第六話 漆黒の騎士が挑む
「このキザ野郎めっ!」
革命軍の中で手近にいた血気盛んな若者がまず漆黒の騎士へ斬りかかる。
戦士の剣など力任せであり、そこに技はない。
簡単に避ける事もできたが、余裕のある漆黒の騎士アークは妙案を思い付いた。
ガキンッ!
それは、敵の繰り出した剣撃を生身の掌で受ける事。
漆黒の騎士アークが魔力を十分練り、無詠唱で身体の表面に物理攻撃阻害の魔法を施した結果だ。
「何っ!?」
ここで驚愕の表情に染まるのは攻撃を放った若い革命軍兵士だけではない。
この戦場にいるすべての者がその異様な光景に着目していた。
「この、このっ!」
若い兵士は躍起になり、漆黒の騎士に追加で斬りかかった。
しかし、結果は同じ事の繰り返し・・・
ガキーン、ガキーン!
金属同士がぶつかるような硬質な騒音をまき散らして、手だけで全ての攻撃を防ぎ、漆黒の騎士が健全なままなのは明らか。
「このバケモノめっ!」
忌々しく睨む若い兵士。
これに対して漆黒の騎士アークは涼しい顔で応える。
「君の剣では僕を斬れないよ。諦めてくれ」
そんな余裕の姿が兵士の心を圧倒する。
この男には敵わないというイメージが一気に戦場全体へ伝染した。
これで目的は達したと、漆黒の騎士アークは拳を握る。
「君はしばらく寝て下さい」
できるだけ力を抑えて、若者の顔を殴った。
ボコッ!
それでも凄い音がして、若者の顔は兜ごと回転する。
そして、彼は糸の切れた玩具の人形のように地面へ横たわってしまう。
(大丈夫だ・・・首は折れてないから、気絶しただけだろう・・・)
アークは静かにその事実だけを確認すると、周囲に対して口を開く。
「無駄な争いは止めよう。君達では僕に勝てない」
しかし、それで「はいそうですか」とならないのが支配を受けた革命軍なのである。
「畜生ーっ! 全員でかかればっ!」
敵に恐れを抱かせる事に成功するアークであったが、支配を受けた者を完全に戦意喪失させる事はできなかった。
いろいろ諦めて、次の対処に切替える漆黒の騎士アーク。
自身に迫る複数の敵の剣の刃を素早く避け、矢は風の魔法で逸らす。
棍棒や戦槌の攻撃は先程と同じように物理攻撃阻害魔法で耐える。
全てを高速な技の連続で往なす漆黒の騎士。
そして、まだ剣を抜いてない。
それはアークの中で彼らが脅威となる事を認識していなかったからだ。
支配を受けた状態の自我の無い無駄な戦闘によって、命を無駄に飛ばす事が無いよう手加減をしている事も加味している。
これも圧倒的な実力差があるからできる事であり、かつての白魔女ハルの戦い方に似ているなと思ってしまう。
(なるほど、ハルはこんな気持ちで戦っていたのか・・・)
彼女は人間の性善説を信じている。
だから悪事を働くのは一時的に心が弱っているからだと考えており、必ず更生の機会を残しているのだ。
単に優しいから?・・・そうかも知れない。
しかし、それはハルが白魔女のような圧倒的な実力を持つからできる事でもある。
もし、自分の身に危険が及んだり、魔物など本能で戦いを挑んでくる場合にはその限りではない。
(それだけども、彼女はできるだけ『殺さず』を選ぶだろう。そこは尊敬できるな・・・)
ふとハルの事を思い出して、彼女の事を愛おしく想った。
ほぼ無意識にこの戦場でハルの姿を探してしまったが、さすがにここには居なかったようだ。
(研究所にでもいるのだろうか?)
列車砲の砲撃音も聞こえたし、研究所の職員達と研究所の居城に詰めている可能性が高いと考えた。
「何をキョロキョロしている。戦場では目前の敵に意識を集中しないと、怪我するぞ!」
不愉快の声が敵陣から聞こえた。
そちらに着目してみると、怒気を迸らすシュナイダーの姿があった。
彼と目が合うと同時に襲ってくる。
凄まじい踏み込みは身体を捩じるだけでは避けられない。
漆黒の騎士アークはここで初めて腰から魔剣エクリプスを抜き対応した。
ガキーン!
金属同士のぶつかる重い音が鳴り響き、火花が飛ぶ。
やっと相手の剣を抜かせたシュナイダーは自分の力量に一定の満足を得ていた。
「これでようやく、骨のある奴と戦えるな」
「シュナイダーさん、止めて下さい。僕はアナタとは戦いたくない。アナタは現在、支配魔法を受けています。目を覚ましてください」
「何を言っている。そんな事で戦いに水を差すな! 貴様は強い。俺を本気にさせてくれる相手なのだから!」
シュナイダーはそう言い、槍を高速で動かして突いてきた。
独特の捩じりが加えられて威力も増している。
そんな攻撃を一撃ずつ躱し、魔剣エクリプスで叩き落す。
ガン、ガン、ガン、ガン、ガン
信じられないような重い音が一秒間に何回も連発している。
紛れもなくこれはふたりだけの攻防による結果なのだが、そのスピードと威力の籠った攻防を目の前で見せられても非現実的な光景であり、まるで複数の人間が戦っているように見えた。
そんなふたりの戦いは全体からも注目を集め、両軍の動きは止まる。
「ス、スゲェ・・・何合打ち合っているのか全く目で追えねぇ・・・」
「ああ、これはもう人間レベルの戦いじゃない。俺達とは違う世界の戦いだ・・・」
敵味方区別なくそんな事を言い合う。
明らかにこのふたりの攻防に魅せられていた。
ガン、ガン、ガン!
この時のシュナイダーは・・・
(どうすれば、このバケモノを倒せるか)
自分が勝つため必死に必要な次の行動を考えている。
これに対し、漆黒の騎士アークは・・・
(どうすれば、シュナイダーさんを無力化できるか)
彼を助けるための行動を考えていた。
互いにギリギリの行動をしているように見えて、その中身は随分と違ったものである。
そんな高度な攻防を続けるふたりに、ここで邪魔が入る。
シュル、シュル、シュルーっ!
まるで生きた蛇のように鞭が地面を這い、漆黒の騎士の目前で跳ね上がる。
パシンッ!
鞭が風を切り裂く騒音を発した直後、しなやかな鞭は漆黒の騎士の足に絡み付く。
「ぐっ、気配が薄かった!」
片足の自由を奪われたアークは軽く毒ついたが、それでもまだ大した脅威ではない。
シュナイダーから繰り出される槍を上半身の捩じりだけで往なし、脚にぐっと力を入れると、この鞭の主がアークの力に負けて引き摺り出された。
「ぐ・・・力を抑えられない!」
勿論、この鞭攻撃を放ったのはリューダ。
素早い漆黒の騎士の動きを止めようとした。
しかし、力負けして相手を抑えられないと悟ると、次の手段に出る。
「黒焦げになりなさい!!」
リューダが冷徹にそんな宣言をすると、鞭に仕込まれたボタンを押した。
そうすると魔力が雷に変換される。
これはボルトロール王国情報部で定番兵器として使われている電撃による鞭の攻撃だ。
凶悪な電流は絡めた相手を感電死させる事も可能だ。
ここでリューダは躊躇なく最大出力の雷魔法を選択する。
「死になさい!」
バリバリバリーッ!
鞭を伝い雷属性の魔法による強い電流が迸る。
減衰する事なく漆黒の騎士アークに届くが、彼は最高位の魔力抵抗体質。
雷魔法がアークの身体に触れると、そこで一瞬にして黒い霞へ変換されて、無力化されてしまう。
こうして漆黒の騎士は無傷。
健全なその様子に「どうして?」と困惑の表情になるリューダだが、そこに構わず、漆黒の騎士アークは自身に迫るシュナイダーの槍の柄を握った。
バリバリッ
「ぐをーーーっ!?」
直後に獣のような絶叫を発するシュナイダー。
金属製の槍の柄を介して、彼を感電させたのだ。
「シュ、シュナイダーっ!」
リューダは慌ててボタンを離したが、間に合わなかった。
プスプスと黒い煙を身体から発し、シュナイダーが倒れる。
「く・・・アナタは!」
恨めしく漆黒の仮面騎士を睨むリューダだが、アークは手を横に振る。
「リューダさん。大丈夫です。かなりのダメージを受けたようですが、シュナイダーさんは死んでいませんよ」
心臓の音がまだ止まっていないので、そんな事実を伝えるアークだが、リューダは怒り心頭。
「煩い! シュナイダーの仇っ!」
リューダは鞭をピンと張り、生じた反力を利用して漆黒の騎士に飛び掛かって来た。
そして、リューダの左手には短剣が光る。
暗器を袖に隠して戦うのは情報部で常套手段。
暗殺者ばりの身軽さで漆黒の騎士に襲い掛かった。
ブンッ
鋭い刃で騎士に斬りかかるリューダ。
それを躱すアークだが、ギリギリ。
「鋭い踏み込みだ。やはりアナタは剣術士としての才能もある」
ギリギリに躱しているように見えるが、それでもアークの心には余裕があった。
リューダの戦う姿は修練の時に見た事もあり、彼女の癖は理解しているアーク。
魔剣エクリプスを持ち出して対抗し、ここでリューダと二、三合剣撃を交える。
キン、キン、キンッ!
鋭い攻防は先程のシュナイダーとの闘いを彷彿させる。
彼女がシュナイダーの姉である事を証明していた。
まさに戦闘の才能を持つ姉弟なのだろう。
「自分だけ目立とうって、そりゃないわ!」
ここでこの戦いに加勢してくるのは同じく女性のマチルダ。
彼女は軍将リズウィに気に入られるため、リューダに対しても対抗意識を持っていた。
リューダと剣の斬り合いする隙を狙って、戦槌を叩き込んできた。
「このっ!」
力強い戦槌の叩き込みは細身のマチルダから想像できない。
それは心の支配による副産物。
潜在的な身体能力が引き出された結果だ。
しかし、常人の兵士には有効な攻撃であっても、漆黒の騎士には利かない。
カギーン!
アークは懐に忍ばせた魔法袋から普段使う銀色剣を取り出し、それを左手に握り、マチルダからの攻撃に対応した。
所謂、二刀流である。
キンッ、ガンッ、キンッ、ガンッ!
普段使い慣れない黒色と銀色の剣の二刀流となってしまったが、それでも漆黒の騎士アークは難なくこれを扱えている。
二刀流はブレッタ流の剣技には無い技だが、アークの才能と漆黒の騎士として得られた力が可能にしていた。
「私の攻撃を片手間で防ぐなんて・・・なんかムカつきますね。アナタ!」
マチルダは自分の攻撃が完全に防がれているのが気に入らない。
そもそも戦槌を両手で持ち、力勝負で相手に挑んでいるのに、この騎士の片手の防御はビクともしないのだ。
ガン、ガン、ガン
力強い戦槌のマチルダの一撃一撃を漆黒の騎士は銀色の剣だけで軽く往なす。
それは簡単に往なしているように見えて、実はここにブレッタ流剣術の高い技術が使われていた。
戦槌に加わった力とまったく逆の対になる力で受け流す漆黒の騎士。
だから最小の力でマチルダからの強烈な戦槌の威力を殺せているのだ。
「本当に何なのよ!」
その高い技巧が理解できないマチルダ。
それでも自分の一撃一撃が全く相手に通用しない事だけは解るマチルダ。
苛々が増して、その攻撃が次第に大振りになってきた。
アークはそこを見逃さない。
「隙ありだ。えいっ!」
漆黒の騎士は小さく奮発すると、左の手で持つ銀色の剣をくるりと一回転させる。
そうするとマチルダの戦槌を絡め取り宙へ飛ばした。
「あっ!」
マチルダは拙いと思ったが、もう遅い。
彼女の戦槌は自分の手から離れ、武器を失ってしまう。
丸腰のマチルダは無力。
自分の攻撃の手段が無くなると、彼女は鎧を装着していないので、防御など無いに等しい。
対する漆黒の騎士は切れ味良さそうな銀色の剣を持つ。
このままではマチルダに待つのは死しかない。
ふと彼女は思った・・・
(死にたくない・・・)
それは自らを守る生物としての本能が支配魔法を上まったのか、それとも支配魔法で与えられた使命を果たすため、「まだ死ねない」と思ってしまったのか・・・この時の詳しい理由は定かではないが、マチルダはここで必死に自分が生き延びる事だけを考える。
「えっ?」
マチルダから思わずそんな声が出てしまうぐらい、ここで漆黒の騎士の追撃が急に止んだ。
戦槌を絡め取ってからの次の攻撃が来なかったのだ。
それをマチルダは自分にもチャンスが残っていると思ってしまう。
そうして彼女が選んだのは自分に残された最後の武器の活用・・・女の武器だ。
マチルダは自分の着る薄い式典用の衣装に手を掛けると、上半身を思いっ切り引き裂く。
ビリ、ビリ、ビリ
そうすると当然のようにマチルダの上半身は露わになった。
「うわぁ!? 何を!」
当然だが、そんな凶行に驚くアーク。
第一段階は成功。
マチルダは相手に対して強烈に自分の性をアピールする事に成功する。
「ふふふ、どうやら私はアナタに武力では敵わないようね・・・取引よ」
彼女は精一杯妖艶に微笑み、漆黒の騎士を誘惑する。
華奢な身体のマチルダだが、それでも女性としての膨らみと柔らかさは誇示している。
「アナタ、私と契約しません? 褒賞は私の身体。アナタが私に従ってくれれば、ボルトロール王家の血が手に入りますわ」
しかし、相手が悪かった。
漆黒の騎士は世界一の女性を知っている。
「何を言っている? 僕はそんな誘いには乗らない。それに僕は結婚している。僕の妻は君よりも魅力的だし・・・その・・・もっと大きいから・・・君には興味ない」
アークは頭を振り、マチルダの華奢な上半身裸体から視線を外し、意図的にもう一人の相手であるリューダの方に集中する。
そんな態度が気に入らないマチルダ。
「き、興味ないですって?! この私はこの国の王女なのよっ!」
ヒステリックに叫ぶが、そんなマチルダにリューダが「チッ」と小さく舌打ちする。
明らかにマチルダを卑下した態度であった。
それが余計に気に入らないマチルダ。
もう一言文句を言ってやろうとしたとき、漆黒の騎士はリューダの剣と鞭も絡め取り、空中へ飛ばしたところであった。
「あ・・・」
リューダが呆気に取られて、そんな短い声を漏らす。
直後にリューダがマチルダを睨む。
「な・・・何よ。私のせいって訳?」
リューダの不機嫌を察したマチルダはそんな不満を漏らすが、漆黒の騎士アークからしてもマチルダの存在がもう鬱陶しかった。
「露出狂のお嬢さん。ちょっと目障りなので拘束させて貰うよ・・・泥炭の檻よ!」
アークがそう命じるとマチルダの足元の地面がぬかるんだ。
「キャッ! 何? 底なし沼? 身体が沈む!!」
喚いて慌てるマチルダだが、抵抗虚しく柔らかい沼へ身体が沈む。
そして、首まで沈んだところでアークが再び命じる。
「凝着!」
そうすると地面の硬さが元に戻る。
こうして、マチルダは土魔法の虜になる。
「ちょっと何よ! 出しなさいよ!」
喚くマチルダを意図的に無視したアークは、武器を飛ばしたリューダ側の対処に意識を集中した。
時間軸は少し戻り、リューダがアークと対決しているところからの描写。
ガン、ガン、パシーンッ!
リューダは漆黒の騎士を敵として認識した。
この男は親愛するシャズナの敵である。
しかも過去何度かこの男はシャズナの邪魔をしていて、許せないと思った。
(この男、殺す・・・)
そう心から願い、憎しみのすべてを絞り出して戦っていた。
パシンッ! ビリビリッ!
鞭の魔道具に設置された電撃魔法を加えてみるが、それでも相手は死なない。
(魔法が邪魔されている・・・これは魔力抵抗体質者!)
そう思うと、何故だか心のどこかで喜ぶ自分を感じた。
(何!? この感覚・・・私、この男のことを知っている?)
違和感があり、頭をブンブンと振るリューダ。
今、そんな事を考えている場合じゃない。
この男を早く殺さないと、大変な事になる・・・そんな予感が彼女を焦らせる。
鞭を左手に持ち換えて、護身用の短剣を持ち出して、漆黒の騎士に攻撃した。
何故だか、その剣が軽い。
(これは修練の結果・・・彼の指導によるお陰・・・彼って誰?)
不思議な感覚が心に過る。
何か重要な事を忘れているような気がした。
しかし、「今、それは重要じゃない」・・・そんな大きな心の声で疑問はかき消される。
ガン、ガン、ガンッ!
漆黒の騎士と何合か刃を重ねるが・・・
(このパターン・・・覚えている)
不思議と漆黒の騎士の次の攻防が解った。
お陰で元々それほど得意じゃなかった剣がこの時は上手く扱えている。
敵の剣技は隙の無い技だが、それでも何とか対応できている自分が不思議な感覚だった。
しかし、漆黒の騎士の方が何枚も上手なのは解る。
彼は自分でもついて行くのがやっとの技を魅せながら、敵は左手にもう一本の剣を操り、マチルダの戦槌攻撃を器用に防いでいた。
尤もマチルダは力任せの攻撃であり、美しくはない。
(邪魔ね。彼女の戦い方は美しくないわ。この騎士に対して失礼よ・・・)
思わずそんな事を考えてしまうリューダであったが、無茶な反撃を続けるマチルダは遂に破綻した。
ガキーーン
上手くマチルダの戦槌を絡めて飛ばす漆黒の騎士。
私は心の中で「ざまぁみろ!」とマチルダを罵ってしまい・・・
(何を考えているの、リューダ! 彼女は味方。彼女の武器が飛ばされたと言う事は自分の友軍がピンチになるのよ!)
直後に冷静なもうひとりの状況を認めさせようとする。
しかし、何だか違和感が続く・・・
そうすれば、次の瞬間、マチルダが自ら服を破り裸体を晒して騎士に命乞いを始めた。
(何、あれ? ダサイ女・・・この期に及んで女の武器を使って命乞いだなんて・・・)
私は解っている。
そんな魅力攻撃なんてこの男には通用しない。
彼はもっと高潔なのだから。
「あっ!」
ここで私はふと思う。
(どうして、私は彼の事を知っているの?)
その疑問に答えてくれるのは彼の剣技。
グルグルと剣先を回し、私の鞭と短剣が絡められる。
(ここで跳ね上げて、絡めるっ!)
何故かそのタイミングが解った。
私は鞭と剣を手放す。
そうしないと手首を痛める・・・その結果が予想できたからだ。
「ど、どうして・・・私は彼の次の行動が解るの?」
謎が言葉となって口より出るが、それは外の世界に漏れない。
何故ならば、彼の唇が私の顔の前にあったから。
そして、彼は私にこう告げてくる。
「リューダさん。申し訳ない・・・これはアナタの支配魔法を解くためです」
彼からはまるで言い訳を告げるようにそれだけを言い終わると、私の唇は彼の唇で蓋をされてしまった・・・




