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電子書籍化【完結】今度こそ幸せを掴みます! ~冤罪で殺された私は神様の深い愛に溺れる~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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第77話 祝福の声に微笑みを

 お店に着いてお祝いの品を渡します。お忍びなので、ちゃんと行列に並びました。初めての経験にわくわくしましたが、カオス様のお姿でバレて前を譲っていただいてしまい……申し訳ないですわ。いくつかパンを購入し、お父様の希望したチョコが入ったコロネも買えました。


 このところ太ったそうで、お腹が出っ張ったのをお母様に叱られたお父様です。周囲に手を回され、甘い物を貰えなくなったとか。どうしても食べたいと子供のように拗ねるので、おつかいを引き受けました。実はクリームの物を合わせて5つ購入したので、今日のおやつにします。


 本当は侍女や働いている人の分もお土産にしたいのですが、諦めます。まだ小さなお店ですから、買い占めたら他の方が食べられませんもの。後日、別注文でお願いすることにしました。


「レティはよく気が付くよね」


「自分が逆の立場なら嫌だと思いませんか?」


「……なるほど。そう考えるのか」


 こういうところ、本当に神様というのは子供ですわ。ラファエルと大差ないのではないかと微笑ましく感じながら、私は街の中を見て回りました。学校に国外の子女が通うようになり、この街は一気に人口が増えています。賑やかになった反面、トラブルも起きているでしょう。


 悪気はなくても生活環境や風習が変われば、他国の方と摩擦が起きます。そういった騒動を収める騎士や自警団の方の働きは、素晴らしいものでした。お父様に予算を増やしてもらえないか尋ねてみましょう。カオス様にそんなお話をしたら「僕とのデートなのに」と唇を尖らせました。


 あなた様が私よりよほど可愛らしいですわ。寄り添った私はカオス様を見上げていて気付きませんでしたが、通り過ぎた時に目の端を過ったのは……。


 歩く速度を変えないカオス様には申し訳ないですが、顔だけ振り返ります。あの金髪はリュシアン、ですね。頭を下げて見送る彼はもう他人です。元婚約者だったのは前世の話なのに、むっとしたお顔に手を添えてこちらを向いていただきました。


「カオス様、私はあなた様の婚約者です。何を心配してらっしゃるの?」


「ごめん。信じてても怖い」


 心変わりするのではないか? と。思わぬ告白に、私は嬉しくて涙を零していました。慌てるカオス様が取り出したハンカチで私の頬を拭い、ぎゅっと抱き締めてくれます。ここは大通りで人目があるのに、嬉しさが止まらずに溢れました。


「泣かせちゃったね」


 困ったような声が降ってきて、胸に顔を埋めたまま首を横に振ります。そうではありません。悲しくて泣いているのでも、昔を思い出して怖がっているのでもなく……ただ、あなた様が愛おしいと思ったのです。


「私は……幸せものです」


 この言葉で涙の意味に気づいたカオス様が、私の手を首に回すよう動かしました。おずおずと回した手が互いを掴んだところで、軽々と抱き上げられます。恥ずかしくて顔があげられず、カオス様の首筋に頬を押し当てました。


「お幸せに」


「おめでとうございます」


 口々に飛んできた声に明るく応じるカオス様は、街の見物を取りやめるようです。馬車がある場所まで歩いていき、中に私を下ろすと両脇に手を突きました。閉じ込められる形になった私へ、カオス様が顔を寄せます。目を閉じて、唇を重ねる――わずかな時間で離れたキスに、口角がゆっくり持ち上がった私は微笑んでいました。


 本当に、幸せですわ。

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