ユウナの異世界生活
ユウナの目が覚めてから唐突に教会の案内と説明を受け彼女自身理解したことをまとめると。
一つ、この世界は精霊と魔法の二つの異能があるということ。
二つ、世界は七つの国があり、それらは精霊の加護によって守られているということ。
三つ、世界を律するのは、騎士と精霊術士と魔術士の三つの役職だということ。
平たくまとめると、その三つに帰結する。他にも国内の施設など多くのことを一挙に説明されたが、ユウナが理解したのは特に目新しい事柄に限った。
ユウナの知る現実とは違うファンタジーな部分を、特に興味を持った。その他の部分は説明する本人もユウナの興味なさを理解したようで、のちに詳しく教える部分だからだと深くは言及しなかった。
ユウナが目覚めて、教会内を散策し説明するまでの経緯はもの三十分ほどのことだ。ナミエは一通りを終えて、教会の敷地内にある南に位置する建物方へとユウナを連れて向かった。
さて、教会の敷地にある建物は三つある。一つは本堂であり、客人を迎えお祈りを捧げる場所。二つ目は、学堂と呼ばれ主に孤児や信徒に教育を施す場所にしている。最後に、宿舎。その名の通り孤児や教会で勤める信徒やシスターの居住する場所だ。
建物に絞って話したが、他にも裏手に荷車や馬車、馬小屋なる場所や、倉庫など施設は多岐に渡る。一概に、教会といえど、ユウナが想像していた教会とは全く違う考えられた施設なのである。
宿舎に向かった二人は入り口で、ふと足を止めた。
「今日はここまでです。わからない事はありますか?」
わからない事はたくさんあったが、ユウナはそれらを飲み込んで首を振った。
「ま、生活していけば慣れていきますよ」
ナミエはもっともなことを言う。
「ねえねえ、私にも精霊とか魔法とか使えるのかな?」
ユウナは不意に思いついたことを口にする。
突拍子のない疑問に、当惑を示しながらもナミエは呆れながら答えてくれる。
「学習次第では使えるでしょう。とはいえ、精霊も魔法も向き不向きが」
「やったー」
話を最後まで聞かずに喜ぶユウナ。せっかく異世界に来たのだから、それらしいことはしたい。異世界ものでは転生したもののその世界の技術を習得できなかったりするものも多い。まだ習得出来てるわけでもないのに、ユウナは喜びが先行した。
そんなユウナを流し目で呆れるナミエ。ナミエは小さく息を吐いて、話題を変えた。
「……お前は楽観的だな」
ユウナは首を傾げて返答する。
「そうかな?」
「私にはそう映る。異人は戸惑い狂うのがほとんどだと聞くからね」
彼女の言葉に最もだと思った。いきなり異世界の草原に飛ばされて、疑問、疑惑が浮かばないはずがない。
ユウナは、予め異世界の知識を空想ではあるが持っていたし、何より持ち前の性格が順応する姿勢に貢献している。
ただ彼女の言葉を訂正すると楽観的とは間違いではあるが。
「街見てまわってもいいかな?」
刹那の沈黙を嫌ったユウナは話題を変えた。
少し考え、ナミエは言う。
「いいけど、あまり遅くならないで。お前は異人なのだから」
「やったー、じゃあ行ってくる!」
「ちょっと、ユウナ! はあ、全く自由というか。私が聞いていた異人と違う……」
ナミエの制止も聞かず、ユウナは教会外へと走り出して行った。
深くため息を吐くナミエを近くで見ていた人が小さく笑った。
「もうママ、いいのあれで?」
ママと呼ばれる人は優しげな眼差しでユウナを見送って、そのままナミエの方を向いた。
「いいんじゃないかしら、きっとあの子は良い子よ」
「能天気なんだから……」
親の性格をユウナと重ね眉を寄せる。
鋭い瞳で項垂れるナミエと対照的に、聖母のような慈悲深い瞳のママと呼ばれた女性アリア。二人は同じ赤毛を持ってはいるが、瞳の形が対になっていた。
赤毛以外は似ていない親子。親子の見送りにも振り向かず、ユウナは心踊る気持ちを逸らせて異世界の街へと飛び出した。
教会を出て、初めて異世界の街の景色を目にすることになる。
異世界ものでは王道の中世ヨーロッパ風の街並み。煉瓦造りの建物が立ち並び、大通りとなる場所では露天が開かれ賑わいを見せている。
空想物の世界が目の前に広がり、思わず夢かどうかの確認に頬をつねってみる。痛みは感じる。ユウナは現実の異世界に立っているのを自覚した。
ユウナ的には、露天を物色して回ってお金さえあれば買い物を楽しみたいところだけど見物に徹することにした。
きっとここのお金は、金貨とか銀貨とか現代でいう大昔の貨幣だろうし、異世界に来て初日で高望みするのも傲慢だ。
とかく、教会前の大通りを中心に街を散策することにした。
街を歩いていると、自分に視線が集まっているのに気づく。ユウナ自身、ここら辺の人と違う格好であるから、異世界転生特有の他と違う姿に皆珍しく見ているのだと理解する。
金髪で藍色の瞳、格好は元の世界でいう学校制服だ。ネイルはしていたはずだけど、付け爪は剥がれており淡い紅色のマニュキアだけ残っている。特筆して言うべきはそれくらいで、付けていたネックレスやピアスも無くなっていた。
装飾品が無くなっているのに気づいて、少し気持ちが沈んだがすぐに気持ちを取り戻す。
浮き沈みが激しいけど、結局前向きになれるのが彼女の美徳であるのだ。
大通りを突き進んでいくと、とても大きな建物に出会す。
その大きさは先ほどまでいた教会と同じくらい。教会と違うところは、その構えがまるで城のような作りだと言うことだ。
「でかっ」
思わず在り来たりな感想が口を突いた。
そうやって見惚れて見上げていると、ユウナを不審に思った男が声をかけてきた。
「君、役所に何用だ?」
「へ?」
唐突な呼び声に、呆気を取られ振り向くと全身装備で固めた男が訝しげにこちらを睨んでいた。
長槍を片手に持ち、役所の門前を守る兵だ。ユウナは物珍しくジロジロと興味ありげに見ていると、相手の男は呆れて言い放つ。
「用がないなら帰れ。ここは観光する場所じゃない」
どうやら観光客か何かと勘違いしているようだ。ユウナは苦笑いで答えながら、長居すると目敏く言及するに違いないと思い役所だという場所から離れようとする。
「ん? 君は?」
離れようとした時、門から人が出てきた。出てきた人から気づいたように声をかけられる。
振り向くと、パッとユウナの顔色が明るくなる。物珍しいものは散々見たが、こうも異世界らしいもの目撃してユウナは心浮きだったのだ。
そこには猫耳だか犬耳だか、獣耳を生やした女性がいたのだから。
「そ、それ本物っ?」
獣耳の女性よりも早く近づいて、獣耳を指差して言う。
「本物って、当たり前だろう……」
積極的な姿勢に当惑しながらも答えてくれる。
「おい! コルベリナ様に不躾な態度をしおって!」
兵の男がユウナの態度を軽視するわけもなく、長槍をユウナに向けた。
「うわっ、ご、ごめん」
と、態度を翻すがコルベリナと呼ばれた獣耳の女性は兵の男に一瞥していった。
「いい。この子は私の知り合いだ」
「そ、そうですか……」
兵の男は不服そうに顔を歪めたが、彼女の手前か元の位置に戻った。
「すまないな」
コルベリナは礼儀よく頭を垂れて謝辞を述べた。
一見幼げな顔つきだが、凛々しい面差しが大人びた姿を深く印象付けさせる。そんな少し倒錯ぶりな面から繰り出される丁寧な姿勢に惑いながらも、首を振って答えた。
「私こそ急にごめん」
「そうか、ありがとう」
元はと言えば、ユウナの好奇心であるのに彼女はどこまでも低姿勢だ。
兵の男の態度を見ていればわかることだ。相手の女性は身分的に上の立場なのだろう。着ている服装からして、その違いは見て取れる。
装備は兵の男と比べ軽装ではあるが、装飾品の数や腰につけた剣が優美さを物語る。先ほどの男をただの兵だとして、彼女は騎士と語るに相応しい風貌を呈している。
気品ある彼女の態度に、今更緊張する。
「目が覚めたようだね」
「え? うん……」
思わず答えたが、その問いに些か疑問がよぎった。が、気には留めなかった。
「そうだね。ここじゃなんだ。中で話そうか」
そう言って彼女は役所の中に手招きしてきた。
不意に、兵の男の方へ視線が泳ぐが彼はやはり彼女に逆らえないようで目線を逸らしていた。
兵の男になんとなくお辞儀をして、コルベリナと呼ばれた獣耳の女性の後ろについていく。
門を潜ると、広々とした前庭が迎えてくれる。
ここだけでも教会の中庭の広さを悠々と越えている。デカい城作りの建物も、教会の敷地を優に越えていることだろう。
ここが役所である事は先ほどした事だが、役所がどう言う場所かはナミエから聞かされている。聞かされた全てを熟知しているわけではないけど、役所がどう言う役割かくらいは現代知識も相まって把握しているつもりだ。
現代と違うのは、役所を運営しているのは騎士という事。つまりは、目の前で優雅に歩くコルベリナという女性もその一人という事だろう。
「あのコルベリナさんって騎士なんですか?」
「そうだが……」
やはり、彼女は騎士だった。彼女は頷いた後に、少し悩んだフリをしていう。
「ヒエナでいい」
「ヒエナ?」
「ああ、どうも家名で呼ばれるのは慣れていない」
「はあ」
ユウナにはよくわからなかったが、ヒエナと名乗った女性騎士は難しそうな顔つきをしていた。
「そうだ。君、名前は?」
「私? ユウナだけど」
「ユウナか。異人とは聞いていたのとは違って、随分人のような名前をするんだね」
それはナミエにも言われた。
思わずムカついて頬を膨らませて抗議するが、ヒエナは微笑を浮かべた。
「ふふ、すまない」
「いいけどさー。異人ってのうちにもよくわかんないし」
ユウナは率直なことをいった。
「精霊の一端とは言え、異人は私たちも不明な点は多い。正直、対応に困っている部分もある。アリアに任せたが……」
と、彼女はこちらを見た。
ユウナは彼女が呟く言葉を全く理解せずに聞いているわけではない。異人が精霊の一端であることも、不明な存在だということもナミエから聞いていたことだ。もちろん、言葉だけを飲み込んでいるだけで合って精霊が何なのかわからないし、異人の解釈だってユウナの現代における異世界転生に即したものだと解釈している。
気難しいことは考えない。考えれば考えるほど、自分の内面がみえてくる。それだけは嫌だった。
「……役所なのに、なんていうかそれっぽくない」
不意に、内装を見た感想が口をつく。
「君は一体、役所にどんなイメージを持っているんだ……」
ヒエナが困惑気味にいった。
ユウナがそう疑問を抱くのも当たり前だ。彼女の知る役所はもっとごった返して、ごちゃごちゃとした空間というイメージだ。辺りに、書類やら案内板やらを複雑めいて置かれそれらを網羅するにも難解を示す場だ。どれほど行政や納税が複雑であるかは役所が呈しているとも言える。
さて、異世界の役所とくれば人通りも少なく。場所を行き来する廊下は吹き抜けになって、外装の景観で見た城のイメージと違いない内装をしている。
ヒエナ曰く、役所は治安と行政を担うそうだ。それらの役割は騎士だというが、外の兵の男のことを問うと、それらの雑務として雇う傭兵だという。
ユウナの知る言葉で分かりやすくするなら、騎士は公務員か官僚みたいなもので、傭兵は平社員かアルバイト、といったところ。ユウナはそう勝手に解釈した。
部署また窓口を部屋で分けて、人の圧迫感を軽減している。役所の広さゆえになせることだろう。現代じゃありえないことだと、異世界の広大さを実感する。
「ねえ、ヒエナは私に用があるんだよね」
ヒエナは役所内を紹介して回ってくれていたが、ユウナはその真意くらい察していた。それに、ヒエナが何者かも想像がついていた。
「ヒエナって私を見つけてくれた人、なんだよね」
「……ああ、そうだ」
ヒエナはすんなりうなずいて見せた。
ヒエナとユウナの役所散策の終着点は、人気のない中庭だ。
綺麗な紅色の木々が整然と立ち並び、その中央に石膏で出来た噴水が気味の水音を絶えず鳴らしていた。
しばらく、静寂に水音が貫く。
「私たちは見極める必要がある」
彼女はピクリと獣耳を揺らして凜然という。幼げな面をすっかり忘れてしまうほどの気迫があった。
当惑気味に首を傾げ、彼女の言葉を待つユウナ。そのユウナに、振り返ったヒエナから突如鞘から抜かれた剣先が向けられた。
突然見舞われる凶器に、ユウナは身を引かせて面を硬くした。
「異人が世界の味方か敵か」
「な、何それ……」
規模の大きな話に当惑を示す。
「それは治安を守る騎士としてではない。元来の意味たる騎士の使命としてだ」
ヒエナが向ける凛々しい眼差し。もはや、幼さ隠すその眼差しに、藍色の瞳は奪われる。が、ユウナは彼女の視線だけでない別の視線を感じ取った。
水音に混じってちらつく足音。四方から聞こえるそれに、ユウナは直感する。
いつの間にか、囲まれているようだ。
「ど、どうするの?」
いきなり首を跳ねられたり牢屋にぶち込まれたりすることはないだろうと軽視する。事の流れからして、ユウナの所在は教会にあるはずだからだ。
とはえい、ただならぬ気配にユウナは素っ頓狂なことを言えるはずもなく事の流れを見極めるに徹するしかない。
ヒエナの背後から静かな足音が近づいてくる。
敬服する彼女の隣を過ぎて、ユウナの前にそれは立つ。
高貴な装束を纏った人。顔は白と黒の混ざった仮面で覆いその表情は判らない。判ることは、その人は背に大剣を装備しており、その身なりからヒエナと同じ騎士。それも騎士の中でも階級の高い存在だということを感じた。
「これは報告に合った異人様ではありませんか。随分、奇異な格好をされているのですね」
「だ、だれ?」
白黒の仮面を被った男は胡散臭そうな声色でそう話す。ユウナが不躾に敬称なく問うと、一瞬空気が震えたが、彼は手でそれを制し言葉を続けた。
「申し訳ありません。騎士たるもの、また紳士たるもの。名を申してから話すのが筋というもの。ええ、私はアルバート=ファルメル=シエルでございます。以後、お見知り置きを」
彼が仰々しくお辞儀をすると、胸元の金飾りのロザリオが不敵にキラリと輝いて見えた。
「お名前を伺っても?」
白黒の仮面の上からキザな視線が貫いた気がした。
「ユウナ……」
胡散臭い相手に名を名乗るのに勿体ぶったが、答えないのもどうかと思いせめて顔をうつむけていった。
彼は頷いて言葉を紡ぐ。
「アンリムの蕾のような藍色をしたその瞳。藍色の瞳は遠い東の国の人の持つ色でね。珍しんだ」
刹那、彼からとてつもないプレッシャーを感じた。
「災禍の姫と同じ瞳。そうとも言える」
アルバートの声は恐れを込め発せられた。
災禍の姫。ユウナは世界を絶望に垂らしめた存在。そう認識している。教会の玄関に飾られている絵画を訊いた時に、ナミエから短く教えられたことだ。
「同じ瞳だったらどうするの?」
恐る恐る訊いてみる。詰まる空気感をいなす為でも合った。
「同じ瞳でなくとも、異人は隔離し監視するのが最善だ。他の国もそうした処遇を下すことが多い」
彼の言い様だと、ユウナ以外にも異人はいるということだ。それに、国によってその対応は違うらしい。
隔離だとか、監視だとか、その対応はかなり厳しく物騒だ。だが、ユウナは教会に引き取られた身。そのはずである。
どうして? と言った瞳を向けると彼は気づいて答えてくれる。
「ここは精霊術の学院があるのだ。異人が精霊の類であるから、その抑制となる精霊術士も駐在している。その為、ここでは異人の管理は甘い。レヴァン教会の存在、というのも一つの理由だが……」
彼は一呼吸を置いて続ける。
「我らは見極めなければならない。ユウナ、君が世界にとって味方となるか敵となるか」
ゴクリと息を飲む。彼の手が背に携えた大剣の方に伸びたからだ。
先ほどのヒエナのように、剣先を向けられると思ったのだ。もしくはそのまま貫かれるか。どちらにせよ、剣を前にするのは恐怖である。
心臓がドクドクと鳴る。血液が激しく流動しているのを感じる。逃げようにも、四方囲まれた状況じゃその選択は無謀だ。
思わず目を瞑ってしまう。すると、眼前の空気が震えた気がした。
また剣先を突きつけられたのかと思って、恐る恐る瞳を開く。途端に、鼻先に爽やかな匂いが広がる。ユウナの前に突きつけられたのは剣ではなく、赤い蕾を生やした整った枝だった。
「歓迎するよ、ユウナ。君が世界にとって尊き存在になることを願って」
「はあ……」
マジックでも見せられたみたいに呆気を取られ、大きな息が漏れる。向けられた赤い蕾を生やした枝を反射的に受け取った。
「そのアンリムの蕾が剣に変わらぬよう我らは見守っているよ」
キザなセリフを言い残し、アルバートはきびすを返しこの場を去っていった。
彼が中庭を抜けて、張り詰めていた空気が解ける。四方を取り囲んでいた騎士たちも散会し、残ったのは呆然とするユウナと安堵するヒエナだった。
「良かった……」
ヒエナはとても安心した様子でユウナのそばに近寄った。
「あの人、何……?」
困惑気味に、呆気から抜けてない状態でヒエナに訊く。
「王都ヴァルセイトを管轄する聖十字騎士団の団長だ」
「聖十字騎士団? 団長?」
あんまりピンとこないユウナは首を傾げた。少し考えた末、疑問を口にする。
「騎士って役所仕事が主じゃないの?」
聖十字という言葉から、まるで本来の騎士らしい所在だ。聞いていた内容と違い疑問したが、ヒエナは丁寧に答えてくれた。
「騎士は世界を守るのが役目だ。役所仕事はその一端、多くの騎士は宮仕えだったり王族の護衛や国の守護を任されている。それらを総括して管理運営を行なっているのが聖十字騎士団というわけだ」
「はあー」
騎士にも色々あるのだと納得する。
この世界に来て、まだ初日。情報は矢継ぎ早に入り込む。それら全てを咀嚼し飲み込めるものではない。だが、この世界の景観や為人に触れ異世界にいるのだという実感はある。
ユウナは神妙になって、今いる中庭を眺めた。
知らない実を生やした木。透明感ある石膏で作られた噴水。空を見上げれば怪鳥が遊覧している。新鮮な景色をそこらに広がっている。
これが異世界なのだ。
少しだけ過去が過ぎる。嫌な思い出、そして、残してしまった思い出。
それらを振り払うように首を振った。
ユウナはヒエナに向き直る。
「これからよろしく!」
ヒエナだけでなく、この世界に轟くように言った。