第52話 神様からの贈り物を
ほぼ毎日カオス様とお話しすることで、神様という存在を身近に感じてきました。他の方に対する興味が薄いそうですが、今日もヤクシ様に治療と薬の関係を教わります。アクア様も水害の防ぎ方を説明してくださいました。
昨日は、ペルセ様に教わりましたわ。大地を豊かにする肥料について、でした。この国に必要な知識なので、メモを取りながら庭で実践を交えた講義をお願いしました。他の方にお姿が見えないので、私が覚えて伝える必要があります。
こういった結果が予測できるお勉強は、身が入ります。少なくともダンスの授業より真剣に取り組みました。別に踊れない訳ではございません。時々お相手の足を踏んでしまうだけです。
「ふふ、僕の足なら踏まれても平気だよ」
カオス様はそんな風に仰います。ここ数日はダンスの練習になると、顕現して私の相手役を務めてくださいました。ダンスがとてもお上手で、私が足を踏んでしまう回数はだいぶ減った気がします。
明日はカオス様が、他国の様々な事情を教えてくださいます。お隣の国と仲良く過ごすための秘訣などがあれば、お父様の助けになりますわね。農業に優れているのはどの国か、隣国は鉱山からたくさんの鉄を掘り起こしていました。でも加工が得意な国はその向こうにある別の国です。そういった繋がりを知れば、助けを求めるときに役に立つと思いました。
「明日は僕だから、レティの父君と宰相も呼ぼうか」
「はい」
「もちろん、レティは僕の膝の上だよ」
「もう! 子供ではありません。自分で座れますわ」
「じゃあ教えない」
子供みたいな我が侭を口にして、綺麗な唇を尖らせるのです。なんて大人げないのでしょう。でもそんなカオス様を、可愛いと思う私がいます。きっと他の方には見せない一面ですから。私だけに見せてくださるのは嬉しいです。
学んだ知識は「神様からの贈り物」として、お父様にお話ししました。お父様に説明するには、私がきちんと理解していなくてはいけません。まだ8歳になる前なので、難しい言葉はあまり使わないようにしながら、お話しさせていただきました。
わずか数年で国は潤うものではない。カオス様の助言に従い、お渡しする知識はすべてではありません。長く民を潤し続けるには、一度に大量の水を与えるのではなく、常に必要なだけの水を注ぐようにしなさい。
以前は意味がわからず首を傾げましたが、今は私も理解できました。急激に発展すると、衰退までの時間が短いのだそうです。人は驕り、働く喜びを忘れます。長い年月見守ってきた神様ならではの視点でしょう。
これから10年先、この国は大きく変わっているでしょう。私はそれを天上から、カオス様の隣で見守ることになります。結婚式は16歳のお誕生日に決まりました。




