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電子書籍化【完結】今度こそ幸せを掴みます! ~冤罪で殺された私は神様の深い愛に溺れる~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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第85話 私のものですか?

 見渡す限り荒廃していた土地は、鮮やかな緑に彩られていました。窪みには泉が湧き出して湖になっています。池と呼ぶには大き過ぎる湖の畔に降りて、中を覗き込みました。


 魚です! まだ小さいですが魚が泳いでいますね。水草も茂っているようで、水が緑色に輝いて見えました。美しい水辺から顔をあげると、見える範囲は小花が咲き乱れる草原です。大木が何本も立ち並び、木陰を作っていました。


「とても綺麗ですね」


「レティのお陰だよ」


「私は何もしておりませんわ」


 謙遜ではなく、心当たりがないのです。これはユースティティア様にも申し上げたのですが、荒れた風景と女神様のお話が悲しくて泣いただけでした。何か力を使ったり、すごい功績を残したわけではありません。アクア様を含めた多くの神様に感謝されるのは、なんだか居心地が悪いくらいでした。


「君のそういうところが、我々に欠けている部分だと思い知らされるな」


 カオス様は私を買い被っておられます。この方にかかると、私はすごく立派な人間になったような気がするので、危ないですね。気をつけないと自惚れた時は、誰も助けてくれないかも知れません。


「この風景を愛した女神様も、喜んでくださるでしょうか」


 消滅された女神様を思い、私は座り込んだ草原を撫でるように手を伸ばしました。お行儀が悪いですが、ごろんと寝転んで大地を抱きしめます。広げた両手に花や草が優しく触れました。


「喜んでいたよ」


「……消滅されたのですよね?」


 まるでご本人から聞いたように感じました。驚いて身を起こそうとして、腰の痛みに転がります。急な動きは厳禁でした。呻いた私に気づいて、カオス様が「ごめんね」と謝りながら抱き起こしてくれます。その腕に掴まりながら首を横に振りました。


「私もカオス様といる時間が好きなので、謝らないでください」


 愛し合う時間と表現できるほど、羞恥心が薄れていません。遠回しな私の表現に気づいて、カオス様がくすくすと笑い出しました。


「もうっ!」


「ごめん、意地悪じゃないよ。可愛いと思っただけ」


 耳元で囁くのは禁止しましょう。真っ赤になった頬と耳を両手で隠しながら、私は首を竦めました。今のお声は、誘う時と同じです。卑怯ですわ。


 いつの間にかカオス様のお膝に横抱きにされた私は、改めて風景を見回しました。ずっと遠くまで美しい景色なのに、何か足りませんね。


「小鳥……リスなどもいないのですね」


 魚は泳いでいましたのに。呟いた私に、カオス様がぱちんと指を鳴らしました。小鳥が歌って舞い、兎やリスなどの小動物が走り回ります。神様の奇跡とは、他愛もなく気紛れに訪れるもののようでした。


「この場所はレティのものだ」


「なぜですか?」


 蘇らせたとしても、神様の土地を人間が貰えるはずはないと思います。カオス様がお決めになったのでしょうか。


「元の持ち主であるユースティティアが、君に譲るって言ってたよ」


 え? 前の持ち主の女神様は消滅なさったのでは……ないのですね。

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