒に行くにゃ」
「わらわには訓練など不要じゃ」
「行こうにゃ」
梅佳は自身の右手をぎゅっと握って見つめてくるカリンにとまどいつつ言葉を返した。
「そ、そこまでいうなら、し、しかたないの。つきあってやるのじゃ」
「やったにゃ」
5人は駅近くの公園へ移動する。
「梅佳ちゃん、お手本、お願いします」
「よ、よかろう」
梅佳は公園の中央に立ち、地面に向けて右手をかざす。「KAYA」という発声の直後、梅佳の右掌に紅色の光が灯る。
すると、五人を囲むようにバスケットボールのコートくらいの長方形が描かれる。その四辺が光ると即座にその頂点から縦にも光が走り、直方体を描いていった。側面が薄い霧のようにうっすらと白みがかかる。3メートルは優に超える高さなので人目に付くはずなのだが通行人は誰も振り返らない。
「にゃにゃ」
「中にいると分からないわね」
そういいながら久愛はカリンといっしょに描かれた直方体のフィールド外へ出てみた。
「うわ、洸もアヤトくんも見えなくなった」
「向こうは透けて見えてるにゃ」
「なるほどな、これなら大きな騒ぎにはならないよな」
外のふたりに返事をするアヤトを梅佳は鼻で笑った。
「そなたの声は外には聞こえておらぬわ。音が漏れるなら一般人にも聞こえるじゃろう、このど阿呆めが」
「ちっ」
──こいつ、やっぱきらいだわ。
舌打ちするアヤト。
「これで敵をゆっくり誰にも邪魔されずに嬲り殺せるというわけじゃ」
梅佳は不敵な笑みを浮かべた。
最後までお読みくださりありがとうございます。
ブクマ、評価、いいね、感想をくださった方々、この上なく感謝しております。
励みになっています。今後ともよろしくお願い申し上げます。
次話、第11話 喪失感 は明日27日に更新予定です!




