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電子書籍化【完結】今度こそ幸せを掴みます! ~冤罪で殺された私は神様の深い愛に溺れる~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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第69話 泣く時間をください

『ええ、ありがとう。あなたのお陰で、問題なく移れたわ。これは神獣の幼体で、私は彼女と共存していくの。しばらく地上に降りる予定はないけれど、そうね。いつか気にいる子がいたら降りるかも知れない』


「レティの提案だと聞いた時は驚いたが、素晴らしい方法を考えてくれて感謝する。神々は考える前に動いてしまうから」


 思慮深くある必要はなく、何か行動を起こして失敗したと思えばやり直す。この方法で大きな問題なく過ごしてきた。だから神々は考えるより、行動する方が早いのだとカオス様は笑いました。


 不思議ですね。非力で知恵や寿命の少ない人間の方が、深く考えるのですから。私にも考える前に振るう力があれば、同じように考えなくなるのでしょうか。


「女神様のお名前を、教えてください」


 覚えて、お父様やお母様に伝えよう。女神様のお名前を広めて、祀るようになればいいわ。そうしたら、女神様が神獣として地上に降りるときの助けになります。


『ユースティティアよ』


「ありがとうございます。お名前を広めても構いませんか?」


『うふふ、大歓迎よ』


 角が触れないように気をつけながら、兎となった女神様は私に頬擦りしました。畏れ多いのですが、抱き上げさせていただきますね。長い耳の脇をゆっくり撫でて、美しい毛並みを堪能しました。いつか地上に降りて来られたとき、あなた様に素敵な出会いがありますように。願いを込めて、額に口付けを贈りました。


「そこまで。僕だって簡単にキスなんてもらえないのに」


 むっとしたカオス様が邪魔をして、私はきょとんとしたあと大きな声で笑ってしまいました。落ち着いたところで、ユースティティア様を下ろします。見回した景色は以前見た花畑でした。


「あの草原はまだ回復していませんか?」


「後少しかな」


 微笑んだカオス様の表情に、ほっとします。あの後枯れてしまっていたら、悲しいですから。あの土地にどんな意味があるのか、それは神々の記憶ですので私は尋ねる気はありません。ですが荒地のままの風景は、この花畑が美しい分だけ悲しく見えました。美しい草原になる頃、私は神々の末席に名を列ねるのでしょう。


「カオス様、私を王宮へ帰してくださいませ」


「僕も一緒に行くよ」


 差し出された手を取り、深呼吸して目を閉じます。開いたらそこは神殿の中、きっと心配顔のお父様やお母様が駆けつけて来られるはず。


「カオス様」


 目を閉じたまま呼びかけ、答える声に微笑みを添えて返しました。


「カオス様の妻になれることが、とても幸せです。でも結婚式の後すこしだけ、泣く時間をくださいね」


 お父様やお母様、弟ラファエルとの別れを惜しんで、泣く時間をください。すぐに涙を拭って、カオス様の胸に飛び込みますから。お願いした私の額に優しいキスが触れました。


「もちろんだよ。僕は君から奪ってばかりだね。レティ」


「いいえ。あなた様が与えてくれたもので、私は出来ています」


 目を開いた私は、神殿にカオス様と降り立っていました。

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