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電子書籍化【完結】今度こそ幸せを掴みます! ~冤罪で殺された私は神様の深い愛に溺れる~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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第55話 私が守る世界の意味

 礼儀作法も歴史や計算のお勉強も、すべて覚えています。だからそんなに褒めないでください。真っ赤な顔で俯いて、美辞麗句に首を横に振った。


「ご謙遜を。さすがは聖女様ですわ、もう教えることはございません」


「完璧です。天才と呼ぶにふさわしいお方ですわね」


 首も頬も赤くなった私を、カオス様が嬉しそうに後ろから抱きしめます。そのまま強引に抱き上げられました。恥ずかしさから逃れようと、私はカオス様の首筋に顔を押し付けて隠れます。わかっていると背を叩いたカオス様は、ご自分が被っておられた薄絹の中に私を包みました。


「僕の可愛いレティが恥ずかしがるから、その辺で止めておくれ」


 くすくすと忍び笑うカオス様のお言葉に、教師となったご婦人方も微笑ましいと頷きました。褒め言葉が聞こえなくなって、ほっとした私の頬にカオス様の唇が押し当てられます。いくら薄絹で隠れていても、見えていないでしょうか。風で飛んだらどうしましょう。


 焦る私をよそに、カオス様は落ち着いておられました。


「さて、お勉強が終わったのなら僕に付き合って」


 ささやくカオス様に頷くと、ふわりと体が浮く感じがしました。ぎゅっとしがみついて、目を開けたら……そこは空の上です。見下ろした足下は緑が広がり、どこまでも豊かな大地が穂を揺らし、木々は歌っていました。葉の優しい擦れ音が、子守唄のように優しく耳に響きます。


「見てごらん、レティが守る世界だよ」


「私、が?」


「そう。レティは全能神の妻となる。その意味を教えてあげるね」


 そういうと、簡単そうに空中に寝転びました。私はカオス様に強く抱きつきます。手を離したら、地面まで真っ逆さまのような気がして。


「心配はいらないけど……怖いなら僕の上に腰かけてるといいよ」


 なぜか嬉しそうに私を抱きしめ返すカオス様。なんて意地悪なことをなさるの? 足下が見えない雲を置いてくださればいいのに。そう思いながらカオス様の横に手をつくと、不思議と沈むことはありませんでした。ごろんと寝転がってカオス様の上を降りたら「残念」と呟く声がします。


 淑女が紳士の腹の上に跨るなど、そんなふしだらな行為は出来ません。私がまだ8歳の体であっても、精神は23歳になるのですから。お父様やお母様に恥ずかしくて言えない行為は厳禁です。


 下を見なければ怖くないので、私は転がる時に目を閉じていました。仰向けになってから目を開くと、明るい光が降り注ぐ虹色の空が視界いっぱいに広がります。こんな美しい景色は初めてでした。


 カオス様は肘をついて頭を支えながら、横向きになって私の顔を覗き込みます。カオス神様のお顔は優しい笑みを湛えておられました。自然と笑みが浮かび、私も微笑み返します。長い黒髪がさらりと風に舞い上がる姿は、神々しさより愛おしさを強く感じますね。


「僕は本当は、世界を破壊することが出来る唯一の神だ。だから全能の名を与えられたんだよ」


 ……それ、私が聞いてしまってよいお話なのでしょうか?

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