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異世界の始まり

 死んだら異世界に転生していた。確か由紀がよく読む本がそればかりの謳い文句だった気がする。

 優奈は唸りながらも、少ない異世界系小説の知識を想起させていた。

 色々な花々を萌える草原。天空では明らかに烏とか雀とかじゃないデカい鳥が遊覧していた。

 これだけでも、日本とは違う世界が広がっているのを確認できる。

 もう一度、頬をつねってみたりしたけど現実は変わらないようである。

「死んだら異世界行くってホントだったんだ」

 自分でもバカらしいことを言っているのは明白だ。だが、小説内の出来事が身に起こればそう言ってしまうのも仕方ない。

 感慨深く思ったところで、これからどうするか。という難題にたどり着く。

 しばらく、唸りながら由紀から借りて読んでいた異世界ものの小説の知識を引用する。

「確かスキルとかあるんだっけ?」

 いわゆるMMO RPG系の異世界にありがちなものだ。

「えーと、ステータス!」

 こう叫べば、自分の状況を確認できる画面が出てくるのを優奈は見た事がある。

 見た事があり実践したものの、寂しく風が吹き抜けるだけで空には何も浮かばなかった。

「言い方が悪いのかなー。じゃあ、プロパティ!」

 空がピタリと凪いだ気がした。

「これも違うのかあ。それじゃあ」

 次に思いついたのは魔法だ。

 ほとんどの異世界系にありがちだが、主人公は突然魔法が使えるものだ。

 なんとなく空に手を伸ばして広げ、それらしい呪文を呟いてみる。

「フレイム!」

 何もでなかった。

「アイス!」

 風も吹きもしない。

「サンダー!!」

 自然すべてが沈黙を貫いているようだった。

「…………」

 優奈までも沈黙する。

 苦い顔つきで、辺りを確認する。人目がないことを知って胸を撫で下ろした。

「魔法も使えないって」

 そう思ったが、チートやゲームみたいな異世界の他に、現実に即した異世界ものの存在を思い出す。

「ゼロからっていうやつかぁ」

 優奈はあまり現状を困難に思っておらず軽い口調が飛び出した。

 と、ふと足元にふわふわとした感覚がまとわりついているのに気づく。

 目線を下すと。青色の丸々とした生物らしきものが優奈の足元で懐くように寄り添っていた。

 いわゆるスライム的なものだろう。スライムと言うにはもっとネバネバとしてベチャついた生き物だと思っていたが、足元ですりすりと寄り添うそれの感触は毛触りのいい動物と触れているのと同じだった。

「なんか可愛い、かも?」

 そう思って、腰を下ろしてスライムらしき青い生物を抱き抱える。

「わっ」

 手で触ると、そのふわふわとした手触りのいい感触がさらに伝わる。

 胸元近くまで持ってくると、スライムらしき青い生物は甘えるような仕草で頬に自分の身体で撫で付ける。

 可愛らしい仕草に、優奈は次第に嬉しくなって自分からもそのスライムらしき青い生物を手で撫でてみる。

 見た目と反して、やはり体毛でも撫でているような感触。

 変なものだとは思ったが、ここが異世界だと思えばそう言うもんだと認識できた。

 しばらく、スライムらしき生物を触れ合っていると愛着が湧いてくる。その仕草は小動物そのものだ。見た目こそ知っているスライムと変わらない姿だが、愛嬌ある仕草に優奈はだらしない笑みをこぼしていた。

 名前をつけてあげよう。なんて、呑気なことを考える。

 そうしている内に、なぜだか眠くなっていて全身を倦怠感が襲う。

 苛まれるままに、優奈は草原の真ん中で倒れ込むようにして眠ってしまった。

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