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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

週一創作ワンライ

名残雪

作者: livre

#週一創作ワンライ(@ss_1_w_)」投稿作品。

4/15~ のお題の中から、『季節外れの』を使用しています。

プロット無し、執筆時間は本編書き出しから概ね1時間弱。

 入学式には雪が降るって。

そう。もう4月なのにね。こういうの、名残雪って云うんだよね。季節外れの雪。

名残惜しくて、かぁ。冬が終わるのが名残惜しいのかな。

あ、ううん。なんでもない。

それより、そっちはどうなんだろう。晴れるといいね。

え?桜が咲いてるの?それじゃ桜の下で入学式なんだ。いいなぁ。綺麗で、羨ましい。こっちはね、まだ咲いてないみたい。

 ねぇ、まだ寝なくても平気?

そっか…じゃあ少し、話したいことがあるの。聞いてもらってもいいかな。


 考えてみたら、ずっと一緒に居たよね。私達。

学校では勿論、お休みの日でも、殆ど毎日遊んでたじゃない。

そうだね。こないだの卒業旅行も、楽しかった。ちょっと迷子になりかけたりして…ふたりとも子供じゃないのに。馬鹿みたいだったなぁ。

うん、それでね。ほら、卒業して、随分離れちゃったでしょう。距離がさ。

だからきっともう、あんまり会ったりできないだろうなって思うの。こうやって電話で話したりは、まぁ、できるかもしれないけれど。

そっちはそっちで新しい友達ができたり、恋人ができたり、するんだろうなぁ、って。

そうなる前に、吐き出しておこうかなって。

 ふふ。なにそれ?悪口なんかじゃないよ。大丈夫だって。文句でもないって。

でもいい話かどうかは…分からないな。

 気持ち悪い話、かもしれない。


 私、好きだった。友達だ、って、たぶん、思えていなかった。

隣に居ても、喋ってても、頭の中はおかしなことばっかりだったの。

風が吹いて髪の毛が揺れてたら、触ってみたいなぁって。

話してるあの唇は、キスしたらどんなかなぁって。

押し倒してみたらどんな反応するかなぁ、倒されて下から見る顔はどんな表情かなぁって。

 ごめんね。気持ち悪いよね。聞いてくれてるか分からないけど、続けてもいいかな。


 そうやって思ってたけど、言えなかった。言えるわけないよね。

だって友達だったんだもん。わたしだけがそんなおかしなこと考えてるんだ、って分かってたから。

でもね、もう、仕舞っておけなくなっちゃった。だからもう会わないつもりで、これっきり電話もしないつもりで、吐き出しちゃうことに…したの。

だんだんおかしくなっていくんだもん。自分で自分が怖かったよ。

触ってみたい、触ってほしい、抱き締めてみたい、抱き締めてほしい、って、そればっかりになっちゃって怖かった。今でも、少し。だからこれでちゃんと終わりにする。

本当はね。この間の旅行も気が気じゃなかったんだ。温泉入る時とかもう、普通にしてるのでいっぱいいっぱいだった。

勿論、楽しかったのは本心だよ。最後の思い出作り、って思ってたから。


 こんなこと、一方的に聞かせてごめん。全部私の自己満足。

別に何かを求めてるわけじゃないから、安心して。

同性の友達にこんな気持ちの悪い感情を向けてるのが申し訳なくて、自分でも嫌で、一区切りつけたかっただけの、自己満足だから。

 ただ今度雪が降るんだって聞いて、名残雪だ、って、名残か、って、思っちゃっただけだから。ずっと言わないつもり…だったんだけどね。

 新しい環境で恋人とか、つくってよ。

私のことは、ああそういう気持ち悪い子が居たなって思ってくれればいいから。ね。

そのうち私も、こんな気持ち、棄てちゃえると思う。


 ああ…本当に、黙っちゃったなぁ。まぁそうだよね。ごめん。

こんな遅くまで付き合ってくれてありがとう。それから、一緒に居てくれた数年間も。

もしかしてもしかしたら何か劇的なことが起きて上手くいくんじゃないか…なんて考えてたけど、やっぱり現実はそうはいかなかったね。本当に、ごめん。でも切らないでいてくれてありがとう。

 もうこれで終わりにするね。こんな気持ち悪い想いも、この電話も。


 さようなら。ごめんなさい。

 好きになんて、なりたくなかったな。

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