振られた直後に疎遠になっていた幼馴染なギャルに再会したら優しい言葉をかけられて惚れそう
ラブコメの練習で書いてみました。短編としてまとめたので、話の流れがちょっと駆け足かもしれません(とくに最後)。それではどうぞ。
ギャルな幼馴染は勝ちヒロインです。
いつも誤字報告ありがとうございます。
ランキングに入ることができました。皆様、評価ありがとうございます。
「ごめん。寺谷とは付き合えないな~。」
「……そっか。いきなり呼び出してごめんね。……それじゃ。」
「じゃね~。」
そう言ってさっさと去っていく彼女。
あまりにあっさりした様子が、振られて落ち込んだ精神に、さらに追い討ちのようにのし掛かる。
俺は寺谷ユウ、高校2年。
ここは放課後の高校の校舎裏。俺は彼女を告白するために呼び出し、あえなく振られたところだ。
相手はそこそこ仲の良かったクラスメートで、クラスで一番ではないが2番目には可愛い女の子。
絶対に付き合えると思っていたわけではないが、そこそこ自信はあった。
結果は惨敗。脈もまったくなさそうだ。
「はあ。」
思わずため息が出る。俺は鉛のように重たくなった足をなんとか動かしながら、鞄を取りに教室に向かった。
◇
教室に近づくと数人の話し声が聞こえる。
まだ、何人か残っていたみたいだ。
教室に近づくとはっきりと聞こえるようになった。
その内容に思わず足が止まる。
「リカ、寺谷の用事って何だったの?」
「ん? 告白。当然断ったけどね。だって、うちの狙いB組のタケルくんだし。」
「あはは、マジかー。だめだよ、リカ。寺谷、女の子に慣れてなさそうじゃん。ちょっと優しくしてあげたら勘違いしちゃうよ。」
「そだね、今度から気を付けるわ。タケルくんに誰にでも優しいあたしをアピルために、おとなしそうなやつに優しくしてたんだけどね~。」
俺はそうだったのかと、自分の勘違いが情けなくて恥ずかしくて、そのまま教室には入らずに、急いで男子トイレに向かう。
誰にも見られずにとにかく一人になりたかった……。
◇
かなり時間が経ってから教室に戻る。そっと中の気配を伺うと、もうだれもいなかった。
俺は鞄をとると、とぼとぼと校舎から出る。
外は日も沈みかけ、暗くなり始めていた。
俯いて、重たい足をなんとか動かして家の近くにつく頃には、辺りは暗くなっていた。
「マジしんどい。明日、学校行きたくねえな。」
知らず知らずのうち、呟いていた。
俯き加減だった顔を少し上げてみる。ようやく家が見えた時、向こうから歩いてくる人影が見えた。
「「あっ。」」
俺はそれがだれか分かって、思わず声を上げる。向こうも同じだったようで、声が重なった。
人影は隣の家に住んでいる、今は疎遠になった幼馴染の遠野マヒルだった。
◇
彼女と少し目があった後、俺は気まずくなり、目を逸らす。なにせ、中学の時に喋らなくなったのは俺からだったから。
昔は好きだった彼女。
家が隣同士、年も同じだった彼女とは小さい頃はいつも一緒に遊んでいた。
中学一年の時、可愛くなっていく彼女に告白しようとした矢先、別のやつに先を越され、そいつと付き合うことになったのだった。
最初は彼女も変わらずに話しかけてくれていたのだが、悔しさと嫉妬もあり俺から離れていったのだった。
今日告白に踏み切ったのは、待って彼女を取られた苦い過去の経験が理由の一つでもあるのだが……、まあ、結果は散々だ。
その後、俺は勉強しかすることがなく、県内トップの進学校へ行くことになり、彼女は恋愛とファッションにはまって、制服だけがかわいい、偏差値の低い女子高へ行ったと聞いたのは、彼女の叔母さんからの情報だ。
暗がりであまり見ていないが、短いスカートに高校の制服を着崩した、見るからにギャルな彼女。髪をショートボブにした彼女は昔と変わらずにアイドル並みにかわいらしいかった。
昔は黒髪、ストレートのギャルとはかけ離れていたが。
俺は立っていた彼女の横を無言で通り過ぎる。
通りすぎた時、彼女が一言、声をかけてきた。
◇
「……ねえ、あんた、どうしたの?」
俺は振り返って彼女の顔を見る。
彼女は昔の面影を残したまま、心配そうな顔で俺を見ていた。
「あんた、死にそうな顔してるよ。何があったの?」
そう言って、近づいて来て、顔を覗き込む。
無防備に近づけられた顔があまりに近く、俺は恥ずかしくなり、思わず顔を逸らす。
彼女はムッとした顔で、俺の腕を掴むと引っ張った。
「ちょっと来なさい。」
そう言って近くの公園に連れていかれる。
ベンチの前にいくと、彼女は鞄からハンカチを二つ取り出し、ベンチに敷いた。
「ほら、こっち座って。早く!」
そう言われ、俺はベンチに座ったのだった。
◇
あの後、今日、さっきの出来事を根掘り葉掘り聞かれ、その感想はあっさりしたものだった。
「なんだそんなこと。心配して損しちゃったわ。」
それを聞いてムッとした俺は思わず彼女に言い返していた。
「そんなことって、俺にとっては一大決心だったんだぞ!」
彼女はしらけた感じて、切り返す。
「でも、あんたは付き合えるとは思ってなかったんでしょ? ショックを受けてるのはその後の自分の見る目のなさね。」
「うっ!?」
短時間で冷静に分析され、二の句が繋がらない俺。
ため息の後、その場でがっくり項垂れる。
そんな俺を見た彼女はあはははは、と楽しそうに笑い。
「まあ、さっさと忘れて、次行きなさい。次。」
笑顔のまま、そう言うのだった。
俺は話してすっきりしたからなのか、それともこいつの言葉のおかげか、はたまた、疎遠だった幼馴染と久しぶりに話せたからなのか。
さっきまでの暗い気持ちが吹き飛んでいて、彼女に大人しく従い、頷くのだった。
◇
「サンキューな。」
彼女にそう言って立ち上がろうとする俺の腕を彼女はガシッと掴む。
まだ、逃がさないというように。
「え? なんで?」
彼女はさっきまでとはまた違った笑顔で俺を睨み付けていた。
「うーん、このチャンスを逃がすと次は無いかもしれないしね。私、あんたに聞きたいことがあるの。」
座ったまま、体をぐっとこちらに近づける彼女に、距離を保たんと後ろにのけ反る。
「あ、でも、ほら夜も遅いし、お前の母さんも心配するだろ。な、帰ろうぜ。」
そう言うと、彼女は無言でスマホを取り出すと、片手で素早く操作する。
ほとんど時間を置くことなく、彼女のスマホが二回震える。
彼女はスマホをこちらに見せる。画面にはコミュニケーションアプリのMINEのメッセージが表示されていた。
マヒル 《ちょっと、隣のユウと話してくる》
母 《り》
俺が読んだのを確認したのか、スマホの画面を指で動かし、再度見せてきた。
マヒル 《ちょっと、ユウをお借りしますね》
俺の母親 《り》
なんで俺の母親のアカウントまで知ってるのかとか、返信早すぎないかとか、いろいろ言いたいことはあったけれど、退路を絶たれたのだけは理解できた。
俺は彼女が何を聞きたいかを知りながらも、彼女に聞く。
「で、なにが聞きたいんだ?」
きっと勘違いして、今も悲しそうな顔を我慢している彼女に申し訳がないなと思いながら、疎遠になった理由をどう話そうか、考えていた。
◇
話し終えた後、俯きながら言う彼女の言葉は短かった。
「へたれ。」
言い返そうかと頭をよぎったけれど、彼女の顔を見て言うのは止める。一時疎遠になったとはいえ、長い付き合いだ。本気で無いことぐらいは分かる。
なので、俺は軽口で返すことにした。
「はいはい、へたれですいませんね。」
「……」
「あー、その、あの時の彼とは今も付き合ってんのか?」
無言の返事に気まずくなり、話を繋げようと話題を振った俺は彼女の顔を見て、話題のチョイスをミスしたと後悔した。
彼女の顔は、こいつは何を言っているんだ、とばかりに無表情で見られた。
少しして、彼女はため息をつくと、
「とっくに別れたわよ。よく知った仲ならまだしも、中学の恋愛なんか長続きするわけないでしょ。」
そう言ったのだった。
彼女はまた俯くと、ボソボソと呟く。
「えっと、どうした?」
「ずっと嫌われたと思ってたんだから!」
自棄になったように叫ぶと抱きつかれた。
彼女はそのまま耳元で呟く。
「ねえ、私たち付き合う?」
思わずそのまま、はいと返事をしてしまいそうになる誘惑を我慢する。
これが女の子慣れしたやつだったら、はいと言ってキスでもしていたんだろう。
でも、俺は流されるままに返事をするのはいけない。そう思った。
抱きついたままの彼女を腕で押し返し体をそっと離す。
「あっ。」
悲しそうな彼女の声。悲しそうに、目を逸らす彼女を見て、俺は疎遠になる前と同じ彼女の呼び名で返事をした。
「マヒルと付き合いたい。でも今すぐには付き合えない。だから告白するまで待っていてくれ。」
俺の返事を聞いて、ポカーンとする彼女。徐々に顔が怒りに満ちてくる。
「はあ? それキープってこと? 堂々とキープ宣言? あんたごときが!? あたし、勇気出して告白したのに?」
その場で立ち上がって腕を振るい上げる。
俺は両手で彼女を宥めつつ、説得する。
「正直、すぐにでも付き合いたい。この気持ちは変わらないと思ってる。でも、もう少し今のマヒルを知りたいんだ。」
彼女の目をじっと見る。彼女はムッと拗ねた顔になり。
「ぐっ、このへたれ。……まあ、ユウらしいか。今度は隣空けて待っててあげるから、早めにしてね。」
そう言って笑顔を見せたのだった。
◇
あの後、二人で一緒に帰り、家の前で別れてそれぞれの自宅に帰った。
母親からは、早かったわね、へたれね。
と意味のわからないことを言われたが。
次の日、家の前には既にマヒルが待っていた。
「遅かったじゃん。一緒に行こ?」
そう言ってマヒルは俺の隣に並ぶと歩き始めた。
駅の近くに、昨日振られた彼女と男子高校生が二人でいるのが目に入った。
たしか彼がB組のタケルだったか。
彼女も、あっ、と俺に気がついた顔をした。
俺は彼女に軽く手をあげて、近づいた。俺は彼女に声をかける。
「昨日はありがとう。」
「は?」
意味がわからずにポカーンとする彼女。
それにマヒルが気になるのか、ちらちら見ている。
どうやら隣のタケル君もマヒルが気になるのかじっと見ている。
「えっと、おはよ、寺谷。ありがとう、ってどういうこと? それにそっちの彼女は?」
「ああ、昨日の後、いろいろあってな疎遠だった幼馴染のこいつと向き合えたんだ。そのお礼。」
「えっと、彼女ってこと?」
俺が説明する前に、マヒルが前に出る。
「そ、あたし、ユウの幼馴染、兼彼女なんだ。昨日、あたしからユウに告白したの。」
痛っ。
俺が訂正しようとすると足を踏まれた。
「あ、そうなんだ。……そっか。えと、良かったね、寺谷。」
「あ、ああ。ありがとう。」
痛みを我慢しながら返事する。
「それじゃあね。行こ、タケルくん。」
「あ、ああ。」
そう言って、手を引っ張って連れていった。
彼女らを見送った後、マヒルに話しかける。
「さっきのって?」
「ん? 嘘は言ってないわよ。彼女の後に小さな声で予定って言ったしね。それにああ言っておかないと余計な手間が増えそうだったからね。今のうちに潰しておいたの。」
マヒルはニヤリと笑う。
「あ、そうそう、ユウに友達を紹介してくれって来ても、断っておいてね。絶交させられるとでもいっとけば良いわ。」
「あ、ああ。分かった。」
「じゃ、行きましょう。」
そう言って歩き出した彼女に慌ててついていく。
昨日からさっきまでの出来事を思い返し、なんか、ずっと尻に敷かれる気がしたのだった。
まあ、後悔はしてないんだけどな。