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第20話:ノーブレスオブリージュ06


 旅も二日目。


 明日には山賊の現れるポイントまで行ける。


 つまり明日が本番。


 そのため今夜は英気を養うことになり、馬車鉄道の途中下車。


 とある村にて一泊することに相成った。


 が、村は寂れていた。


 理由は単純。


 山賊によって物流が滞っているからだ。


 商人が来ない以上、物々交換が行なわれず最低限の食料だけが村人の口に入る。


 村には当然ながら川が接しているため麦と魚は確保でき、この村に限って言えば山に接しているため山菜やキノコの類……あるいは野生動物の肉まで確保は出来るが逆に言えばそれ以上は無い。


 麦でエールを造ってはいるらしいが嗜好品はそれだけだった。


「まさかヴァイザー公爵様にグリューン公爵様がいらっしゃったというのにロクな御もてなしもできず申し訳ありません」


 カオスたちの泊まった宿の店主が恐縮した。


「気にしなくていいっすよ」


 ひらひらと手を振ってカオス。


 実際のところカオスたちには十分な贅を凝らした食事が与えられたが、その分の負担を村人が背負うともなれば心苦しくさえあった。


「大丈夫ですわ」


 根拠薄弱なカナリヤの言。


「この村の物流を止めている山賊は明日にでも成敗しますから。それが貴族としての義務。ノーブレスオブリージュですわ!」


「先の話を聞いていたのか」


 とカオスは突っ込みたかったが、


「無益だろう」


 と、


「…………」


 結局は沈黙を選んだ。


 野兎の肉を食べながら、


「やれやれ」


 と嘆息する。


 食事が終われば風呂だ。


「ではカオス様、入浴しましょうか」


「カオス兄様、とっておきの水着を選びましたよ?」


 いとも平然と有り得ないことを言い出すリリンとアイスに、


「待った」


 とちょっと待ったコール。


 ちなみにカナリヤである。


「リリン。アイス。あなた方はカオスと一緒に入浴するつもりですの?」


「当然ですが?」


「何を今更……」


「問う意味がわからない」


 とリリンとアイス。


「仮にも貴族なら貞節を意識なさいな!」


「だってリリンはカオス様の許嫁だし。子どもの頃から一緒にお風呂に入ってる仲だし。幼馴染だし」


「アイスはカオス兄様の妹です。一緒に入浴するくらい当然かと」


 やはり、


「意味がわからない」


 とリリンとアイス。


「カオス!」


「何でがしょ?」


「あなたは女の子を何だと思っているのです!」


「美少女に限り文化遺産だな」


 どこまでもマイペースだった。


「ていうか何でお前が怒るんだ?」


「それは……!」


「それは?」


「ともあれわたくしも一緒に入浴します!」


「なにゆえ~?」


「カオスが少女を傷物にしないための処置ですわ!」


「信用ないな」


 当たり前だが。


「別にカオス様が手を出してもリリンには問題ありませんよ?」


「アイスも同じく」


 ちなみにアイスはカオスの実妹である。


 そんなことを重視するはずもない兄妹だったが。


 ともあれ四人は一緒に入浴することと相成った。


 リリンとカナリヤはツーピースの水着。


 アイスがワンピースだ。


 カオスは、


「別に全裸でも構わんがなぁ」


 などとぼやいたが、


「ふざけるんじゃありませんことよ!」


 とカナリヤが激昂し、


「カオス様のは……ねぇ?」


 とリリンが言葉を濁し、


「ちょっと乙女にはショッキングです故」


 アイスが本質をつく。


「むぅ」


 と不本意なカオス。


「可愛いだろ?」


 そんな説得力の無い言に、


「カオス様は自覚が無いから困ります」


「ですです」


 リリンとアイスが反論した。


「そんなにカオスのモノはすごいんですの?」


 とカナリヤ。


 その頬は湯当たりとは違う意味で紅潮していた。


「うん」


「です」


 躊躇いが無い許嫁と実妹だった。


「失礼な」


 ムッとするカオス。


 水着を着用してるが故にブツは見えないが、


「人並みだ」


 と主張してやまなかった。


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