表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電子書籍化【完結】今度こそ幸せを掴みます! ~冤罪で殺された私は神様の深い愛に溺れる~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/88

第64話 無視するのはやめたのね

 下手な受け答えをしたら、その場で処分する。冷たい声と表情が告げる無言の圧力に、私は目を見開いてふわりと笑いました。


「やっと無視するのをやめてくれたのね」


 あなたは話しかける私を鬱陶しそうに遠ざけた。聞こえないフリをして、私の姿が見えると姿を消す。徹底した拒絶と無視が嘘のようね。


「私は私……ユースティティアよ」


「何ということだ」


 カオスが頭を抱えてしまった。何かいけないことを言った記憶はないけれど。カオスは私の名を尋ね、私は答えた。彼が苦悩するような場面はなかったと思うわ。


 カオスが私の肩を掴む。力の加減を忘れたのか、指の跡がくっきりとついた。


「僕のレティを返してくれ。まさか……いや、気配はあるね。消されてはいない」


 ぶつぶつと後半は文句を言っているだけのカオスに、私は首をかしげた。返す? もしかしてこの体は、私のものではないのかしら。そういえば、黒髪になっていたわね。過去の私は純白の髪だったのに。


「ごめんなさい、どうやって出たらいいか。分からないわ」


 体の持ち主が別にいるなら、その子に返してあげるのは当然よ。でもどうしたら出られるのでしょう。気づいたらこの体にいたし、私の元の体は……? ああ、そうだったわ。私は体を失ってしまった。だから戻る体がないの。


「王女殿下、ご無事ですか」


 困って眉尻を下げた私に、知らない若者が話しかける。青年と呼ぶ年齢の彼は金髪碧眼で、整った顔をしていた。人間、みたいね。変ね、ただの人間が私に跪かずに話しかけるなんて。王女と呼びかけたから、この体の子が王女だったみたい。なぜ人間の中に?


「ええ、ありがとう」


 当たり障りのない返答に微笑みを添えると、辛そうな顔で俯いた。目に涙が滲んでいる。彼の服に血が滲んだ跡があって、ケガを治したばかりのよう。まだ痛むのかしら。手を伸ばそうとした私の手を、カオスが強く握って首を横に振った。余計なことはするな、肌越しに冷たい響きで怒られる。


「昔の僕の行いを恥じています。こうしてお目にかかり、謝罪する機会を得たことは幸いでした。ご無事でよかった。どうぞ……お幸せに」


 途中で膝を突いた青年は頭を下げて、年上の女性の方へ歩いて行った。顔が似ているから、母親ね。品のある親子だわ。見送る私に気づき、女性も優美な所作でカーテシーを披露した。


 カオスが掴む手首が痛い。掴む強さが私への怒りと「余計なことを言うな」という圧力になり、この体を襲う。元は人間の体なら、大切にしないと壊れてしまうわよ。咎める私の眼差しに気づいたカオスが、眉を寄せる。腕の力を緩め、傷になった肌を見て、後悔の色を浮かべた。


 以前より感情が豊かになったみたい。いい事だわ。くすくすと笑った私を抱き上げると、カオスは転移した。神々が住まう大地へ……次元を超えて調和の取れた世界は、かつての美しさで私を迎えてくれる。自然と表情が緩みました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ