第一話
第一話 開戦
ここは地球よりも少し進んだ文明を持つ別の惑星。各国はパワーバランスを安定させ、大きな戦争も無く、平和なときが流れていた。
そんな中ある男が、一つの勢力を作り上げる。
海賊対処活動を国連の承認で代行する民間武装組織
APF【海賊対処軍】だ。
それらは運輸企業を含めた各国の様々な企業からの支援を受け、近代兵器を積極的かつ効率的に使用し、傭兵部隊としての高い信用を確立した。
APFはさらに様々な中小企業を統合し、大企業をバックに据えることで、
ICA【国際企業連合】へと昇華する。だが、国際企業連合は軍備を拡張し、もはや一国の軍隊に相当する力を手に入れた。
そしてICAの巨大経済圏構想や、イリエル・マルクルによるICA国家化計画の暴走が、世界に新たな悲劇を招くことになる。
ボジル国 首都マラハエマ州
夜中、いや、朝方に閉まっているオープンカフェの空席に、スマホ片手にのんびりする男が一人。
「♪♪〜♪♪〜〜〜♪♪♪」
鼻歌を歌いながら、足を机にのせ、椅子を揺らす。
ゴォオオオオオオオオオオ
「何か音するな。」
その男は、天を仰ぎ編隊飛行する輸送機6機に目をやる。
飛行機はきれいな三角形の形をとり、悠々と空を飛んでいた。
「なんかイベントでもあるのか?」
そして輸送機の後ろから小さな光が、花火に火がついてから少しずつ勢いを増すように、どんどん飛び出していく。
その小さな光が空を覆い、夜明けの朝日と相まって幻想的な景色をつくりあげていた。
その男は自然とカメラを空に向け、写真を撮ろうとする。
「んっ?アンテナは?」
男の携帯にアンテナは一本も立っていなかった。
「おっかしーなぁ。」
朝方の肌寒さに体を震わせ、設定を確認する。
「公衆wifiがあるはずなんだが?」
まぁいいかっ。と男は設定を閉じる。
男は空を見やり、徐々に降下してくる光の線に見惚れる。
「本当にきれいだな。この空は。」
それが彼の最後の言葉だった。