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「―――――。」
「―――――。」
声が聞こえる。
血の滲む様な声。
苦しみにもがく声。
喉が枯れるている様な声。
泣き叫ぶ声。
そして、決意を秘めた声。
「―――――。」
また声がする。
今度は鳥の声もする。
風の音も……風?
それに疑問を抱いた瞬間、頭が一気に覚醒しだす。
さっきまでの声は夢だ。
鳥の声も風が葉を揺らす音も聞こえる。
目を閉じていても日の光を感じる。
背に感じる感触は…木?
ベットに寝ていたはずなのに。
そっと目を開くとそこは、間違いなく見慣れた天井ではなく木々が立ち並ぶ森の中だった。
「…なんで?」
思わず声が出た。
(昨夜は絶対にベットに入って寝た。それが何でこんな場所で寝てるんだ?
湊創梓18歳この年で夢遊病?ストレスそんな感じる生活じゃないよな…。)
そう混乱する頭で考えていると声が振ってきた。
「せいねーん。起きろー起きろー。おーきーろー。起きたか。」
「え?」
そこには浅葱色のローブを纏った少女がこちらを見ていた。
起き抜けの頭で状況を整理しようとしながら少女を観察する。
背格好は多分俺より低い。フードの隙間から覗く髪は黒。瞳は片方が髪に隠れているが金。
(……。うん誰?外国人?)
さっぱり見覚えが無い。近所にこんな人居たっけ?
「ん?寝ぼけてるの? まぁ寝ぼけられるほど何も無かったのなら幸運だったね。
でも…旅道具が見当たらないね。命を取られなかっただけマシなのかなぁ。」
ローブを着た少女は辺りを見渡すと喜ぶべきなのか悲しむべきなのか、とでも言うような微妙な表情をしていた。
「あー…えーっと、旅道具って?」
未だに状況を整理しきれず言葉が耳から耳へ抜けていくような感覚の中、
彼女の言葉を何とか捕まえて質問する。と、こちらに視線を向け
「旅道具ってって…旅道具だけど。水とか食料とかその他旅に必要な諸々。
もしかして旅人じゃなかった? あっちの国から追い出されたとか?」
少女はどこかを指差すが、もちろんわかるはずも無く首を横に何度も振る。
「ふむ? 盗賊って服装でもないし……まぁいっか。どうせこの人だろうし。
ねぇ、こんなところで話すのもなんだし国に向かいながら話そうよ。
なんか長くなる気がするし。」
そう言うと少女はほれほれとでも言うかのように手を差し伸べてきた。
「ああそうだ、私の名前はクライネ。まぁ気軽にクーとでも呼ぶがいい。」
彼女はそう、茶化すように名前を名乗った。
「ミナト…ミナトソウジです。」
つられて名乗ってしまってから名乗ってよかったのか疑問がよぎった。
「あーえーっと、クライネー…さん? ここは一体何処のなのですか?」