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第七話 ニートの正体 ※


「それってサラスリムの瓶だろ?」

「えっ?」


 どうしてそんなことまで知っているのか?と思うリーザであったが、それ以降のニートは・・・

 

『〇△×・・・・×××!』


 何を喋っているのか解らない。

 突然、言葉が変になった。

 この展開に頭がついて行かないリーザだが、ここで業を煮やしたのはニートの方であった。

 

『いいや、この方が話は早え~』


 そう言うとニートは首からかけていたネックレスを外す。

 そうすると、どうだろう・・・

 金髪碧眼だったニートのカラーが変化して、黒髪黒目の人物へと変わる。

 そして、その顔をリーザは・・・忘れる事が無かった。

 

「リズウィ!」


 突然の彼の登場にリーザは自分が夢を見ているのかと疑う。

 だって、憧れの彼が目の前にいるのだから・・・

 冷静に考えてみれば、エクセリアに黒髪黒目の集団が現れた事は知っている。

 サガミノクニ人・・・そこにリズウィがいる可能性も考えられた。

 しかし、今のリーザは冷静ではない。

 薬物の影響で意識朦朧としていた事に加えて、リズウィの顔を見た瞬間にすべてがどうでも良くなってしまう。

 そんな彼女が選択した行動とは・・・

 

「リズウィ、好きっ!」


 リーザはリズウィに接吻する。

 どうせ夢ならば、と自分の欲望に素直に従った結果だ。

 

『お、おい! いきなり過ぎるんじゃねーか?!』


 リズウィは困惑するが、それでもリーザからの積極的な接吻は止まらない。

 美女から濃厚な接吻を受けて、深い接触を求められれば、それを拒否するのは男として失礼・・・

 少なくともリズウィはそんな考え方をしていたし、リーザがリズウィという人物を好意的に捉えている事も解っていた。

 そうでなければ、あの時に渡したサラスリムの空き瓶をここまで大切に所持している事はしないだろう。

 リズウィは女性の感覚について疎い所もあったが、そういった所だけの感覚は鋭い。

 リーザの情熱的に接吻に応じ、空いた掌でリーザの身体に触れる。

 

「ふわぁっ!」


 相手に触れられた事で、リーザの顔は悦に染まる。

 そんなリーザの反応はリズウィの興奮を高めるしかない。

 ここでリズウィはパッと周囲を確認する。

 小島の周囲は黄金色の水で閉塞しており、外敵(スライム)の侵入も心配する事も無い。

 対岸の岸辺はスライムで溢れていたが、逆に言えばそれだけである。

 スライム達は『黄金ユリ』の花粉を脅威に感じているようで、島までやって来ようとしない。

 そして、知能の無い敵だ。

 自分達のこれからの姿を見られたところで何も損する状況では無い。

 つまり、ここは安全であるという確証を得た。

 だからリズウィは調子に乗る。

 リーザからの熱烈な愛の求めに応えてやる事にした。

 リズウィは巧みに手を駆使し、接吻しながらリーザの身体を堪能する。

 彼女からも何の抵抗もなく、寧ろそんな行為を愉しんでいるように協力的であった。

 そして、しばらくするとリーザは裸身にされてしまう。

 均整な顔立ち、そこには白い肌と碧眼の力強い瞳。

 夕日の西日に染まる中、こうしてリーザは生まれたままの姿をリズウィに晒す事になる。

 リズウィから見ればちょうど股間の隙間に夕日の逆光が入り、後光に包まれたような絵。

 (にく)い演出だと思った。

 

『お前、本当に良い身体(スタイル)してんなぁ。俺の中でもトップに入るぜっ!』

「やめてよ。リズウィ、そんなに見つめないで、恥ずかしいわ」


 ふたりの会話は物理的には成立していないのに、精神面で会話は成立していた。

 雰囲気で互いに何を思っているのか大体解るのである。

 裸身のリーザに対してリズウィだけが服を着ている状況が気に入らない。

 リーザは自分だけが不公平な立場なのを快くよく思わず、リズウィの衣服に手をかける。

 そして、リズウィを脱がす最中、リーザは今更ながらにリズウィの主砲の大きさ(サイズ)に気付く。

 リーザはそれほど経験豊富な女性では無かったが、それでも過去に支配の魔法薬の影響下にあったとき、ジュリオ皇子のソレ(・・)を見た事もある。

 その皇子のソレ(・・)と比較しても明らかに比べるのがおかしいぐらいのサイズ・・・

 

『へん。気になるか・・・それじゃあ、拝ませてやるぜ!』


 リズウィも自分の逸物に自信はあり、女性からせがまれれば幾らでも見せてやる事にしている。

 

ドドーン


 まるでそんな擬音が似合うほどのビッグサイズの主砲が露わになる。

 

「な・・・ナニこれ!? 本当にこんなものが・・・」


 驚きを通り越して戦慄してしまうリーザ。

 しかし、リズウィは容赦しなかった。

 

「へへへ、どうだ! すごいだろ!」

 

 彼女に見せつけて自慢するリズウィ。

 そして、ふたりは・・・ひとつになる・・・

 主砲の性能をいかんなく発揮して、リーザを満足させた・・・






 こうして、男女の関係となったふたりは余韻に浸った。

 

『・・・ダメだ・・・コイツを妊娠させて、父親になるもの悪くねぇ~と思っちまった・・・俺もヤキが回っちまったなぁ・・・』

「リズウィ。何か言った?」


 言葉を発しても翻訳魔法の効力が切れている現在、互いの会話は成立していないが、それでもリーザはリズウィに話しかけてくる。

 そんな健気な姿がとても可愛く映り、リズウィも彼女の言葉に愛撫で返してやる。

 

「リズウィったら・・・ウフフ」


 言葉の通じないふたりだが、身体に触れてリーザが満足した事は理解できるリズウィ。

 

『こんな生活も、悪くねーか』


 リズウィはそんな感慨に浸り、納得と共に呟きつつも、ふたりの時間はゆっくりと過ぎていく・・・

 

 

 

 

 

 

 それからどれぐらい過ごしたのかは解らないが、日はすっかりと落ちて、夜の帳が降りた。

 当初の計画を大幅に超えて、小島で夜を迎えるふたり。

 現在は身体を水でキレイに洗い、服を着た状態に戻っていた。

 季節が秋に移ってきたと言う事もあり、陽光の明かりが無くなると一気に気温は下がる。

 適当な落ち葉と小島に残る枯れ木を集め、火炎魔法で火を灯し、暖を取るリズウィ達。

 探索の目的としていた『黄金ユリ』の球根は採取できたが、彼らはまだこの小島に留まり続けていた。

 その理由は沼の周囲がスライムに溢れていたからである。

 焚き木の薄暗い光でも半透明の魔物が岸辺で蠢くのは視認できる。

 

「この様子じゃ。小島から出るのは簡単には無理だわね」


 諦めた口調でそう述べるリーザ。

 勿論、言葉の正確な意味はリズウィに伝わらないが、それでも彼女が何を危惧しているのかは感じられた。

 

『そうだなぁ。まっ、助けが来るのを気長に待ちゃいいよ』


 リズウィはそう述べて大の字になって寝そべる。

 リーザもリズウィの喋る東アジア語は解らないが、彼の行動からどんな気持ちなのかは理解できた。

 これが互いに愛し合った結果なのだろうか・・・

 

「絶対に呑気な事を考えているわよね。肝っ玉とアレ(・・)が大きいのは認めるけど、ちょっと楽観視し過ぎじゃない? 私は嫌よ。こんな所で死ぬのは!」

『大丈夫だ。落ち着けよ、リーザ。確かに冒険者組合からの助けは期待できねーが、俺には強力なバッグがいるんだ・・・』


 そう言うリズウィには当てがあった。

 姉のハルから施術して貰った翻訳魔法。

 過去にそれが切れた時、何処からともなく姉が現れて再施術して貰った。

 つまり、何らかの手段で自分に施術した翻訳魔法の効力が切れた事を彼女は察知しているに違いない。

 そして、姉は自分がどんなところに居ても必ず現れる。

 それも何らかの手段を持ち、自分の現在位置を把握している事なのだろう。

 そう考えていると、自分達に近付いてくる大きな気配を感じた。

 夜の帳でもそこには絶対何かが居ると解る存在感。

 夜空の暗い闇に巨大な何かが見えたと思った直後、事態は急展開する。

 

ボンッ、キュゴーーーーーッ!


「キャッ、何? 何が起こったの!?」


 突然、白銀の光線の爆発が起きて、岸辺のスライムが吹っ飛んだ。

 慌てるリーザだが、彼女が無駄に暴れないようリズウィは身体を押さえつける。

 やがて光の洪水が晴れると、その光線の主が視認できた。

 巨大な銀龍が夜空に浮かんでいたのだ。

 それを見てリズウィは慌てない。

 

「よっ、ジルバのおっさん! 態々(わざわざ)、来てくれたようで悪りぃーな」


 軽く返すリズウィ。

 これに恐れ戦くのはリーザだ。

 彼女にしても銀龍とは恐怖の対象に相応しい魔物。

 まともな人類ならば、この魔物を見て脅威を感じる方が正常なのだ。

 対する銀龍の方は軽い調子で返してくるリズウィに呆れているようだ。

 

「リズウィよ。健在で良かったな。人間とは脆弱な生物なので、ちょっとしたことで死んでしまうものだ。もし、既に死骸となっていれば、我の再生の魔法を使う必要もあると考えていたところだ」


 銀龍ジルバの言葉は魔法で頭脳に直接話しかけてくるので翻訳魔法の必要はない。

 

「まったくよ。街でうろうろしているぐらいならば、気分転換に丁度いいかと思って放置していけど、私も判断が悪かったわ」


 銀龍の背から白仮面の魔女が顔を出す。

 それはリズウィもよく解る姉のハルである。

 そのハルと目の合ったリーザはバツ悪く、サッとリズウィの背に隠れた。

 そんな彼女の様子をハルが見逃す筈もない。

 

「あら? エリザベスと一緒にいるのね・・・そして、結構親密そうに見えるわ? これは一体どういう訳かしら?」


 ふたりの心を読み、既に大体の事情を察する白魔女ハルであるが、一応本人の口からも説明を求める。

 

「あ・・・俺はリーザと付き合う事にした」


 後ろに隠れたリーザを守るようにしてそう述べるリズウィ。

 しかし、それにハルは否定的だ。

 

「莫迦な事を言わないで! アナタはすぐそうやって女の子に手を出すんだから。冷静になりなさい!」


 姉から叱られて頭を縮めるリズウィ。

 そんな親密性の高いゼスチャーからリズウィとハルが本当に兄弟なのだと確証を得るリーザ。

 

「とにかく、ここから帰るわよ。ジルバが来てくれたからエクリセンまで五分とかからないわ」

「駄目だ。俺達はスケイヤ村で宿を取っているんだ。移動するならばスケイヤ村で降ろしてくれよ!」

「却下」


 白魔女ハルは拒絶した。

 

「なんでだよ!」

「そのスケイヤ村の宿でアナタ達は何をするつもり?・・・いいわ、別に言葉に出さなくても。そうやって後先考えずに女性と寝てばかりいると、また妊娠騒ぎを繰り返すわよ。次もお母さんを怒らせたいの?」

「ぐ・・・」


 ハルからそう指摘されると反論し難い。

 先程までもリーザとは熱烈に愛し合っていたのだから、その行為を宿で続けてしまう可能性も高かった。

 特に姉からの『妊娠』というキーワードは効いた。

 今回もそれを自覚する事をやってしまっているからだ。

 

「とくかく、エクリセンへ帰る。いいわね!」


 有無を言わせないそんな白魔女ハルの態度に、この場で誰もが逆らえなかったのは言うまでもない。

 

 

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