漫才・取り調べ
二人「はい、どもぉー!」
ボケ「僕ね、昨日警察のドラマ見たんですよ」
ツッコミ「ほぉ、唐突だね。それでどうしたの?」
ボケ「そこで取り調べのシーンがあったんだけどさ」
ツッコミ「やってみたいと?」
ボケ「えへへ、やってみたい(嬉しそうに)」
ツッコミ「んー、気持ち悪いね。それじゃあ、やってみますか」
ボケ「え、今?」
ツッコミ「いや、やらないの?!」
ボケ「だって、皆見てるじゃん(観客を見て)」
ツッコミ「芸人やめちまえ! 何を恥ずかしがってんだよ!」
ボケ「はいはい、やれば良いんでしょ」
ツッコミ「最初のやる気はどうした?」
ボケ「じゃあ、僕が取り調べの刑事やるから、調書を書いてる人やって」
ツッコミ「誰を取り調べるんだよ! もういい、俺が容疑者やるから、お前が刑事やれよ」
ボケ「仕方ないな」
ツッコミ「うっせぇ」
ボケ「(大声で)おい! さっさとはけ!」
ツッコミ「……」
ボケ「黙ってないではけ!」
ツッコミ「やだね」
ボケ「なんだと? お前、パンツくらい履けよ!」
ツッコミ「ちょっと待って、俺今パンツ履いてなかったの? 俺真っ裸で取り調べ受けてるの? やだね、とか言っちゃったよ?」
ボケ「大丈夫、レインコートは着てる」
ツッコミ「全然大丈夫じゃねぇよ! 真っ裸にカッパ着てる変態じゃねぇか! もう何も取り調べる事ねぇわ」
ボケ「動機とか……」
ツッコミ「そんな変態の動機なんか俺が答えられねぇよ! もっと普通の来いよ」
ボケ「分かった」
ツッコミ「よし、もう一回だ」
ボケ「(大声で)おい! はけ! お前だって分かってるんだよ!」
ツッコミ「知らねぇな。他の奴じゃねぇのか?」
ボケ「そんな訳ないだろ! 黒板にもお前が当番だって書いてるんだ! さっさと掃き掃除しろ!」
ツッコミ「はい、ストップ」
ボケ「どうした?」
ツッコミ「教室になってる」
ボケ「どゆ事?」
ツッコミ「どゆ事じゃねぇよ! お前がしたいのは取り調べだろ? だったら、掃き掃除しろとか関係ねぇだろ!」
ボケ「あぁ~、なるほど。気付かなかった。お前頭良いな」
ツッコミ「お前、本当にドラマ見てたのか?」
ボケ「ごめんごめん、次頑張れば良いからな」
ツッコミ「お前がな。今度はちゃんとやれよ」
ボケ「(大声で)おい! 吐け! お前がやったって事は分かってるんだ!」
ツッコミ「うっせーな! 知らねぇよ、そんな事」
ボケ「お前はそれで良いのか? お前がこのままだとお前を産んでくれた両親が痛い目見るぞ!」
ツッコミ「ストップ……」
ボケ「なになに?」
ツッコミ「脅迫が酷い」
ボケ「はい?」
ツッコミ「はい? じゃねぇ! なに刑事が両親を人質みたいにしてんだよ! そこはお前を産んでくれた両親が悲しむぞ、だろ?」
ボケ「あぁ、そうか。(気を取り直して、大声で)お前を産んでくれた両親が悲しむぞ!」
ツッコミ「親父とお袋が……」
ボケ「よし、チョロいな、もう一押しだな」
ツッコミ「言うな言うな言うな!」
ボケ「え?」
ツッコミ「何故に口に出すか。それは心の中に留めておいてくれ! もう続きからで良いから畳み掛けろ」
ボケ「分かった。(大声で)ここで自白すれば、罪は軽くなる! お前はまだ若いんだ! いくらでもやり直しが利く、これ以上両親に心配を掛けるな」
ツッコミ「刑事さん……俺ーー」
ボケ「人生まだ半分も生きてないんだ! 確かにお前のやった事は許し難い、だが、真面目に自分の罪と向き合えば、きっと許される! 俺はそう信じてる!」
ツッコミ「刑事さん! 俺っーー」
ボケ「俺だけじゃない! お前の両親だって、お前が真っ当な道に戻ってくる日を待ち望んでいるはずだ!」
ツッコミ「おーー」
ボケ「こんなにも言っているのに、何故分かってくれないんだ? いい加減、自供してくれたらどうなんだ?」
ツッコミ「お前が言わせてくれねぇんだよ!」
ボケ「何が?」
ツッコミ「何がじゃねぇよ! こっちが喋ろうとしてるのに、ごちゃごちゃと説教被せてくるから、全然喋られねぇんだよ!」
ボケ「なんだ意外とシャイなんだな」
ツッコミ「そういう事言ってるんじゃないって……大体お前の声が煩すぎるんだよ!」
ボケ「それは仕方ないじゃん。刑事なんだから声だってデカくなっちゃうよ」
ツッコミ「もうええわ」
二人「どうもありがとうございました!」