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第十話 勇者パーティと初体験 ※

 イアン・ゴート師より課せられた『他人の命を奪う行為』をその後何回か経験されられた隆二はようやくその(ごう)を受け入れて、一端の剣術士へと成長を果たす。

 そして、そんな頃合いを見合わせたようにセロ国王から召集の命がかかった。

 隆二とアンナは呼び出しに従って、王城の謁見の間へやって来る。

 

「ほう、いい面構えになったな」


 久しぶりに謁見の間で会った隆二の顔を見てセロ国王がそんな評価をする。

 

「アンタがいい師匠を紹介してくれたお陰だぜ」

「コラッ! 馬鹿リズウィ。国王様の前で言葉を慎みなさい」


 アンナが直後に隆二の頭を殴る。

 そんな仲を見たセロ国王はカラカラと愉快に笑う。

 

「ほほう、随伴者のアンナ・ヒルトとは随分仲良くなったものだ。うむ、私の選択は間違ってなかった。これで勇者の子孫は王国のものになるだろう」


 何を想像したのかアンナの顔は真っ赤に染まる。

 当の隆二はそんな冗談などあまりに気にせず話を先に急かす。

 

「ところで王様。今日、俺を呼び出したのは何か理由(わけ)があるのだろう?」


 隆二からのそんな問いにセロ国王は鷹揚に頷く。

 

「ウム。我ながら話題が逸れている事に気付かなかったようだ。赦せ、勇者よ」


 そして、セロ国王が新たな三名の男女を迎え入れた。

 

「この三人は今後勇者の協力者となる人物だ。彼らと勇者パーティを結成するがよい」


 そんなセロ国王の紹介で現れた人物を見てまず驚いたのはアンナである。

 その三人のうちのひとりが幼馴染だったからだ。

 

「シオン!」


 そう呼び掛けられた彼女は優しく笑って応えた。


「あら、アンナさん。お久しぶりですね」


 落ち着きつつも少しボタンの掛け違えたような応答をしてくる彼女(シオン)は、いかにもシオンらしいとアンナは思う。

 そして、アンナは隆二と一年間行動を共にして彼の事を結構気に入り始めていたりする。

 つまり、ある意味で隆二を独占状態であったアンナだが、ここで隆二に関わる女性が増える事に彼女の苛立ちが増す。

 

「どうしてシオンが?!」

「私は国王様より勇者リズウィ様をパーティメンバーとして支援せよと命令を仰せつかりました。戦いの現場では私のような神聖魔法使いの支援は必要となります」

「シオンだけじゃない。前衛に立ち矢面で戦う戦士や、後方から敵を牽制する暗殺者の役割はパーティバランスから考えて必要な人員」


 そんな尤もらしい説明をするのはここで初顔合わせとなるガダルである。

 二の腕にチカラコブシを作り、自分達が役に立つメンバーであると暗に主張していた。

 

「俺達は今まで軍属の特殊部隊としてシオンとチームを組んで仕事をしてきたんだ。その働きが国王様から評価されて、今回は『勇者パーティ』と言う独立部隊が作られる事になった。そして、俺達が選ばれて配属されたって訳さ」


 パルミスがそう簡単にまとめる。

 自分達が特殊部隊のエリートであるとして僅かに自慢も混ざっていたが、そんな細かい話が解るほど隆二は繊細ではない。

 

「へぇ~。親の跡を継いで神職者になったって聞いていたけど、軍属(そっち)の方の神職者になったのね」


 数年前に別れた幼馴染の詳しい経緯を今まで聞かされていなかったアンナだが、このときのシオンを見てそう納得する。

 ボルトロール王国では神を信奉する宗教は当然存在しているが、その大半は軍属信奉者と呼ばれ王国軍に帰属している。

 その理由は単純であり、癒しの力を軍事利用しているからである。

 そんな背景もあってボルトロール王国の神職者は軍属であることが一流とされているが、幼馴染のシオンもその道に進んだのだと大いに納得するアンナ。

 魔術の適性の高かったアンナは幼少期から魔法の英才教育を受けるために家を空けることが多く、幼馴染のシオンとは長い間疎遠となっていたが、ここにきて一緒に仕事ができる事だけはうれしいと思う。

 そんなうれしい気持ちと同じくしてシオンの存在を鬱陶しいと思う気持ちも芽生えたが、この時はどうしてそんな気持ちが現れたのかアンナ自身が自分の心を理解できなかった・・・

 

「ともかく王様よ。俺はコイツらと組んで何をすりゃいいんだ?」


 自己紹介もほどほどに隆二はセロ国王にこの先の計画を聞く。

 相変わらず節操な奴だと思いながらもセロ国王は顔を綻ばせる。

 実直な隆二の性格は好ましいと思ったからである。

 

「王国北西部の最前線『ハナマス』。そこで敵国の首都攻略をしている西部戦線軍団が手を焼いておると連絡が来ておる。敵国の防衛の要は凄腕の『魔獣使い』らしい。勇者パーティはこの『魔獣使い』を各個撃破せよ! それが勇者パーティの初任務じゃ」

「ハッ! 了解しまた!」

 

 ここで軍隊式の敬礼をするのは隆二以外の面々。

 隆二も少し遅れて彼らに従う。

 こうして勇者パーティの初出撃先が定まった。

 

 

 

 

 

 

 場面は変わり、ここは王国北西部の最前線ハナマスに移動中の馬車内の様子となる。

 勇者パーティの彼らは王城の謁見の場での顔合わせも早々に済ませ、初仕事へ繰り出していた。

 いきなり過ぎると思う隆二だが、最近はボルトロール人の気質というものが少しだけ理解できてきた。

 彼らは往々にして決断と行動が早いのだ。

 次の行動に備えて考える事と準備に時間を要するというのは彼らの中では美徳ではないらしい。

 そこをいかに早くできるか、効率重視で次の行動を取る事が彼らの中では最評価される。

 それが上手く嵌り、最近の戦争では連戦連勝の成果を出しているのだから、彼らの行動原理が肯定される事への裏付けになっている。

 破竹の勢いでこの王国の国土が拡大しているのは伊達じゃない。

 そんな彼らは時間の使い方が上手く、今回のようにどうせ馬車で移動するならば、その時間を利用して互いの自己紹介や役割分担などの相談に使えば効率的だと判断していた。

 

「リズウィさん、凄いですね。あの(・・)イアン・ゴート様に師事されていたなんて」


 ここでそう隆二を褒めて、鍛えられた身体を触ってくるのはシオンだ。

 彼女はわざとらしいぐらい隆二を褒め称えてスキンシップを図ってくる。

 そして、足を組み替える際にスカートの裾からチラリと白くて細い脚を覗かせている。

 挙句の果てには・・・

 

「馬車の中は暑いですね・・・」


 そうして上着の胸ボタンを外して、自らの女性の膨らみを強調する。

 そんなあからさまな行動は色恋感覚が鈍い隆二であってもシオンという女性を意識させられた。

 男を誘う姿は聖職者であるシオンには似つかわしくないが、それが時として背徳感という媚薬効果(エロス)を発揮しているのだ。

 そんな彼女の行動がエスカレートするのは立ち寄った宿の夜の刻である。


 夜の宿の廊下を薄着となったシオンが進む。

 彼女の目指す先は勇者の寝室・・・つまり夜這い。

 シオンが勇者の寝室のドアノブに手をかけようとしたとき、誰かがそれを阻んだ。

 

「シオン。ちょっとどういうつもり!」


 ここで突然現れたのはアンナ。

 アンナがここで見張っていたのも当然。

 自分の幼馴染が隆二に誘いをかけてくる事を警戒していたからだ。

 それにシオンはフゥとため息を吐く。

 

「どうもこうもありませんよ。目的はただひとつ。勇者リズウィさんを懐柔するためです」

「か、懐柔って・・・」


 いけないことを想像して顔が真っ赤に染まるアンナ。

 

「それは王命なのです。勇者リズウィをこの王国に留めるために、我がボルトロール王国の利益のため私が生贄となりましょう。リズウィさんを夢中にさせてみせます」

「何を言ってんのよ! そんな情事の仕事は情報部の女が担当の筈。聖職者のシオンがやらなくたっていいじゃない」

「軍属たるもの置かれている状況は刻々と変わります。いいですか、アンナさん。勇者リズウィさんは王国のために働いて貰わないといけないのです。王国に未練と情を抱かせるためにはどうすれば一番いいか解りますか?」

「・・・一番って・・・」

「それは我が王国内に家族を持つことです。私は勇者リズウィさんとの子供を設ける覚悟があります」

「子供って・・・それは・・・キャーー!」


 いらぬ男女の図を想像して興奮してしまうアンナ。

 

「駄目! 絶対にシオンとは駄目よ・・・そんな! シオンとリズウィの間に子供だなんて。アナタ達が夫婦になるのを私は絶対に認められない!」

「どうしてです? アンナさん、アナタが代わりにリズウィさんを攻略してくれるのですか? アナタとは幼馴染です。もしそうならば私は身を引きますよ」

「私は・・・」


 いまいち煮え切らないアンナ。

 

「解りました。それでは私が頂きます」

「待って!」


 ついにアンナは覚悟を決めた。

 今までどうしてイライラしていたのか。

 どうして絶対にシオンの行動を阻止しなくてはと思ってしまったのか・・・

 それは自分が隆二のことをとても気に入っているからだ。

 処女を捧げてもいいと・・・

 

「その役目、私が受けるわ」

「本当ですか?」


 もう一度確かめるようにシオンが問う。

 

「本当よ。私、リズウィのこと結構好きだもの・・・本当に本当よ!」


 このとき必死に訴えるアンナの声が存外に大きく、部屋の中で寝ていた隆二が気付いてしまう。

 

「んん? 誰かいるのか?」


 これには焦るアンナ。

 どうしようと顔で問い合わせてくるアンナにシオンは諸手を挙げるだけである。

 

「・・・リズウィ。私よ。アンナよ。あの・・・ちょっとお話したいなー。なんて。エヘヘ」


 終始決まりの悪いアンナの言葉を聞き隆二はゆっくりとドアを開けた。

 

「わっ!」

「おい、アンナ。それって今じゃなきゃだめか? 俺は別に明日の昼でもいいんだぜ」

「今じゃないと駄目だと。アンナさんは言っています」


 シオンがそう言うと、ドンッとアンナの身体を後ろから押して、ふたりを寝室へと閉じ込めた・・・

 

「ちょっと、シオン、何するのよ!」


 怒る・・・というよりも焦るアンナ。

 そして、隆二からはこんな夜半に一体何の用事だと再び問いかける。

 

「それは・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・おい、黙っていちゃ訳解んねーよ!」


 そんな隆二の声にビクッと反応するアンナ。

 彼女の中でもうヤケクソになり、こんな事を言ってしまう。

 

「ねぇ。リズウィ・・・アンタに私の処女をあげる・・・わ」

「はぁ?」


 そこには色気も何もない。

 当然、隆二の頭は理解が追いつかず『?』である。

 それはアンナも自覚しており、ここでアンナはできる限り自分が女性である事をアピールしようと考えて、次の行動へ強引に移る。

 自分の服の上から自分の両胸を持ち上げて揺らしてみせる。

 滑稽な姿であったが・・・それを見た隆二は・・・

 

「うぉぉーーー!」


 意外な事にこの時の隆二はアンナの誘いに乗ってきた。

 隆二はアンナに覆い被さりベッドに押し倒される。

 普段ならばこんな陳腐な誘いには絶対に乗らない(特にアンナからは)隆二であったが、昼間のシオンから散々と挑発されて、男としてムラムラとしていたのだ。

 

「ちょっと、たんま・・ああぁ・ああぁぁ」

 

 野獣と化した隆二にストップをかけるアンナだが、隆二もこうこうなるとなかなか引き下がれない。

 勢いそのままに、アンナの衣服を剥ぎ取り、アンナの裸身を目にする隆二。

 白くて細い身体の胸部に良い女性の乳房がふたつ乗っかっている。

 もう隆二の理性は限界だった。

 こうしてふたりは男女として初めての夜を過ごしてしまうのである・・・

 

 

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