表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電子書籍化【完結】今度こそ幸せを掴みます! ~冤罪で殺された私は神様の深い愛に溺れる~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/88

第79話 家族で過ごす時間

 結婚式まであと一ヶ月、久しぶりに家族だけで過ごすことになりました。カオス様が、そういう時間も必要だろうと提案してくださったのです。


 隣にカオス様がいないと変な感じがします。王家の所有する邸宅ではなく、かつての公爵家に戻りました。屋敷はそのまま保存してあり、掃除も行き届いています。お父様は王座を譲ったら、この屋敷に戻りたいと考えているようでした。


「うわぁ……全然変わってないわ」


 16歳直前の私ですが、この屋敷に住んでいたのは8歳まで。王宮に暮らした年月は、この屋敷に住んだ時間に追いつきました。前世を入れればもっと長いのですけれど。


「この傷、レティがつけたのではなくて?」


 お母様の指摘に、私は擽ったい気持ちになりました。あの日、幼い私が椅子を動かそうとして、椅子ごと転んだのです。転がった私は顔をぶつけて、大泣きしました。痛かったかどうか、もう覚えていません。でも傷は私がぶつけた椅子の背もたれの形でした。


「私ですわ」


 恥ずかしいと思いながら認めると、お父様が思い出話を始めました。


「あの時は驚いた。鼻をぶつけて血が出てね。可愛い娘の顔に傷が残っては大変だと、すぐ医者を呼んだんだよ」


「そうよね、あなたが大騒ぎしたからレティが余計に泣いてしまって……ふふっ」


「お姉様、御転婆だったの?」


 ラファエルが無邪気に尋ねる。前世と違い、ずっとお母様がいてくださったので明るく育ちました。お父様によく似た金茶の髪を撫でて、弟を抱き締めます。この子ももう8歳になりました。


「少しね。覚えておいて、ここでラファエルが生まれたの」


 ここが私の知る、私の家。明るい日差しが降り注ぐ廊下を歩いて、自室だった部屋の扉を開く。家具はそのまま残されていた。子どもには大きすぎるベッドも、今の私だとぎりぎりね。


「残してあったの?」


「もちろんさ。レティの思い出だからね」


 お父様はそういうと、ぐずっと鼻を啜りました。やだ、まだ一ヶ月も先ですわ。釣られてお母様も涙ぐみ、ラファエルが変な顔をした。この子にはまだ実感がないのでしょう。


「今日はここで眠りたいですわ」


「今夜は一緒に寝ないか? この部屋は明日でも逃げないよ」


 お父様のお言葉に、私は手を叩いてくるりと振り返りました。いつも以上に明るい笑顔を心がけながら、賛同します。この屋敷に泊まるのは2泊だけ。忙しい政の合間を縫って、お父様が必死で作ってくださった時間です。泣いている時間は惜しいでしょう?


「なら、お父様とお母様の間で、ラファエルを抱っこして眠ります」


「あらあら、子どもみたいね」


「私はずっとお父様とお母様の子どもです」


 ふふっと笑って、お母様が作ってくださった人形を取り出します。侍女達が運んでくれた荷物から出した人形の髪を整えました。顔を上げると、幸せな家族がいて……私は愛されている実感に満たされました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ