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第七話 隆二の転身

 感動の米料理を食したハル達は食後のお茶でひとまず落ち着きを取り戻し、過去の話の続きを聞く事にした。

 

「それにしても、やっぱり風雅(カザミヤ)ってムカつくわよね。お父さんが追い詰められたのもその風雅(カザミヤ)の仕業じゃない!」

「止めて春子ちゃんまでそんなこと言うのは・・・私はもう誰も恨みたくない。私が欲しいのはもう安寧だけなのよ・・・」


 ユミコはもう誰も恨みたくないと言う。

 ハルもその気持ちは理解できた。

 ここですべての責任を風雅(カザミヤ)にして恨む事は簡単だ。

 しかし、それは風雅(カザミヤ)が自分達にした事と同じになってしまう。

 少なくとも母はそうしたくないと思っているようだ。

 しかし、リズウィはそんな気持ちは伝わらない。

 

「チッ! くだらねぇ昔話をしてやがったか」

 

 苛立つリズウィ。

 

「そうよ。お父さんが発病したところまでは聞いたわ。その先の話は隆二から聞かせて頂戴」


 ハルがそうしたのは、ひとつは母にこれ以上辛い過去の話を思い出させたくなかった。

 もうひとつはこの先の話として江崎家は研究所の人々と袂を別ち、この屋敷へ生活拠点を移す事になった展開を予想している。

 その顛末は勇者になった隆二から聞かせて貰った方がいいだろうと考えたからだ。


「・・・解ったよ。聞かせてやるよ」


 リズウィもハルの要求が自分に向いているのを察し、答えてやる事にした・・・

 

 

 

 

 

 ・・・父の忠雄(タダオ)が病気になってから半年が経過した。


 最近の隆二は中庭でひとり鍛錬する姿が更に多くなっている。

 それは最近本当にこの時間ぐらいしか心の落ち着きを得られる事が無くなってきたからだ。

 廃人となってしまった父は時折言葉を発するが、その内容は支離滅裂。

 何を言っているのかまったく理解できない。

 重度の認知症になってしまった病人などそんな姿は当たり前であろうが、それは父が己の要因で引き起こされた病気ではなく、人々より責められた結果だと隆二は思う。

 その原因となった人達を許せないと考えるようになっていた。

 母はそんな廃人となった夫の看病――と言うか介護に付きっ切りである。

 日に日に憔悴していく母の姿を見て、隆二自身も気が病んで行くのを感じていた。

 そんな状況を多少助けてくれるのは元医師である養老(ヨウロウ)先生の一家ぐらいであり、それも親身と言うよりは、医者としての責務から仕方なしに最低限の面倒を見てくれている・・・そんな感じがしていた。

 隆二の心も日を追うごとに廃れていく。

 

「あ・・・くっそう!」


 苛立ちの雑念が入った隆二はここで素振りを失敗して、木刀をすっぽ抜かせてしまう。

 

カラーン、カラーン


 乾いた音が中庭の石畳の部分に響く。

 隆二の手から飛んだ木刀は少し遠に飛び、そんな無様な様子を目にした少ない見物人が笑いを堪えているのが解った。

 それが隆二の苛立ちを更に増長させている。

 しかし、ここはそんな敵ばかりではない。


タッタッタッタ・・・


「ハイ」


 幼い子供が隆二の飛ばした木刀を拾って渡してくれた。

 

「悪りぃーな、(ジュン)


 その幼い子供は小学生低学年ぐらいの年齢であり、隆二も最近見知っている顔だ。

 養老(ヨウロウ)(ジュン)養老(ヨウロウ)(ヒロシ)先生の息子であり、最近は父の診察を通して少しだけ言葉を交わせる仲となっている。

 この集団の中で数少ない仲間である。

 

 (ジュン)から飛ばした木刀を受け取り、また木を相手に修練を続ける隆二。

 

「えいっ、えいっ、えいっ」


 規則正しく上段の構えから剣道の技を放つ隆二。

 

パン、パン、パン


 規則正しく木を打つ音が周囲へと響く。

 それを見てまた嘲笑が・・・


「やだぁ、またやっているわ」

「ホント、暇よねぇ。皆が成果、成果って忙しくやっているときに呑気なものよねぇ」

「だって彼は江崎家よ。私達と同じ仕事させても邪魔するに決まっているわ」

「そうねぇ。チャンバラしか能がないようだし、一体何の遊びかしら? 冗談もほどほどにして欲しいわ」

「剣道の修練らしいよ。でもそれならば、警備に役立つかも?」

「ムリムリ。警備主任の篠塚(シノヅカ)さんは『使えない』って言っていたわよ」

「あらそーなの? 江崎家の生き残りは全くの無駄・無能なのねぇ。笑っちゃうわ。アハハハハ」


 隆二の耳にも聞こえるぐらい自分を見下す女性の声が聞こえる。

 当然、隆二も自分が馬鹿にされている事は解っているが、それでも敢えて無視を決め込む。

 初めの頃はいちいち反応していたが、最近の隆二は疲れた。

 

「・・・くっそう!」

 

 静かにそう呟き、女達をギロリとひと睨みしてやる。

 

「ああー、怖っ!」


 睨まれた女性達はそんな捨て台詞を吐いて消えていった。

 とりあえず睨みだけで鬱陶しい女子を追っ払えた隆二はいろいろな意味でホッとする。

 そして再び自らの修練を続ける。

 

パン、パン、パン


 木を打つ音が続いている。

 ここで少し離れたところからそんな隆二を眺める姉弟(きょうだい)がいた。

 ボルトロール人の女魔術師リューダとその弟シュナイダーだ。

 

「リュウジィ君を見てどう思う?」

「うむ、剣筋は鋭いし、見どころは・・・あると思う。彼ならば荒事でもやっていけるかと・・・」

「なるほど。王国でも有能な戦士であるアナタがそう思うならば、その判断を信じましょう」


 リューダは弟のプロの戦士の目を信じ、ここでとある決断をした。

 それを履行するために隆二へ近付く。

 

「こんにちは。リュウジィさん」


 リューダはできるだけ隆二を刺激しないよう優しい言葉をかける。

 

「何だよ!」


 隆二もリューダは知る顔であったが、不愉快の混ざる声でそんな応答する。

 

「修練を邪魔してごめんなさい」


 可愛く、女性の愛想を最大限に活用して自分へと近付いて来るリューダを隆二は警戒する。

 

「今日はリュウジィさんに良い話を持ってきたわ」

「俺に良い話だと?」


 一体何の事かと思う隆二だが、どうせ他にもやる事は無い。

 話だけは聞いてやるかと手を止めた。

 

「リュウジィさん、アナタ、剣術士って興味ありますか?」


 ここでリューダからそんな提案を聞かされる。

 

「リューダさん、だったっけ? どうして俺にそんなことを聞く!?」


 隆二は唐突なリューダからの問いにそんな反応をした。

 

「それは・・・アナタが活躍できる場を考えていたからです・・・アナタはここに居ても皆さんからは歓迎されていないようです」

「歓迎されていないか・・・そのとおり、俺は嫌われ者さ。江崎(エザキ)忠雄(タダオ)の息子だからな。ここの全員をこの世界に飛ばすのに加担したと思われている。お前達の都合に巻きこまれてな!」


 そんな苛立ちと共に敵意むき出しの隆二。

 しかし、その程度でリューダとシュナイダーには大きな脅威とならない。

 彼らは成果至上主義蔓延るボルトロール王国軍の中でも精鋭だ。

 異世界の若造如きの凄みぐらいで意気消沈してしまう柔な精神など持ち合わせていない。

 

「それは申し訳ないです。しかし、これは国王様の意向。これも運命と諦めて貰うしか解決方法はありません」

「運命だと?! けっ、やってらんねーぜ!」


 隆二の苛立ちが膨み、持つ木刀を地面に投げる。

 そんな癇癪によって大きな音が発生して、まだ近くに残っていた養老(ヨウロウ)(ジュン)が怯えた表情を見せた。

 しかし、リューダとシュナイダーは顔色を変えない。

 そんな余裕がまた隆二を苛立たせる。

 

「リュウジィさん、怒っていては何も解決しません。アナタがここで腐っていくのも、リュウジィさんのお父様とお母様が幽閉から解かれないのも、このままでは解決できません・・・しかし、私達はそんな現状を打破する提案を持っています」


 そんな言葉を聞いた隆二の片眉が挙がる。

 

「ああ~ん? 何だよ。俺達をまた利用するつもりか?」


 そんな不敵な態度を示す隆二に、リューダは自らの提案だけを素直に伝えた。

 

「リュウジィさん、聞いてください。アナタ、軍の兵になる気はありませんか? その剣術の腕前ならば、兵としてもやっていけると思います。我々に求められるのは有益な成果を示す事。その力がアナタにもあると見ました。仕事内容は剣の力で大暴れするだけです。それで成果が示せば褒賞など思いのまま。どうですか? ここを出て自由を得られますよ」

「・・・」


 隆二も少しは考えてみる。

 全く以て不穏な提案だが、『ここを出る』という単語だけが魅力的に感じられた。

 

「・・・解った。それは良い提案かも知らねー。もしそれを俺が選択するならば、この先どうすればいいんだ?」

「リュウジィさんからその要望をセロ国王に申し出れば、一考して下さると思います。あの方はああ見えて、柔軟な思考を持つお方です。成果が出せる可能性を潰す方ではありません。こちらの皆さんの意向は・・・特に許可を貰う必要ないでしょう。現時点でタダオ教授一家が研究所を去る事を残念に思う人はいないでしょうから・・・」


 そんな事は無いよ、と(ジュン)は目で訴えていたが、そこに隆二は気付かない。

 このリューダからの提案が現状を打破できる唯一の手段のように思えてきた。

 

「・・・解った。親父と母ちゃんは俺が説得する・・だから俺を王の前に連れて行って欲しい」


 そんな隆二の決断はあっさりと履行される事になる。

 午後には国王の謁見が赦され、こうして江崎家は研究所から去る事となる。

 父は認知症で判断できない状況にあるため、隆二が説得する相手とは母の由美子(ユミコ)だけである。

 

「王様が俺達を別に面倒見てくれることになったんだ」


 と、半ば嘘の方便で母親を強引に説得した隆二は誰にも見送られず、足早で研究所から去る事になる。

 移動する馬車の車中でリューダとシュナイダーに問う。

 

「それにしても異常な早さで謁見が認められたな。リューダさん達って実は大物なのか?」

「・・・いいえ、私達は只の情報局員です。多少(・・)仕事はできると自負しておりますので、それで国王様にも覚えが高いのでしょう」


 そう答えるリューダだが、隆二は絶対に何か裏があると思う。

 しかし、現時点で深く詮索しない事にした。

 隆二は江崎家の代表としてこれから国王と交渉する必要があり、そのため、彼が最も不得意とする交渉という名の仕事が発生するからだ。

 そちらへ意識を集中する事にした・・・

 

 

 

 しばらくして、ここは国王の謁見の間。

 セロ国王は研究所の人達の動向を監視させていたリューダから隆二の処遇について事前に相談を受けていた、それに応じるため、既に準備を終えている。

 そして、約束どおりの時刻に江崎家の隆二がやって来た。

 隆二は謁見の間に入るなり、自分の要求を口早に伝える。

 

「王様、俺はアンタの兵士になるから、俺の家族の面倒を見てくれよ!」

「フフフ、若造め! 言葉遣いの悪い奴。それも翻訳魔法が的確に機能していないからなのか、それとも本当に口が悪いのかは解らぬが・・・まぁよい。貴様の要求を直に聞けたので今回は不敬を問わないとしよう・・・」


 セロ国王は隆二からの素直な言葉を聞けたとして、ここでの生意気な口調は不問とした。

 ちなみにこの謁見の間には隆二ひとりしか来ていない、彼の両親はリューダ達とともに控室で待つように言われていた。

 それはセロ国王からの指示によるもの。

 セロ国王はここで隆二の腕と覚悟を試す事を考えていたようだ。

 そのため、彼の両親がここに居れば邪魔となる。

 隆二ひとりがどう考えて、どう選択をするかがセロ国王は興味があった。

 

「サガミノクニ研究所の人々の輪から外れる覚悟を選んだお前達。お前達が皆から蔑まれている事に関しては私にも責任がある。それは大いに受け入れよう。しかし、貴様に我が兵となる価値があると言うのならば、それを証明して見せよ」


 セロ国王がそう宣言すると、完全武装の兵が姿を現した。

 煌びやかな白銀の鎧に、豪華な装飾を施された兜は王を守るのに相応しい兵―――つまり、近衛兵(ロイヤルガード)

 その近衛兵は金属製の長靴でカツコツと音を立てながら隆二とセロ国王の元にゆっくりと歩んでくる。

 そして、隆二の前で立ち止まった。

 無言の近衛兵は隆二よりも身長があり、迫力があった。

 

「く・・・すげー威圧感だ!」


 本物の騎士・・・それを見るのも隆二は初めて。

 小学生の剣道の試合に出た程度の隆二などこちらの世界では一般人に毛が生えたようなものである。

 本当の(いくさ)人を見て恐れを懐いてしまうのは人として正しい反応である。

 しかし、隆二も気持ちで負けたくはない。

 

「だが、俺も家族を養わなくてはいけねーんだよっ! 一端(いっぱし)の兵となり名を馳せてやらぁ!」


 そう宣言して、背筋を伸ばす。

 

「ほほう。胆力だけは一人前のようだが、それに実力が伴うかな?」


 セロ国王は顎で合図を送ると近衛兵は模造剣のふたつを出して、その一方を隆二に差し出す。

 模造剣を受け取った隆二は納得した顔になる。

 

「あー、この先の展開が読めちまった。この場でコイツと戦って勝てと言うんだろう?」

「察しが良い、そのとおりだ。お前の本気を私に見せてみろ」


 セロ国王は己が望んだ展開へと滞りなく進むこの現状に満足していた。

 

「試合、初め!」


 国王がそう宣言すると共に隆二が先に動く。

 

「メン、メン、メーーーン!」


 素早い踏み込みで模造刀を竹刀のように扱い、敵の頭部へ叩き付けるようにバンバンと頭を狙う。

 速攻が利いたのか、近衛兵の兜へ隆二の狙いどおり模造刀が上から下へと叩き付けられる。

 こうして、隆二の初手が敵の頭にクリーンヒットするが、模造刀である事に加え、強靭な鉄の兜に守られている事もあり、近衛兵に大したダメージは入られていない。

 近衛兵は鬱陶しそうに隆二からの攻撃を剣で横に薙ぐ。

 

ギーーン


 模造刀同士が空中で激しくぶつかり、金属的な打撃音が謁見の間に響く。

 そして、隆二の剣が弾かれた。

 

ガーーーン


「畜生、何てパワーだ!」


 剣を持つ手が敵の威力でしびれて剣を放してしまいそうになるが、簡単には負けられない。

 

「でも、俺もガッツ・ファイターって呼ばれてんだぜっ!」


 隆二は剣を握り直し、敵の剣に向かい自分の剣を打ち付ける。

 『攻撃が最大の防御』とは隆二のやり方だ。

 

「ぐおっ!」


 兜の奥から男の苦悶の声が聞こえた。

 この瞬間、相手からここまで強く剣を打ち込まれるとは思っていなかったようだ。

 こちらの世界の剣技の常識では、この状況で相手より打ち返されるのはセオリー外である。

 そんな意表を突く攻撃を油断した体制で受けてしまい、近衛兵は結果的に腕の筋を痛めてしまう。

 この隙を隆二は見逃さなかった。

 

「へへ、油断しているからそうなるんだ、よっ!」

 

 ここで隆二は回り込むようにぐるりと回転し、模造剣を横へと薙ぐ。

 

「胴ーーっ!」


ガーーーン


 遠心力で威力の増した隆二の剣は近衛兵のがら空きになった胴体を打つ。

 しかし、そこも強靭な金属製の鎧で守られており、致命傷には至らない。

 構わず隆二は次の一撃を放った。

 

「突きーーーっ!」


ドンッ!


 模造剣が迷いなく近衛兵の喉へ命中した。

 勿論、人間の急所を守るための鎧がそこを守らない筈はない。

 のど当てに命中して、大きな体格の近衛兵は後ろへと飛ばされた。

 

「ゴホ、ゴホ、ゴホーっ!」


 のど当ては急所を守っているが・・・

 しかし、その衝撃を完全に吸収できる訳では無く、咳き込んでしまう近衛兵。

 そこに顔を横から殴るように隆二の模造刀の攻撃が続いた。

 

ガンッ!


「ぐわッ!」


 堪らず、呻き声を上げる近衛兵。

 

「邪魔なんだよ。この兜がぁ!」


 強固な守りをしているヘルメットを外してやろうと素手でそれを捕まえる隆二。

 しかし、それは悪手となる。

 

「調子に乗るなぁ~、この餓鬼め!」


 ここで近衛兵の男は激高し、ここで剣を捨てて拳で隆二の顔を殴る。

 もうそこに騎士の優雅さはない。

 

パンッ!


 鋼鉄の籠手で覆われた拳は凶器だが、それを隆二は顔面に迫るギリギリで躱す。

 しかし、拳が微かに額に掠り、鮮血が(ほとばし)ったが、それでも隆二は気にしない。

 ヘルメットが僅かに緩み、首が見えた。

 隆二はここがチャンスだと思い、腕を首の隙間に回して相手を絞めにかかる。

 

「ぐ・・・放せ!」


 激しく暴れる近衛兵だが、それでも隆二は逃がさない。

 強く首を締めあげる。

 

「あぁぁぁ・・・」


 やがてガクンと男が気絶した。

 隆二の締め技が決まった。

 それはもう既に剣士同士の試合でなく、柔道のような技で、優雅さはない。

 しかし、それでも勝ちは勝ちである。

 

「ハア、ハア、ハア・・・ど、どうだぁ!」


 ここで隆二の額から血が滴る。

 豪華な謁見の間の絨毯を血で穢してしまったが、セロ国王はその程度を気にしない。

 

「ほほう、勝ちよった。これは意外な結果だ」


 サガミノクニの人間は頭は良いが脆弱であると報告を受けていたので、模造剣とは言えここで完全武装の近衛兵に勝てるとは思っていなかった。

 例え負けていても、セロ国王は隆二の願いを聞き入れてやる事を考えていたが、ここで敢えて完全武装の近衛兵をぶつけた理由は、現実の厳しさと自分の弱さを知らしめるためだ。

 隆二の覚悟も見たかった。

 しかし、いろいろな意味でこの隆二と言う少年は裏切られた。

 セロ国王は愉快に笑う。

 

「ワハハハ、解った。リズウィ(・・・・)の勝ちでいいだろう」


 セロ国王は隆二の名前をここでそう呼ぶ。

 ゴルト語で隆二の発音は難しいのだ。

 しかし、この名称がこの先の隆二自身が己を名乗る時によく使うものになるとはこの時に思わなかった。

 

「お前の望みを叶えてやろう。そして、このボルトロール王国でこう名乗るといい。自分は『勇者リズウィ』であると・・・」

「勇者リズウィ・・・」


 セロ国王から与えられたそんな新たな属性(クラス)名を復唱する隆二であった。

 

 

今年最後の更新です。皆様よいお年を。

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