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白い魔女と敬愛する賢者たち(ラフレスタの白魔女・第三部)  作者: 龍泉 武
前半編 第一章 黒い稲妻の勇者の冒険
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第八話 戦争の残滓と勇者の悪い癖

 季節は四月になり、春を迎え、勇者パーティの姿はアリハン山脈を越えて西の国境付近のフロスト村まで来ていた。

 フロスト村とは先のエクセリア戦争の舞台となった『境の平原』の入口付近にある村だ。

 

「これが戦いの痕跡か・・・」

 

 勇者リズウィは村長に案内され、村の高台から西の『境の平原』に続く風景を眺める。

 そこには雪解けで草原が所々で顔を覗かせる風景の中、異質な深い谷が三つ見られた。

 

「ええ、あれが新たにできた谷『決別の三姉妹』です。これは銀龍スターシュートによって造られたとされています」

「本当に深い谷ができている・・・・前にラゼット砦に行った時はあんなの無かった」


 村長にそう素直に応えるリズウィ。

 リズウィが応えるように、そこにはまるで龍の爪で抉られたような横薙で三本に走る深い地割れ。

 その幅はひとつが人間五人分ぐらいあり、橋なども掛かっていないため、ここから西のエクセリア国領に行くのは困難である。

 以前『列車砲』を運搬していたレールも谷の前で寸断され、大きく折れ曲がり通行困難なのは一目瞭然。

 遠くにラゼット砦が見えるが、戦いで大きく崩壊した砦の外壁は敵側による復旧工事が進められているのが解る。

 正確な工事の進み具合までは解らないものの、それでもそう遠くない将来、敵側は復旧を済ませ、また難攻不落の要塞として君臨するのは容易に予想できる。

 

「あのラゼット砦で、おっちゃん達が捕虜になっているのか?」


 リズウィはそんなことを漏らすが、それに律儀に応えてくれるのが現在のフロスト村の村長だ。

 

「いいえ、斥候からの情報によると、捕虜となった彼らはエクセリア国中を転々とさせられているようです。幹部は大方エクセリア国の首都エクリセンの城の地下牢に捕らえられているとか・・・」

「へぇー、こんなに通行困難な状況でも情報だけは入ってくるんだなぁ。さすがボルトロール王国の諜報網は素晴らしい」

「勇者リズウィ様。そうでもありません。現在は敵首都エクリセンに侵入していた間者のほとんどが摘発されております。残る数少ない諜報員から入る情報は細々でして、我らの知りたい情報は十分ではありません」

「なるほど、敵側は余程に優秀なスパイ発見器を持っているようだなぁー」

「リズウィ。あんまりいい加減な事ばかり言っていると笑われるわよ」


 アンナがいい適当な発言をするリズウィに注意を投げかける。

 

「うっせぇな、アンナ。そんな事よりも、これで本当にエクセリア国側に侵入するのは難しくなったぞ」

「アンタ! もしかして、本当にエクセリア国に侵入するつもりだったの!?」

「そのつもりだったが・・・しかし、あの谷を超えるのは困難だ・・・」

「アンタ、莫迦! 国王様との約束を破る気!?」

「虎穴に入らずんば虎子を得ずだよ。向こうに行かないと何も解んねー、だったらやるしかねーじゃねぇーか!」

「駄目よ。そんなの認められないわよ!」


 今回だけは駄目だと強く否定するアンナ。

 それもその筈、今回は国王からの厳命もあったが、それ以上に彼女(アンナ)自身が『銀龍』という存在を恐れているからだ。

 村の高台からもハッキリと解る境の平原に突如出現した三重の深い谷。

 『決別の三姉妹』と呼ばれるその谷はフロスト村からラゼット砦に続く街道を南北に走り、完全に分断している。

 これは人間の技でできるモノではなく、ここに銀龍の介入があった証拠として納得できるものであった。

 これを迂回して向こう側に行くには、境の平原をかなり南下して、辺境の森周辺まで遠回りする必要がある。

 街道の整備されていない場所の旅は魔物の出現も考えられるため、旅の装備が整わない勇者パーティだけでは行動が難しい。

 結論、ここを超えてエクセリア国側に行くのは困難である。

 デメリットが多すぎる。

 ボルトロール王国的な損得勘定を素早く計算したアンナはリズウィの「向こう側に行きたい」という欲求に大反対した。

 リズウィの事をいつも肯定しているアンナとっては珍しい行動である。

 それはリズウィにも伝わった。

 

「・・・チッ、アンナまで反対しているなら、しゃーねぇーか」


 リズウィもこう見えてアンナの事を頼りにしているのだ。

 そのアンナから強い拒絶があるとすれば、その意見を無視する訳にもいかない。

 ホッとするアンナやガダル達であったが、ここで、野外からその意見を覆そうとする者が現れる。


「勇者様。エクセリア国側に潜入するのですか? それならば、私を連れて行ってください!」


 ここで高台の下からそんな女性の声が聞こえた。

 リズウィが下を確認してみると、そこには村の衛士に阻まれながらも、勇者パーティに訴えかけるひとりの女性の姿が目に入った。

 華奢ですらりとした高身長の女性であり、顔立ちはそれなりに整い清潔感もある。

 そこらじゅうに居る一般民では無いと見た。

 

「君は?」


 リズウィは彼女の事が気になり、そんな事を問うてみる。

 

「私はフェミリーナ・メイリール。私の姉は西部戦線軍団グラハイル・ヒルト総司令の専属秘書をしていました」


 何処かで見た彼女の顔だと思っていたが、その台詞で納得する。

 常にグラハイル・ヒルト総司令の傍らにいた有能な秘書女性の顔を思い出すリズウィ。

 

「ああ、俺はカロリーナさんの事をよく知っている。君はその妹なのか?」

「はい」


 彼女は頷く。

 顔には少し幼さが残っていたが、それでも凛々しく意志が強そうな瞳と長い金髪は有能秘書女性の姿を彷彿させた。

 

「その妹が俺に何の用事だ?」

「勇者様がエクセリア国に潜入するならば、私を一緒に連れて行って下さい。姉を救出したいのです」


 彼女からの懇願を聞かされガダルとアンナが頭を抱える。

 情に熱いリズウィに、ここで面倒がやってきたと思ってしまったからだ。

 しかし、リズウィは・・・

 

「・・・すまない。俺達はエクセリア国に潜入できない。これは国王の命令。銀龍を刺激するなとも言われている。今回、俺がここに来たのは情報収集のためだ」

「そ、そんな・・・」


 リズウィが決定事項を伝えると、ヘナヘナヘナとその場に崩れるフェミリーナ。

 逆に、ガダルとアンナはホッとした。

 ここで変なこだわりを見せて、エクセリア王国に侵入すると言い出さないか危惧していた。

 なまじ実力があるだけに、時折我を通そうとするリズウィ。

 しかし、今回のリズウィはとても聞き訳が良かった。

 さすがの彼もここで我を通すと王に反逆するとみなされると思ったようだ。

 だが、このフェミリーナと言う女性が訴えているのは正しい・・・そんなことを思うリズウィからなかなか次の言葉が出なかった。

 そんな状態のリズウィの腕をアンナが引っ張る。

 

「・・・リズウィ・・・行きましょう。ここに居てもこれ以上の進展は無いわ」


 アンナの言葉に従い、勇者パーティは移動を始める。

 打ちひしがれるフェミリーナの姿が気になるリズウィだったが、ここでアンナは強く引っ張る。

 次にリズウィ達はフロスト村に置かれた軍務司令部へ入り、運よく逃げ延びた西部戦線軍団の構成員と面会した。

 だが、ここで得られる情報も多くなく、銀龍スターシュートの脅威を聞くばかり。

 

「銀龍は恐ろしい・・・必殺の光線で俺の上官は一秒で死んだ・・・」

「あの銀龍の背には白い魔女が乗っていた。絶世の美女だ・・・ああ、俺らは彼女のいるエクセリア軍に戦いを挑んだのが間違いだった。あの魔女こそ銀龍と盟友関係。敵にしてはならない存在!」

「俺はエルフを見たぞ。エルフの親子も銀龍の背に乗っていたんだ。俺達は知らず知らずに辺境にも戦いを挑んでいたのかも知れない。だから銀龍が怒って戦場に駆けつけたのだ。きっとエクセリア国と辺境の部族は同盟を結んでいるに違いない」

「俺は境の平原で敵の捕虜を移送している馬車に銀龍と魔女、そして、黒い騎士が襲い掛かったのを見た。きっとあの馬車に乗っていた連中は生きていないだろう・・」


 戦場の惨劇を目にして命からがら敗走してきた兵士達が各々に好き勝手な事を言う。

 勇者リズウィ達はどの情報も眉唾だと思いながらも一応調書にまとめさせる。

 

「リズウィ、だいたい情報はまとめたわよ。次はどうするの?」


 アンナが事務的な仕事をすべて終え、次の指示をリズウィに仰ぐ。

 

「そうだなぁ・・・これ以上に目新しい情報はここに無さそうだ。本当はエクセリア国側に潜入して調査をしたいところだが、それも無理だし・・・さてどうするか?」

「それならば、偶に来るエクセリア国側からの旅人に情報を聞かれるのがよろしいかと思います」


 村長はそんなことを進言してくる。

 

「旅人が来る? あんな大きな谷が街道を阻んでいるのに?」

「ええ、それでも偶に来るんですよ。商人とか、どうしてもボルトロール側に行かなくてはならない事情のある旅人は数少ないですが、ゼロではありません。南や北に大きく迂回すると、一応あの『決別の三姉妹』という谷は回避できますので・・・」

「解った。明日はその旅人達から情報収集してみよう」

「了解しました。明日の朝までに目ぼしい連絡先を宿へ連絡します」


 こうして、今日はお開きとなる。

 

 勇者リズウィ達は宿泊する宿に戻ると、バーティ行動はここで一端解散することにした。

 ガダルとパルミスはふたりで酒を楽しみたいと言い、シオンはこのフロスト村にある教会の神父に顔出しする必要があるらしく、別行動となる。

 こうして、リズウィとアンナのふたりだけで宿に併設された食堂で夕食を摂る事になった。

 

「ようやく、ふたりきりになれたわね」


 馬車旅でパーティ行動が続いていたアンナはここで嬉々とした表情に変わり、リズウィにそんなことを(ささや)いてくる。

 彼女としてはリズウィと関係を深めたいのだが、なかなかそのチャンスが巡って来なかった事に焦っていたりする。

 

「そうだな。アンナとふたりだけで食事なんて久しぶりかも知れない」


 リズウィは呑気にそんなに事を応える。

 

「ね、ねえリズウィ。私、今日お酒飲みたいなぁ~」


 珍しくアンナからい酒の誘い。

 これは彼女の母からの入れ知恵である。

 男性をその気にさせるため、アルコール摂取を勧めた。

 

「お? アンナが呑むなんて珍しいな。俺も偶には呑みたい気分だった。それじゃあ呑むか?」


 リズウィは特にアンナの意図を気にする事も無く、店主に酒を頼む。

 リズウィも酒は強い方ではないが、それでも飲めない事はない。

 ガダルやパルミスのように浴びるほど飲むのは好まないが、アンナが呑みたいと言うならば、付き合う程度には飲める。

 

「勇者様、解りました。特別に美味しいお酒を準備させていただきます」


 宿の店主は勇者からの注文を快諾し、この宿で所有している最高の酒を提供する。

 勇者リズウィは特等臣民である。

 それはボルトロール王国で最高の階級であり、一般論からしてお金持ちなのだ。

 この宿はフロスト村で最高の宿ではあるが、それでも簡素な国境の一村だ。

 店主は久しぶりの上客に稼がせて貰おうと考えた。

 上等な食材を使った格別な料理と共にこの地方で有名な銘酒を出す。

 

「んん。これ美味しい!」


 琥珀色の果実酒はアンナの口に合ったようだ。

 しかし、ここでアンナの計算違いが発生する。

 この甘くてアルコール純度の高いその酒は、別名、淑女殺し(レディ・キラー)と呼ばれていることを・・・

 しばらく酒と料理をふたりが楽しんでいると・・・


「ほわぁぁぁ、リズウィーぃ。ふわふわするよー」


 たいしてアルコール耐性の無いアンナは数杯でできあがってしまい。

 目がもう虚ろだ。

 

「おい、アンナ。まったく、調子に乗ってカパカパ飲むからだぜ」


 リズウィは注意したが、時既に遅く、アンナはもうフラフラになってしまった。

 

「あーーん。リズウィ、好きーー、イチャイチャしましょーよ」


 食堂と言う公の場にもかかわらず、リズウィに甘えてくるアンナ。

 

「おい、やめろよ、アンナ。ここはいろいろな人の居る食堂だ。みんなからの視線が痛いだろう」


 自分に絡んで来ようとするアンナを振り解き、しっかりしろと述べる。

 食堂を見ると他の宿泊客や宿の主人がニヤニヤとしている。

 

「あーー駄目だ。俺達、見世物になっちまっている。アンナを寝かすかぁ」


 リズウィは使いものにならなくなったアンナを退場させる事にした。

 彼女歩かせようとしたが、足元がおぼつかない。

 意を決して、アンナをお姫様抱っこする。

 

「ほぇ? キャッ、リズウィ。超嬉しいんだけど!」


 子供のようにキャッキャッと(はしゃ)ぐアンナを黙らせて、リズウィは宿の食堂から退出した。

 

「勇者様、どうかお楽しみください」


 宿屋の主人がサムズアップして合図を送ってくるが、リズウィは・・・

 

「やるかっ! 今日はそんな気分じゃねーんだよ!」


 と恥ずかしさが勝って否定をした。

 リズウィにとってアンナとは戦友であり、相棒だ。

 可愛い女性である事は認めるが、今日の今、抱きたいかと問われるとそこは微妙である。

 過去に勢いで抱いてしまった事はある。

 だから、リズウィにとってアンナという女性は既に抱いたことのある女性のひとりであり、そこまで執着していかなったりする。

 

「あーん。リズウィ、好きー」


 運ぶ途中もリズウィに好意を振り撒くアンナ。

 小柄でも、女性の身体をしているアンナ。

 柔らかい感触はリズウィを刺激するが、それでも今のリズウィをその気にさせるまでは至らない。

 そこまでアンナの女としての武器は発達していなかった。

 

「ほら、アンナ、ここに寝ていろ。水はここに置いとくからな」


 そんな事を言い、アンナを部屋のベッドに寝かせた。

 勿論、彼女の部屋だ。

 

「あーん、リズウィ、行っちゃ嫌だぁ!」


 アンナはリズウィを逃すまいと、彼に抱き着く。

 

「おい、おい、今日はもう休め、長旅で疲れているだろう。俺も疲れている。また今度一緒に寝てやるから・・・」

「やだ。やだ。やだ」


 駄々をこねるアンナ。

 酒にやられて幼児化してしまっている。

 

「おい、おい、引っ付いてくるな。胸が当たっているぞ」


 アンナの小さな身体に不釣り合いな大きな胸がリズウィを誘うが・・・今日のリズウィはその果実に手を出す事は無かった。

 

「アンナ、今日は寝ていろ。明日も調査する事は多いからな。寝坊するなよ」

「そ、そんなぁ~、リズウィーっ」


 彼を求めようとする腕を掻い潜り、リズウィはパッと回避する。

 

「リズウィの意地悪ーっ!」


 物足らないとアンナは抗議するが、それでもリズウィは上手く逃れた。

 

「じゃあなアンナ、また明日」


 まだ抗議の声が聞こえてきたが、それも構わずリズウィは彼女の部屋の扉をそっと閉める。

 

「ふぅー」


 息を吐き、精神的な疲れを吐き出すと、リズウィはもう食堂に戻る気力はなくなっていた。

 

「・・・俺も寝るか・・・」


 自分の部屋に戻り、ベッドに身を投げ出す。

 酒を飲んでいたこともあり、睡魔がすぐにやってきた・・・

 

コン、コン


「・・・ん?」


コン、コン、コン


 自分の部屋をノックする音が聞こえた。

 薄目を開けてみると、周囲はまだ暗く夜半であることだけは直ぐに解った。

 アンナが目を覚ましたのかと思った。

 

「どうした。アンナか? 気持ち悪くなったのか?」

「・・・」

「遠慮なく開けていいぞ」

 

 入室を許可した。

 

ガチャッ

 

 その言葉に従って、扉が開けられた。

 

「うぉ!?」

 

 ここで、リズウィは驚きの声を挙げる。

 何故ならば、ドアを開けたそこに立っていたのは、白いケープを纏う見知らぬ女性だったからだ。

 顔立ちは整っており、キリっとした目元が美しい。

 そして、ケープの隙間から覗く衣服は胸元を際どく晒したワンピースのような意匠のドレスだ。

 女性のふたつの乳房を強調するその衣装は、夜の月明かりも作用して、怪しくリズウィを誘っていた。

 アンナよりも迫力のある雌の魅力を放つ女性。

 

「お前は誰・・・いや、知っている。昼間に会ったな・・・」

「私はフェミリーナ・メイリールです。勇者リズウィ様」


 そう、この女性は昼間リズウィにエクセリア国に行くならば同行させて欲しい、自分の姉を救出して欲しい、と懇願していた女性だと思い出す。

 見たところ年齢はアンナと同じぐらいだが、衣装のせいか身体はもっと成熟しているように見えた。

 

「こんな時間、何の用事だ?」


 リズウィはだいたい察しながらも、一応、聞いてみる。

 

「私は・・・勇者リズウィ様のために情報を持ってきました。エクセリア国から来た旅人の場所を知っています・・・」

「ああ、ありがとう。でも、それは明日で良いぞ」

「・・・それと、もうひとつ・・・アナタに・・・惚れました」


 フェミリーナはそう言い部屋に入ると、後ろ手でゆっくりと扉を閉め、被っていたケープをゆっくりと脱ぐ。

 するするすると彼女の肌を滑るようにケープを落ちると、そこには長い直毛の金髪が(はだ)け、肩口まで出したワンピースの隙間から覗く白い肌が艶っぽい。

 明らかに男を誘う女の姿である。

 

「・・・やっぱり・・・でも夜這いは良くないぞ。それは美人の安売りだ。お前がここで俺と寝たとしても、自分の思いどおりにならないかも知れないぜ?」


 リズウィは彼女を美しいと認めたが、それでも簡単に利用される訳にはいかないと先に釘を指しておく。

 

「ええ。私はそんな陳腐な取引をしません。私は娼婦ではありませんから・・・」

「・・・」

「ただ、アナタが好きになった・・・そんな理由で、一晩抱いて頂くことはできませんか?」

「見返りは求めねぇって事か・・・」


 フェミリーナは頷く。

 リズウィは少し考えた。

 確かにこの目の前のこの女性は白人美女である。

 顔はまだ幼いようだが、それでも彼女の姉であるカロリーナ・メイリールは西部戦線軍団で総司令に仕える有能秘書で、西部戦線軍団の中でも美人として有名な女性。

 その妹であるフェミリーナも将来は大した美人に育つと思われる。

 そして、その身体から発せられるエロス。

 際どいワンピースの衣装は、彼女のふたつの柔らかそうな乳房が細い身体の上に乗っている事をリズウィに想像させるに十分主張している。

 リズウィも正常な男子である。

 そんなグラマーな美人から誘われれば、それに応えたいと思ってしまう。

 今日は酒も入り、アンナから中途半端に誘われていたので、欲求不満も確かにあった。

 ここで、彼はちょっとぐらいならば、いいかなーと思ってしまう。

 

「いいだろう・・・どうして俺が勇者と呼ばれているか、ベッドで教えてやるよ」


 リズウィはそう言って、フェミリーナの腕を取る。

 


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