表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/34

第10話:鬱だ。詩能。04


 カオスとリリンとアイスが風呂に入った後、キングサイズのベッドでセロリを加えた四人は寝ることになった。


「お休みなさいませ。良い夢を」


 そう言って使用人が明かりを消す。


 まだまだ春の夜は涼やか。


 掛布団にくるまる四人ではあったが、


「むぅ」


 リリンが呻き、


「むむ」


 アイスが呻き、


「お兄ちゃん……その……」


 セロリが狼狽える。


 さもあろう。


 カオスはセロリを抱き枕代わりにしているのだから。


「カオス様……」


「御戯れはその辺で……」


 左右から聞こえる抗議をカオスは表面的には無視した。


 ローズオイルの香りがする。


 セロリからだ。


 使用人は良くセロリに尽くしてくれたらしい。


 それを認識するカオス。


「お兄ちゃん……?」


「何だ?」


「お兄ちゃんは……セロリで……いいの……?」


「ちんまい子じゃないと抱いて楽しくないしな」


 ちなみに身長順は高い方からカオス、リリン、アイス、セロリだがカオスとリリンにはあまり差がなく、リリンとアイスもまたあまり差が無い。


 必然、


「一番ちんまいセロリがいい」


 という結論になる。


「カオス様は……」


「ロリコンですか……」


 リリンとアイスの合体攻撃。


 しかしてカオスは、


「そのケは無いがなぁ」


 あっさりと回避する。


 そもそも論として子どもに欲情できない思考だ。


「可愛いは正義」


 だが、


「ロリコンである」


 ことには繋がらない。


 愛玩に近い感覚である。


 カオスがそう言うと、


「ならリリンでもいいじゃないですか」


「アイスでも構いませんよね?」


 そんな反論。


「だってお前らちんまい子じゃないし」


 犯罪臭漂う言葉が返ってきた。


「むぅ」


「むむ」


 呻く許嫁と実妹。


「お兄ちゃん……」


 これは言わずもがなセロリ。


「詩能を教えてくれるんだよね……?」


「任せろ」


「虐めから庇ってくれるんだよね……?」


「任せろ」


「セロリは……ここにいて……いいの……?」


「当たり前だ」


 一瞬の躊躇もなくカオスはセロリの味方となった。


「えへへぇ……」


 セロリは笑う。


 虐めから解放された安堵感と未来への展望に相好を崩した。


 闇夜でありながら、その笑みはカオスにたしかに届いた。


「やっぱりセロリは敵だ」


 改めてそう思うリリンとアイス。


 言葉にするほど不注意ではないが。


 何よりリリンとアイスはカオスの本当を知っている。


 これ以上の詩能の師は存在しえないだろうことはアイスの『アブソリュートゼロ』で証明されているも同然だ。


 シビライズドリミッターに左右されない思想の自由。


 それがカオスにあることを二人はよく知っているのだ。


 だからこそセロリが大成することも疑ってはいない。


 問題は、


「愛玩で済むかですね……」


「入れ込み過ぎなければいいのですが……」


 という結論に収束する。


 思念の中でのことだが、


「むぅ」


「むむ」


 リリンとアイスは何より深い意識共有をしていた。


 それはともあれ、


「お兄ちゃん……」


 セロリはカオスに距離を縮める。


「何だ?」


「何の詩能を……教えてくれるの……?」


「まぁ高望みしてもしゃーないし俺の攻性詩能で一番無害な奴だな」


 それがカオスの答えだった。


 一番無害な攻性詩能。


 それはあくまでカオスとしては、である。


 セロリが知る由もなかったが、


「カオス様……」


「カオス兄様……」


 リリンとアイスは全てを察しえた。


 それでも言葉にしない辺りの分別はあったが。


「じゃ……明日から……よろしくね……お兄ちゃん……」


「任せとけ」


 そう言ってカオスはセロリをギュッと抱きしめる。


 寝落ちするのにそう大した時間はいらなかった。


 結局本人の宣言通りカオスはセロリに何をするでもなく眠りについた。


 リリンとアイスは、


「あれ? 自分は恋敵に嫉妬する道化?」


 と自問自答していたが、


「ん……お兄ちゃん……」


 セロリはカオスの抱擁に包まれて寝落ちした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ