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変哲ない日々

 現代で死に、異世界へと転生をしたユウナ。

 青いスライムと遭遇したり、いきなり教会で目覚め世界について矢継ぎ早に説明されたり、騎士が住まい仕事する役所で急に剣を突きつけられ挙句は赤い蕾を差し出されたり、とその初日は目まぐるしい事ばかりで合った。

 どれも新鮮で、感覚の処理が間に合わない事ばかりで合ったが結局は異世界へ住むには問題なく事が進んだと言うことになっている。

 この世界ではユウナは異人に分類され、本来は隔離や監視など処遇が厳しいものだったが転生された先が良かったのかレヴィア教会と呼ばれる教会にて引き取られることになった。そのことは世界の治安を守る役目の聖十字騎士団、団長お墨付きである。

 とにかく、恵まれた状況での異世界転生。

 そんな初日から、すでに二ヶ月を経過しようとしていた。

 何事もなく、と言うと語弊がある。それは勿論、異世界であるからユウナにとって目新しい事の連続であることは間違いない。

 教会で魔法を習うことも、精霊について詳しく勉強することも、騎士のヒエナから剣術を鍛錬されることも、どれもが新鮮で飽きる事のない日々だ。

 魔法は悪態の目立つシスターのナミエから、教会の孤児に混じって教えてもらう。ユウナは魔法の才能がないのか、誰でも使えると言う基礎詠唱魔法でさえ一つ唱え使えるまで一月以上かかった。かかった割に覚えた魔法は小さな灯火を指先に灯らせるだけの魔法で、それが使えるだけでも異世界感があって嬉しいことではあった。

 精霊術は、実際に精霊を従え、術を使うことを主とする。精霊召喚をするには資格や許可が必要だと言うことだ。だが、精霊を使役してなくとも、精霊術は使える。

 そもそも精霊術は微精霊を源にした力だ。生物内にある魔力と違い、微精霊は世界に散らばっているものである。それを糧にすることが術の使用に繋がる。

 そのため精霊を召喚しなくとも精霊術を使う事はできる。矛盾した話だが、微精霊は精霊から発生するものなのだ。国は精霊の加護を受けているのがほとんどだ。その精霊の存在が本来精霊を召喚して行使できる術も召喚を行わずに行使できるという状況が出来上がっているのである。

 ただ精霊を召喚し使役するのが精霊術の原則だ。そもそもの精度も大きく違い、術士と認められるものではない。

 精霊術についてはそう教えられた。教えられる際、教会内で精霊術をまともに扱えるのは教会の聖母、アリアだけであり彼女が教鞭を取った。が、アリアは術の具体的な使い方を教えてはくれなかった。その理由が行使の難解さゆえのことだった。

 ただユウナだけ特別なことを教えられた。ユウナは精霊と分類されユウナ自身から微精霊が漏れているという。それを活用するには精霊術士と契約を結ぶ必要があるということだ。

 微精霊を扱うことが精霊術の根幹である。その領分は精霊術士にあり、精霊自身がそれを自覚し扱うことはまずない。精霊が精霊術を扱うには術士との契約が必須なのである。

 無論、精霊自身にも独自の力を持つがユウナの場合じゃ未知数と言ったところだ。ユウナは召喚によってここへ来た精霊でないために、精霊としての自覚も希薄で力の領分を把握できていないのだ。

 その自覚にも術士との契約が必要だという。難しい話、その相手は誰でも良いわけではない。

 術士は、召喚を通して精霊を使役するのが主だ。その相手は一生付き従うものであるわけで、適当な相手を選んでいるわけではないのだーー無論、ユウナのような非正規の精霊と契約を結ぶことはできるがそれなりのリスクを伴う。召喚と違い術士の相性が不明瞭、それがリスクを生んでいる。

 そのリスクについて、アリアは教えてくれなかった。非正規の精霊と契約する術士自体少ないから、と理屈を捏ねたのである。

 精霊は契約やその関係が重視される。それを軽んじてはいけない。精霊術について教えてくれたアリアは最後にそう強く告げた。彼女の気迫もあって、ユウナは心に深く刻むのだった。

 いつかは自分の前に術士が現れるのだろうか。そうしたら、精霊術を使えて自分の中にある力とやらに目覚めるのだろう。

 リスクとやらも気になるが、精霊としての力の方の期待が先行していた。

 だが、ワクワクする気持ちもあったが、不安な気持ちもあった。両面の気持ちを携えていた。

 この異世界に来て、今後の所在がそこにあるような気がしたのだ。

 期待と不安に思いを馳せて経過した日々。ユウナは変哲ない日々を過ごしていたのだった。

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